第38章 魔物征伐 最終決戦準備
「くっ…!!アル、その悪魔族の等級は分かるか?」
「やってみます!!」
初めての試みだが…上手くいくだろうか?
俺は悪魔族の反応源へ”鑑定”を同時使用した。
「…っ!!等級が分かりました。」
「いくつだ?」
「中級です。」
「最低でも危険度Aランクか…アルは探知を続けて随時報告してくれ!!俺は指揮を執る!!」
「はい!」
”探知”で様子を見ながら装備を整え、テントを出た。
すると、アランパーティも騎士団も既に戦闘可能態勢を維持していた。
「アルフレッド、状況説明を頼む。」
「あ、はい!…先程の揺れは、おそらく4階層で中級悪魔率いる魔物の巨大集団が大移動を始めたことが原因だと思います。」
「中級悪魔だと…⁉小僧、それは本当か⁉」
アランが目を見開き、息を荒くして尋ねてきた。
「あ、ああ…間違いないはずだ。」
「そうか…」
「俺達に勝てるのか…?」
「悪魔族なんて存在しか知らない…」
強大な敵が現れたことを知り、討伐軍の中にどよめきが広がった。
皆の表情に恐怖の色が現れ、中には膝から崩れ落ちる者もいた。
「鎮まれ!!!!お前たちは何をしにここに来た…⁉死ぬためか?断じて違う!!大氾濫の元凶を倒してペンシルゴン領を…地上の人々を守るためだ!!!!!」
「そ…そうだ!!」
「中級悪魔くらい…やってやる!!!」
「Sランク冒険者も守護騎士様もいるんだ…!!俺達に負けの文字はない!!」
「おおおおおおおおお!!!!!!」
レイフ兄様の演説により、失われた士気が取り戻された。
皆の表情から恐怖の色が消え、希望の色が現れ始めた。
「アルフレッド、2階層への到着予定はいつ頃だ?」
「進軍速度が遅いので…おそらく3時間後くらいです。」
「ありがとう。これより作戦会議を始める!!迎え撃つのは大量の冒険者たちがいる地上だ!!意見がある者は手を挙げてくれ!!」
すると、ほとんど全員が即座に手を挙げた。
「まずはアルフレッド、今把握してる情報を伝えながら言ってくれ。」
「はい。敵総数を詳しくは分かりませんが…1000体は優に超えているはずです。」
直下を”魔物探知”と”悪魔族探知”した際、負荷が強すぎて一瞬で強制停止させられた。
おかげであまり負荷は感じなかったが、大した情報を得られなかったのだ。
「そこで、罠を仕掛けます。」
「具体的には?」
「クラウド、”アイテムボックス”の魔道具に油と火薬が大量に入っていたよな?」
「うむ。爆弾を作るために大量購入したのであるから、3樽分は。」
「なら3~2階層間の階段に油を、2~1階層間の階段に火薬をばら撒き、魔物が踏んだ時に火矢で爆発させるんだ。」
階層間の階段は結構な距離があるので、これで少なくとも200体は減らせるはずだ。
生き残ったとしても、火傷を負うはずだ。
「小僧、どうして火薬と油を別々にするんだ?」
「油は滑るからなかなか登れず、地上部隊に準備させる時間を取れる。その上身体に大量に付着することで引火しやすく、火薬がくっつきやすくなるからだ。」
「なるほど…アルフレッド、悪魔族に気付かれる可能性は?」
「おそらく大丈夫だと思います。悪魔族は大移動の最後尾にいるので、少なくとも罠設置地点から500m以上は離れるかと。それに悪魔族は他種族を見下し、慢心しているそうですから。」
「なるほど…皆、それでいいか?」
「おうよ!!」
「まだ子供だってのに、やるな坊主!!」
いやいや、この程度誰でも思いつくだろ…
前世でも偏差値はボロボロだったしな…
「レイフィールド殿、付け足してもいいか?」
「アラン殿、何か?」
「2階層に弓兵をできるだけ配置するべきだ。」
「理由は?」
「油を撒いて足止めできるのは地上型の魔物だけだ。これほどの大移動、飛行型の魔物もいるはずだ。」
「なるほど…そうしましょう。」
その可能性を失念していた…
この世界に来てからまだ飛行型の魔物を本でしか見たことがいないので、完全に意識の外だった。
「クラウド殿、飛行型魔物の迎撃と火の点火、頼めるか?」
「了解である!!」
「他に付け加える点はあるか?」
「はいはーい!!あーしあるよ!!」
「ルイザ殿…どうぞ。」
「2、1階層にテントとか材料とか要らないものを置きまくって、障害物を作ったらいいと思うよ!!」
「なるほど…確かに視界も奪えるし、効果的ですね。」
「でしょー?」
「え、ええ…」
レイフ兄様の顔が引きつっていた。
もしかしてレイフ兄様はこういうギャルギャルした女性が苦手なのだろうか…?
面白い一面を見つけられた。
「他に付け足す点はあるか?…無いみたいだから作戦を開始する!!全員で生還するぞ!!」
「おおおおおおおおお!!!!!!」
そこからはまるで前世の文化祭準備のようなテンションだった。
役割分担をして作業をし、命の危険が迫っているというのに皆生き生きとしていた。
俺はというと、”探知”を行使して敵との距離を警戒しながら3~2階層間の階段に油を塗りたくっていた。
既に3階層に魔物が到達し始め、徐々に脅威が迫ってくるのを感じた。
数時間後
俺はクラウドと2階層に残り、クラウドの補佐を担っていた。
「クラウド、そろそろ来るぞ。」
「いつでも来るのである!!」
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