第244章 第4ダンジョン 120層ボス戦②
「フェンリルって…まさか物語に出てくる神獣フェンリルですか!?」
「そのまさかだ…」
神々がこの世界で暮らしていたと言われている遥か昔、大陸の半分以上を巨大森林が占めていた。
美しい木々や湖がある心休まる場所で、神々にとっても安息の地であった。
誰もがずっとこの平和が続くと思っていた。
ある日、ひと際大きな黒い狼が誕生した。
その狼は非常に獰猛で、目に移る生物を全て喰らい尽くしていった。
新たな生命へ挨拶に来た他の動物も、我が子に食料を取ってきた両親さえも。
動物たちからその報告を受けた森の神は、秩序を乱す初めての存在が気になり住処の洞穴へと向かった。
洞穴の中には大量の骨が散乱しており、鼻が曲がるほどの死臭が漂ってきた。
それでも神は足を止めることはなかった。
どうしても黒い狼の存在が頭から離れなかったのだ。
最奥に到着すると、そこには何も居なかった。
きっと住処を変えてしまったのだろう。
残念に思いながら振り返ると後ろには大きな赤い狼がいた。
黒い狼のお友達かな?
声をかけてみると、右腕に今まで感じたことが無い感覚を覚えた。
肘から先が無くなり、断面から謎の赤い液体が噴き出していた。
困惑した神は赤い狼に質問しようとすると、大きく口を開けて自分を喰らった。
薄れゆく意識の中、神は自身を喰らった赤い狼こそが例の黒い狼であることを悟った。
他の神々に注意をしなければと思うも、もはや手遅れだった。
神の味を知ってしまった黒い狼は、好んで神を喰らうようになったのだ。
その後黒い狼はたくさんの神々を全て喰らい尽くした。
結果、神に等しい権能を手に入れた。
黒い狼の存在を知った創造神は世界の危険を感じ、深い闇の底に封印したとさ。
「神に等しい権能…アルフレッド、どうなのです?」
「権能=ユニークスキルだとすると…”超回復”、”植物操作”、”気候操作”、”暴食”、”吸収”の5つだな。」
「最初の3つは分かるが…”暴食”と”吸収”って何だ?」
「”暴食”はどんなものでも全て喰らい尽くし、”吸収”は喰らったものを自身の力に変えるスキルだな
。」
「それはまずいね~…」
今はスケルトンミミックが”完全擬態”しているだけなのでステータス値に変化はない。
しかし、5つの権能を得たため1人でも”暴食&吸収”されれば大きくステータス値が上昇してしまう。
つまり、何としても犠牲者を出さないようにしなければならない。
「ケイン、悪いが皆を連れて”帰還結晶”で脱出してくれないか?」
「アルフレッドさんは…?」
「こいつを倒して記録の扉から帰る。」
「ですが…!!」
「分かるだろ?1人でも食われれば勝てなくなる。足手纏いは不要だ。」
「…っ!!」
俺は敢えてオブラートに包まず辛辣な言い方を選んだ。
皆に無力感を感じさせ、脱出してもらうためだ。
クレア達には少し申し訳ないが、どうか聞き入れて欲しい。
「さっきから聞いていれば…パーティーリーダーは僕だっての!!」
「ヴォルガノフ…奴が動き出すまでに決めないといけないんだ。今はお前に付き合ってる時間は…」
「うるさいよ!少なくとも僕はここに残るからね!!」
「オレもだ!!足手纏いなんかには絶対にならないぞ!!」
「ボクも!!絶対に役に立つのです!!!」
「私もです!!」
「あたしもだよ!!」
さらに”深淵を覗く者”の残りのパーティーメンバー達も4人に続いた。
少なくともアイリスなら俺の言っている意味が分かると思っていたのだが…
いや、意味が分かっていて尚ここに残ると決意したのだろう。
「…分かった。だが誰一人として捕食されるな!!これは絶対条件だ!!!!」
「おう!!!!」
ちょうど話がまとまったところでスケルトンフェンリルの身体から煙の噴出が収まった。
どうやら”完全擬態”が終了したようだ。
”鑑定”でステータスを見てみると、”超回復”により先程削ったHP半分は全回復していた。
遠吠えをしようとしたが、俺はその隙を突いて景気づけに体術Lv.10”千手観音爆裂獣神砲”を行使した。
”ノヴァディザスター”のような遠距離攻撃スキルで、触れた箇所が爆裂する無数の掌打の砲撃である。
スケルトンフェンリルは飛翔する掌打の砲撃に気付くも、無視して遠吠えをした。
防げる余裕があるのかと思いきや、砲撃は全弾直撃して骨がボス部屋中に散らばった。
”千手観音爆裂獣神砲”でスケルトンフェンリルのHPは4割削れたが、既に”超回復”によって少しづつHPが回復している。
「全員追撃!!!!!!この機会を逃すな!!!!!!!!!!!!」
「おう!!!!!」
前衛部隊と遊撃部隊が突撃し、後衛部隊が弓Lv.5”バーストアロー”で支援する。
しかし、HPを削ったそばから”超回復”によって回復されてしまう。
何とかダメージ量は”超回復”の回復速度を上回っているが、全員で1分攻撃して1割も削れていない。
「…っ!!!全員退け!!!!!!!!!」
突如、”危険察知”に激しい警鐘が鳴ったのだ。
全員が後退すると、先程まで皆が居た地面から先の尖った植物が突き出してきた。
もし指揮が少しでも遅れていたら、ほぼ全員が串刺しにされて”暴食&吸収”されていただろう。
「…流石に一筋縄ではいかないよな。」
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