第64章 剣闘祭 賭博勝負 vsメリッサ①
翌朝
「今日も観戦に行くぞー!!」
「剣闘祭を勝ち抜くためには重要ですからね。」
「あたしは宿で寝てたいな~」
「ボ、ボクも…」
「イザベルは昨日頑張ったからいいでしょう。…スー、あなたは駄目です。」
「え~!!アルフレッドも観戦してないじゃんか~!!」
「確かに賭博をしていましたが…昨晩の作戦会議で1番情報提供量が多かったのは誰でしたか?」
「む~…」
実は昨晩、臨時で作戦会議が開かれた。
テーマは第2回戦で戦うカサンドラ校の戦力分析とその対策についてだ。
『アイリスの俺に向ける視線が厳しかったんだよな…何も意見を言わないと選手用観客席に縛り付けるぞ!みたいな…』
これからも賭博で稼ぐために、ここは死ぬ気で情報を提供するしかなかった。
戦闘能力が高い順に構成されてるだの、マクレイはクレアと同じくらいのステータス値だの、よくもまあ必死に思い出して語ったものだ。
「俺は今日も賭場でひと儲けしてくるけど…いいよな?」
「分かりました…ですが、収支がマイナスになったり戦力分析が疎かになったらすぐに辞めてもらいますからね?」
「あ、ああ…」
やはりアイリスは手厳しい。
自由を抑圧されて少し不貞腐れながらも、俺はコロッセオの賭場へ向かった。
「メリッサは…まだ着いてないか。」
「おはようアルフレッドきゅん!」
「うわっ!!急に背後を取るなよ…」
「ごめんネ!反応を見るのが楽しいんだヨ…」
「はぁ…おはよう。とりあえず賭場に向かうか。」
「そうだネ!!」
そろそろ開始時刻になるので、賭場の周りには多くの人が集まっていた。
その中にアランの姿を見つけたが…まぁ放っておこう。
「ところで、キミはどうやって予想を的中させてるのかナ?」
「手の内を明かすわけがないだろ…」
「鑑定士によると、うちは”生存本能”ってユニークスキルを持ってるんだヨ。それを応用すると、人の大体の強さを知ることができるらしいんだよネ!!」
鑑定士とは俺と同じ”鑑定”のユニークスキルを持つ者で、超高額で人々を”鑑定”する存在だ。
鑑定士に頼めば”鑑定”の魔道具でも表示されないスキルとユニークスキル欄が表示される分、高いのは仕方ない。
確か世界を股にかけるノワール商会の商会長が”鑑定”のユニークスキル持ちだ。
不公平な状態で賭博勝負をしても面白くない。
手のひらで転がされているようだが、俺も少し種明かししよう。
「…俺も似たようなスキルだ。メリッサと同じで、大体の強さしか分からない。」
そう、あくまでステータスウィンドウを見れるだけなのだ。
その人の戦闘センスやシステム外スキルを把握できないので、大体の強さしか分からないというのは事実だ。
「嘘は言ってないみたいだネ。これで公正な勝負ができるヨ!!」
「これより、剣闘祭2日目を開始します!!!」
「おおおおおおおおおお!!!!」
「コーデル校とタルロス校の選手は控室に移動してください。」
「じゃあうちらも買いに行こうカ。ここで集合ネ!!」
「ああ。」
メリッサは事前に選手たちの情報を把握しているようで、賭場に着くや否やすぐにチケットを買っていた。
俺は”探知”で控室にいる10人を把握して”鑑定”し、Lvや能力値、スキルLvを紙に書きなぐった。
『…っ!!何だこいつは…⁉』
コーデル校の選手に1人、異常な生徒がいた。
身長3mくらいでがっしりした体格で、ステータス値が高い生徒だ。
名前 ルーカス=ドルムンド 種族 魚人族 (サメ) Lv.50
HP 600/600 TP 600/600 SP 0
STR 170 VIT 150 DEX 30 AGI 105 INT 30 LUK 30
スキル
体術Lv.1
ユニークスキル
先祖返り:身体は時代と共に退化する以前の頑丈な鱗に覆われ、基礎ステータス値が高くなる。
王者の風格:スキルLv.1のままLvが上がるとHP、TP上昇率とSP獲得量が増加する。
『これまで天賦の才に甘えて努力しないで生きてきたのか…大抵こういう奴は傲慢で性格が悪いんだよな。』
試しに性格を”鑑定”してみると、『傲慢 暴虐 加虐趣味』と表記された。
そのまま”探知”で様子を窺っていると、あろうことか同じコーデル校の選手をタコ殴りにし始めた。
『なっ…!!最低だな…!!』
俺はこういう奴が大嫌いだが、そんな個人の感情は置いて賭博に利用しよう。
生憎ルーカスはコーデル校の1番手らしいので、俺はルーカスの5人抜きに金貨1枚をBETした。
『こいつは加虐趣味らしいし…相手が可哀想だけどその時の気分で棄権か降参するようなことはないだろう。』
「賭け終わったかナ?」
「あ、ああ。メリッサは何にいくら賭けた?」
「コーデル校の勝利に金貨1枚だヨ。アルフレッドきゅんは?」
「俺はコーデル校1番手ルーカスの5人抜きに金貨1枚だ。」
「ええ⁉オッズが3.1倍だったやつだよネ…?」
「ああ。」
「うちはルーカスが試合せずに降参か棄権すると踏んだんだけどナ…」
「…いや、あいつの性格は最悪だ。俺は相手選手を苦しめて愉しもうとするだろうと予想した。」
「なるほどネ…っと、そろそろ始まるヨ!!」
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