第21章 寮生活の始まり
ソフィアから逃げるように訓練部屋に入ると、そこには全種類の木剣と藁の人形がセットされていた。
「おぉ…けっこうしっかりしてるな…!!」
広さも十分にある。
ここなら満足に訓練ができそうだ。
「ひとまず両手剣は置いて…まずは授業で取り残されないように片手剣、槍、弓、盾から始めるか。」
家を出る直前、母上から様々なランクの回復薬をたくさんいただいた。
なので、師匠の時と同様に手の皮が破れて血が噴き出すまで訓練できる。
「まずは片手剣と盾から始めるか…!!」
何千回目かの素振りを終えた頃、ピロンッ!!というシステム音がした。
”鑑定”でステータスを確認してみると、片手剣Lv.1と盾Lv.1を習得していた。
「よっしゃ!!この調子で…」
気合を入れて槍に移行しようとしたところで、ノックが聞こえた。
「アルフレッド様、夕食のお時間です。」
「ああ、ありがとう。」
「失礼します。…っ!!その手はどうしたのですか⁉」
「ん?ああ、回復薬を使うから大丈夫だよ。」
「そうですか…何かご入用の際は私が買ってまいりますので、どうぞお申し付けください。」
「ありがとう。」
回復薬Eを手にかけて回復した後、生活用の部屋に戻った。
「ん…?食事は部屋で取るのか?」
「主席と次席の方はそうです。他の生徒は皆食堂でお召し上がりになっています。」
「なるほど…」
「アルフレッド様は食堂でお召し上がりになりたかったのでしょうか?」
「…いや、部屋で良いよ。わざわざ運んできてくれてありがとう。」
「いえ、それが仕事ですから。」
いつも真面目な顔をしているソフィアだが、今微笑んだような気がした。
それから夕食を終え、再び訓練部屋に戻った。
「ふぅ…さて、特にやることもないしいつも通り訓練をやりますか!」
それから槍の素振りを繰り返し、槍Lv.1を習得した。
両手剣や片手剣とは使う筋肉が違うようで、慣れていない分結構きつかった。
『今日半日頑張ってLv.1か…早くスキルLv上げないと単位を落として主席から落第し兼ねないからな…』
寝る間も惜しんで訓練をするしかないだろう。
そんなことを考えていると、再びノックが聞こえた。
「アルフレッド様、私の勤務時間は終了いたしましたのでお暇させていただきます。」
「ああ。お疲れ様。」
ソフィアの勤務時間は7:00~21:00までの長時間労働だ。
社畜時代の俺と労働時間がほとんど変わらないではないか。
「メイドも大変なんだな…せめて労働環境は良くしてあげよう…」
1度回復薬で傷を回復しながら一息つき、その後弓で矢を放ち続けて弓Lv.1も習得した。
弓も他の武器とは違う筋肉を酷使するようで、滅茶苦茶きつかった。
「もう2時過ぎ…汗を流して寝るか。」
訓練部屋の端に水浴び用のスペースが置かれているのは非常に助かる。
風呂があったら尚よかったのだが、この世界に風呂という文化が存在しないらしいのだ。
「…そういえばβテスターの役割果たせてないな。神様曰く教会でお祈りした際に…とか言ってたっけ?近いうちに教会に行ってみるか。」
水浴びをして生活部屋に戻ると、机の上に軽食と置き手紙があった。
そこには
『アルフレッド様へ。訓練お疲れ様でした。軽く空腹になるでしょうから、その際はこれをお召し上がりください。』
と書かれていた。
「気が利くな…!!良い嫁さんになりそうだな。…いや、良いメイドか?」
ソフィアに感謝しながら軽食を頂き、少し休んだ後眠りについた。
翌朝
「…よし、朝の訓練始めるか!!」
社畜時代の名残もあるが、屋敷での忙しい生活に慣れたので毎日5時前に起きている。
朝はランニングと決めているので、俺はトレーニング着に着替えて寮の外に出た。
寮母さんたちは朝食の用意をしているようで、調理室のほうに明かりがついていた。
「寮の外周は流石に短いな。…校舎の周りを走るか。」
ストレッチを終え、早速走り始めた。
走ること数分、前方に人影が見えた。
『あれは…知らない男子生徒か。』
5歳の頃から走り続けてきただけあって、体力があるため結構なペースで走っている。
彼もまあまあ良いペースだが、変に仲良くなって話しながら走る仲になってしまったら訓練にならなくなってしまう。
『変に絡まれても面倒だし無視して追い越すか…』
少しだけペースを上げ、すぐに追い越した。
「ま、待ってください!!」
「えっ…⁉あ、はい。」
男子生徒と思っていた人から女性の落ち着いた声が聞こえ、足を止めてしまった。
どうやら男子っぽい女子生徒だったようだ。
「君、速いね…」
「ありがとうございます。」
黒みがかった赤色の髪と目だ。
髪型はショートカットで、まさにかっこいい系の女子だ。
「君は…あっ、新入生代表の!!」
「アルフレッドです。先輩は…?」
「ボクは2年のエレナ。よろしくね。」
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