第52章 全力勝負
「最後は小僧だな。…って、しまった!!」
「どうした急に?」
「闘技場の舞台を出たからさっき受けた攻撃が回復しちまった。剣闘祭と同じルールで行くつもりだったんだが…」
「過ぎたことはもう仕方ない。」
しかし、かえって好都合だ。
俺は万全な状態のアランと戦いたかったのだ。
「…アラン、頼みがある。」
「どうした?そんな真剣な顔して…」
「俺と全力で戦って欲しい。手加減なしだ。」
「…つまり”闘気操術”込みってことだな?」
「ああ。」
「10分くれ。準備する。」
「分かった。ありがとう。」
審判のジェシカ教授にその旨を伝え、観客には10分間の休憩時間を取ってもらった。
俺とアランは舞台に上がり、そこで闘気の溜めを始めた。
『夏休み中の特訓で戦闘中に5秒もあればTP1000消費で”闘気操術”を発動できるようになったが…それだと不意打ちみたいになるからな。』
10分もかければ、TP3000は纏うことができるだろう。
しかし、現状ではソードスキルとの併用を完璧にこなせるのはTP2000までだ。
ここは本領を発揮するためにも、TP2000消費で抑えておこう。
お互いに集中して闘気を練ること10分。
俺は周囲の空間を歪ませるほどの闘気を、アランはそれに加えて赤いオーラのようなものを纏うほどの闘気を練った。
『”鑑定”によるとアランの消費TPは4000…俺の2倍か。』
純粋な力や速度は圧倒的に負けている。
俺が勝つには技術…システムアシストに囚われないソードスキルとスキルチェインを駆使して差を埋めよう。
「…小僧、準備はできたか?」
「ああ。」
「…準備ができたとのことなので模擬戦を始めます。両者武器を構えて…試合開始!!」
「はぁぁぁぁ!!!!!!」
開始と同時に、俺は最速で両手剣Lv.6”ジェットスマッシュ”を行使した。
そして高速でアランの右真横に移動し、移動の勢いを利用する形で左から右へ薙ぎ払った。
”闘気操術”による速度の強化と”ジェットスマッシュ”の素早い移動が重なることで、おそらくTP消費3000と同等程度の速度を出しているだろう。
アランでも簡単には防げまい。
俺の攻撃を防ごうと、刃の行く先に剣を構えた直後。
鈍く大きい金属音が鳴ると同時に剣を握った両手に激痛が走った。
「痛っ…!!まじかよ…」
全力のアランは俺の想定をはるかに超えた化け物だった。
”ジェットスマッシュ”を表情一つ変えずに防いだのだ。
1度距離を取ろうにも、”ジェットスマッシュ”で詰められたら終わりだ。
ここは接近戦で対応するしかない。
「はぁぁぁぁ!!!」
今度は手数が多い両手剣Lv.7”ジェノスストリーム”を、システムアシストとは異なる軌道で放った。
至近距離で繰り広げる強力で素早い7連撃…
少しでもこの攻撃で体勢を崩したいところなのだが…
「くっ…!!まだまだぁぁぁ!!!」
これも容易く防がれた。
”ジェノスストリーム”を間髪入れずに”両手剣Lv.3”アークスクエア”にスキルチェインし、11連撃へと昇華させた。
右から左から…はたまた下から上からと、様々な角度でソードスキルを放つ。
連撃技を中心にスキルチェインを続け、アランに反撃の隙を与えないほどの猛攻を続けた。
『どれくらいの時間が経った…?10分…30分か…?攻撃を当てられる未来が全く見えない…!!』
俺の刃がアランへ届くことはなかった。
20000以上あったTPはみるみる減っていき、気が付けば10000を切っていた。
Lv.7”ジェノスストリーム”の消費TPは3000と多いため、使うのは避けるべきだ。
次に連撃技で消費TPが少ないのはLv.3”アークスクエア”で50…これを多用するしかない。
『攻撃の手を緩めれば反撃され、殺されるに違いない。かといって攻撃が当たる未来はまだ見えない…』
せめてアランを疲れさせることができれば希望が見えるかもしれないが…アランはやっと息が切れ始めた程度だ。
やはり疲れさせるには防御ではなく攻撃をさせるしかない。
『俺に全力のアランの攻撃が防げるか分からないが…やるしかない!!』
両手剣Lv.1”スラッシュ”を前に大きく振って時間を作り、その間に後ろへ跳躍した。
アランはその隙を見逃さなかった。
「なっ…⁉」
俺が空中で身動きが取れないところへ”ジェットスマッシュ”で距離を詰め、上段から剣を振り下ろした。
何とか両手剣を前に突き出して直撃は免れたが、衝撃で闘技場の地面に激しく打ち付けられ、土煙が舞った。
『痛い痛い痛い痛い痛い!!肋骨が折れて内臓に刺さったか…?しかも衝撃で左肩が外れたな…』
しかし状況を確認している暇はない。
今は砂煙が姿を隠してくれているが、それがなくなれば追撃に来る。
俺はすぐさま”気配探知”を行使し、アランの居場所を突き止めた。
『…っ!!』
”気配探知”の反応はすぐ前にあった。
そして、多連撃範囲殲滅技である両手剣Lv.9”ノヴァディザスター”の構えを取っていたのだ。
”ノヴァディザスター”は高速で剣を振ることで斬撃を飛ばすソードスキルだ。
『それは避けきれない…!!確実に死…』
突如目の前に半透明の刃が現れ、俺の意識が消えた。
「…っ!!痛っ…!!!!」
猛烈な痛みが身体を駆け巡り、意識を取り戻した。
『そうか…手も足も出ずに負けたのか…』
状況を把握するとどっと疲れが襲い掛かり、再び意識を失った。
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