第208章 第18ダンジョン 成長報告
「アイリス、聞こえるか?」
「はい。どうかしましたか?」
「ギルドで報告してから帰る。遅くなるかもしれないから夕食は先にとっていいぞ。」
「ダンジョン成長は即時報告が義務ですからね。分かりました。」
ギルドに到着し、中に入ると何故かギルド職員全員の視線が俺に集中した。
疑問に思っているとパウロが慌てて俺の元へ駆け寄り、腕を掴むとそのままギルマス室へと連行した。
テーブルを挟んで対面してソファーに座り、厳格な目つきで俺を見た。
「えっと…何の用だ?」
「ダンジョン成長に巻き込まれても無事だったようだな。」
「知っていたのか?」
「当然だ。第18ダンジョンの外観も明らかに高くなったからな。」
「そうだったのか…」
ギルドへ向かう途中に外観の変化を見るために何度か振り返ってみてみたが、全然気付かなかった。
これはやはりこの街に何年も暮らして見慣れている人だからこそできたのだろう。
「それで内部の調査はしたのか?」
「一応60~80層まではな。階層増加分は調べてない。」
「それでいい。報告を受けよう。」
俺は80層ボス戦とダンジョン成長が重なったため強化されたボスと戦って勝利したこと、文献通り80層より下の層にいる魔物が一時的に弱体化していたことなど全てを緻密に報告した。
パウロはその報告を受け、特に異常なく例年通りの成長だと断言した。
「無事に成長が終わって良かったが…SSランク魔物2体を倒したのか。化け物パーティーだな。」
「褒め言葉として受け取っておくよ。」
「バーニングコングとブリザードコングのペアか…それにしてもよく倒せたな。」
「熱気と冷気をぶつけ合わせれば倒せるのでは?って思ったけど念のため1体ずつ仕留めたんだよ。」
「それが正しい。俺様が現役だった頃、Sランク冒険者パーティーがお前さんと同じ考えでぶつけ合わせたら激しい爆発が起こってな。倒せなかった上に致命傷を負ったんだよ。」
「そうだったのか…」
もしあの時の判断を誤っていたらと思うとゾッとする。
前世の知識は少なかったうえに時間が経ってほとんどを忘れたが、覚えていて良かった。
「これで報告は以上だ。」
「そうか。…お前さん、俺様から指名依頼を受ける気はないか?」
「というと?」
「階層増加分の調査をしてきてくれ。」
「それは構わないが…普通はAかBランクの上位冒険者向けの依頼じゃないのか?」
「お前さん達の方が強いしな。緊急事態があっても大丈夫だろう。」
「俺達に依頼する理由は分かった。…それで報酬は?」
「お前さんは何が欲しい?」
「…特に思いつかないな。少なくとも武器や金は要らない。」
「ところでお前さん達は第18ダンジョンの攻略が終わったら第4ダンジョンみたいな大型に挑むつもりだろう?」
「ああ。」
「そうだな…それならアルフレッドパーティーの大型ダンジョン攻略優先権でどうだ?」
「…具体的には?」
「大型ダンジョンはハイリスクハイリターンだから挑む冒険者の数が多い。記録の扉の列で2時間待ちなんて事態も結構ある。」
「記録の扉を優先的に使えると?」
「それだけじゃないぜ。未開拓階層の攻略はこの街全体の悲願だ。通常は必要なアイテムやら装備の調整は半額になるんだが、お前さん達は無料でいい。それとAランク冒険者に昇格でどうだ!?」
いくら未開拓階層とはいえ、階層増加分を調べるだけなので正直攻略優先権が得られるだけでもかなり有難い。
Aランクへ昇格は時間的な問題なので特に利益はないが、無料で消費アイテムが得られるのは願ってもないことだ。
下手に求めて他の冒険者に依頼されるよりはここで満足しておいた方がいいだろう。
「…分かった。それで手を打とう。」
「おうよ!ちなみにお前さん達はどうして大型ダンジョンに挑むんだい?」
「未攻略階層の先駆者になるのが目標なんだ。」
「なるほどな。…お前さん達ならいけるかもしれないな。」
「ありがとう。それじゃあまたな。」
それから1階のカウンターで今日得た魔石を売却し、パーティーハウスに戻った。
バーニングコングとブリザードコングの魔石は貴重なものなので、売らずに1度持ち帰ることにした。
「ただいまー。」
「おかえりなさいませ。想定より早かったですね。」
「ああ。夕食はこれからか?」
「はい。ちょうど用意しているところでございます。」
「そうか。じゃあ俺も一緒に食べることにするよ。」
「かしこまりました。」
ソフィアの美味しい夕食を取り、入浴した後会議テーブルに集まった。
風呂上がりの女性というものは何度見ても妖艶で、なかなか慣れないものだ。
「さて…結論から言う。第18ダンジョンの階層増加分を調査するようギルマスから指名依頼を受けた。」
「おぉ~!!いいじゃねーか!!」
「い、いつやるのです?」
「出来るだけ早くってことらしい。準備が整っているようなら明日にでも行きたいが…ソフィア、どうだ?」
「明日で問題ありません。食料が少なくなってきましたが、差し支えない程度で済んでおります。」
「食料はあとで俺の”アイテムボックス”から渡すことで解決する。皆異論はないか?」
「はい。」
「じゃあ明日の9:00頃にここを出発するぞ。」
「おう!!」
冒険者は生き残るためにも冒険してはならないと書物に書かれているが、好奇心には逆らえないものだ。
軽いパーティー会議を終えて自室に戻り、念のため”アイテムボックス”の確認作業をしてから眠りについた。
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