第242章 第4ダンジョン 共同戦線
「クレア、今だよ!」
「おらぁぁぁぁ!!!!!!!!」
「アマニ、パリィお願いします!!!」
「了解!」
『…完璧な連携だな。まるで何年もパーティー組んでるみたいだ。』
おかげで中衛以降に魔物が抜けてくることが無く、暇を持て余している。
それはそうとやはりダンジョンブレイクの予兆なのか、上層の魔物が下層に降り始めている。
しかしコカトリスとアルラウネのような組み合わせはなく、ただ魔物が配置される階層が1層分ずれただけなので順調に115層へ到達した。
俺の役割は今のところ”探知”と”罠解除”だけだが、全力を見せびらかすような愚かな真似はしない。
”罠解除”は斥候役の冒険者は結構習得しているので隠す必要はないのだが、問題は”探知”だ。
”深淵を覗く者”が地図が持っているので”構造探知”は隠し、効果範囲数mという体で”魔物探知”と”罠探知”だけ使えることにしている。
「予想より事態は進んでいないようですね。」
「だな。この調子だと下層にはほとんど影響がないだろう。」
「ですね。…僕の個人的な予想ですが、これはもしかしてダンジョンブレイクではなくダンジョン変動の予兆なのではないでしょうか?」
「なるほど…確かにその線の方が濃厚だな。」
ダンジョン変動とは、ダンジョンが侵入者という名の栄養を補給するために自身の姿をより効率的なものへと変化させるものだ。
例えば魔物が強すぎて栄養が寄り付かなくなれば魔物を弱体化して攻略難易度を下げ、栄養は寄り付くが仕留められず補給できなければ魔物を強化して攻略難易度を上げる。
今回は上層の魔物が下層に降りてきているという点で後者だと思われる。
後者の中でも魔物を強化するのではなく、配置する魔物をずらすことで強力化しているのだろう。
今まで15層に居た魔物が突然14層に現れれば、それなりの死者数が出るのだ。
「…仮にダンジョン変動だとして、既に収束してるんじゃないか?」
「僕も薄々そう感じています。」
理由を挙げるとすれば、112層のコカトリスとアルラウネのように2層分の魔物が1層に存在することが無くなったからだ。
さらに先程攻略した時点で113層に114層の魔物が、114層に115層の魔物がいたからだ。
おそらく”深淵を覗く者”は不幸にもダンジョン変動に巻き込まれ、俺達が救出した頃に変動が収まったのだろう。
「…ケイン、共同戦線組む必要なくなったんじゃないか?」
「ですね。しかし…」
俺達の視線の先には、和気あいあいと話している両パーティーのメンバー達の姿がある。
共同戦線を解除すれば少なくとも彼女たちは悲しむ。
それに、どちらが先に120層ボス戦に挑むのかと気まずくなる。
「…皆には内緒にしてこのまま攻略するか。」
「それが良いですね。」
それから特に危なくなることもなく攻略は進み、ついに120層ボス部屋前に到着した。
人数が増えるだけでここまで攻略が簡単になるとは知らなかった。
高ランク冒険者パーティー達がレイドという形で他パーティーと協力してボスに挑む理由が分かった。
「一旦ここで休憩がてら作戦会議をしよう。」
「おう!」
皆が休んでいる間、俺はケインから過去2回挑んだ際のボス情報を聞いた。
ダンジョン変動が起きたのでボスも変化しているかもしれないが、俺は今回の変動は軽微なものだったのでボスは変わっていないと推測したのだ。
すると、ケインは何やら困ったような表情をして言い渋っていた。
「…実は、恥ずかしながらボスの正体がよく分かっていないんです。」
「どうしてだ?」
「1回目はSSランク魔物のスケルトンドラゴンだったのですが、2回目はSSランク魔物のスケルトンフェニックスだったんです。」
「なっ…!?」
どちらもスケルトン系魔物の中で最上位に位置する強力な魔物である。
Aランク魔物スケルトンキングよりも階級が高いため、キングの指示下には入らず独立して動く個体だ。
さらにスケルトン系は骨を粉砕しない限りいくらでも再生するため、非常に厄介だ。
「でも1回目の攻略から2回目の攻略までの間にダンジョン変動の情報はなかったぞ!?」
「そうなんです。しかも、戦闘中に姿形が変化するんです。」
「と言うと?」
「1回目の戦闘開始時、少なくとも姿はスケルトンワイバーンでした。しかし、骨が修復すると共に身体が巨大化し、羽や尻尾も強化されたんです。」
「っ!?つまり…戦闘中に別個体に変化したってことか?」
「はい…2回目も戦闘開始時はスケルトンバードのような姿だったのですが、終了時にはフェニックスに…」
「…俺が調べてみよう。」
「ありがとうございます!」
ケインの話を聞き、スケルトン系の新種魔物ではないかと疑っている。
戦闘中に進化する魔物など今まで聞いたことが無いし、それも共通してスケルトン系だからだ。
根拠が軽薄だが、話からはこの程度の推測しかできない。
今回もボスがスケルトン系であると信じ、アイリスとイザベルの配置を入れ替えた。
「皆準備はいいか?」
「いつでもいいよ~!」
「じゃあ…行くぞ!!」
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