1.目が覚めると
初投稿です!よろしくお願いします。
「ここは…、どこなの。」
ピピピ…と鳴く鳥の鳴き声で目が覚めると、そこは知らないベットの上だった。
部屋を見渡すと、簡素ではありながら高品質と一目見て分かるような家具が置かれている。
今まさに眠っていたベットも、ふわふわとした心地の良い肌触りだ。
部屋を一通り見渡した後、自分が置かれている状況を思い出そうとしたが、なにも思い出せない。
私はなぜここにいるのか、私は何者なのか、、、、
ただ一つだけ覚えていることと言えば、私の名前。
「ルナ・ウォード。」
誰もいない部屋に、ルナの声が響いた。
〇●〇
しばらく部屋を探索した後、壁にある大きな窓を開けると、そよそよと心地の良い風がルナの薄い青紫色の髪を揺らす。
雲一つない青空、小鳥たちが戯れる姿、きれいに整った庭。
すべてがとても美しく、先ほどまで抱えていた言いようのない不安な気持ちはどこかへ行き、思わず見入っていた時。
『…起きた?』
誰もいなかった部屋に、透き通るような声が響いた。
ルナは驚いて、反射的に声が聞こえた方向に振り向く。
そこに立っていたのは、ルナと同い年くらいの少年だった。
漆黒の髪は、ルナが開けた窓から入る風によってサラサラとなびく。
少し長めの前髪から覗く灰桜色の大きな瞳は、まっすぐルナを捉えていた。
『調子はどう?』
突然現れた美少年は、やけに慎重にルナに話しかける。
「問題ないわ。あなたは誰?」
『僕はルーカス・サリバン。』
「ルーカスね。私の名前はルナ・ウォードよ。それより、ここはどこなの?」
『ここはサリバン城の一室。どうしてここにいるのか覚えていないの?』
「そうなの…、困ったことにね。」
そういいながら、ルーカスに言われたことを頭の中で復唱する。
彼の名前はルーカス・サリバンで、ここはサリバン城……、ん?まって??
ルナは瞬時に顔を青くさせる。
そして、目の前にいるルーカスに恐る恐る訪ねた。
「サリバン城…ということは、あなたは王族の一人…?」
『そうさ。僕はサリバン王国の第一王子。次期国王となるものだよ。』
ルーカスは何事もなかったかのようにあっけらかんと言った。
ルナは自分が今まで取っていた態度を思い出し、震え上がる。
私、第一王子に対して名前を最初に言わなかったりタメ口で話してなかった…!?!?
ルナはすぐさま頭を90度に下げて言う。
「ルーカス殿下、先ほどの数々な無礼、どうかお許しください…!!」
『構わないよ。僕もなにも伝えてなかったのだから。』
ルーカスは何も気にしていないようにそう言った。
ルナは胸を抑え、大きく息を吐き安堵した。
「寛大なご配慮、誠にありがとうございます。」
『それよりも、ルナ、』
ルーカスは今日一番話したかった本題を言うかのように、ルナに問いかける。
『君にはお願いしたい事があるんだ。それを聞いてくれるのなら、‘一生’身の安全を保障しよう』
「お願い事…ですか。」
一生の身の安全、その響きは記憶喪失で身寄りのないルナには甘美な響きに聞こえた。
『そうさ。そんなに難しいことではないよ。お願いしたいことは3つ。
一つ目、僕の許可が出るまで部屋からは出ないこと。
二つ目、僕の命令には必ず従うこと。
三つ目、何か困ったことがあったら迷わずすぐに申告すること。
守ってくれるかな。』
すらすらと話すルーカスは、少し微笑みながらお願い、と首を傾げた。
ルーカスが提示した意図が読めない約束事。
一抹の不安はもちろんある、けど。
「もちろんです。ルーカス殿下。」
これが私の運命ってことなのかも。