第207章 第18ダンジョン 成長
数分イザベルを説教してもティーナはまだ目を覚まさない。
がっつり攻撃を喰らっていたのでおそらく当分は起きないだろう。
「もう昼過ぎか…悪いが5人はここで昼食を取りつつ待っていてくれ。」
「何か用事があるのですか?」
「ティーナが起きなかった場合を考慮して俺が邪神教の跡地を確認してくる。」
「かしこまりました。」
「70層のボスを倒し終えたらアイリスに渡した”通信の水晶”で連絡する。そしたら全員を連れて70層の記録の扉に来てくれ。」
「了解しました。」
邪神教の跡地を確認するのはあくまで副次的な目的で、本当の目的は80層ボスが強化された件について調査するためだ。
強化されたのがボスだけならまだしも、ダンジョン内にいる全ての魔物だった場合は大きく攻略難易度が上がるからだ。
早速ボス部屋の先にある記録の扉から60層の扉へ移動し、61層に足を踏み入れた。
景色は周囲を壁に覆われた迷路のようで特に変化はない。
罠は邪神教徒が仕掛けていた可能性もあるが、始めてきた時より少なくなっている。
”魔物探知”の反応に従って歩くこと数分。
鉄の鎧を纏い、大きな斧を持ったオークの進化魔物であるBランク魔物ハイオークと接敵した。
魔物の種類は邪神教討伐の際と同じだが、”鑑定”によるとどうやらLvやステータス値が一時的に下がって弱体化しているらしい。
『書物の情報通りか…引き続き調査しよう。』
それから昼食を取りつつ各階層の隅から隅まで探索し、70層ボス部屋前に到着した。
邪神教関連の情報は一切見当たらなかったが、本来の目的の方はほとんど確信を得た。
ちなみに宝箱を4つ見つけたが、等級の低い回復薬や武器ばかりだったのでギルドで売ることにした。
『さて…行くか。』
ギィィと重い扉を開けてボス部屋に入ると、そこには1度目の攻略時と同じくAランク魔物メデューサの姿が見られた。
だが先程までの魔物と同様、一時的にLvやステータス値が下がって弱体化していた。
『これで確信を得たな。』
第18ダンジョン上層全82層の8つのボス部屋のうち1番上のボスが強化され、それより下階の魔物が一時的に弱くなる…これはダンジョンが成長したときの特徴である。
1番上のボスが強化される理由は、ここでいう冒険者などの攻略者にダンジョンコアを破壊されて成長が妨げられるのを防ぐためだ。
研究者曰く、下階で溜まった魔素を最上階にあるダンジョンコアが吸収することでダンジョンが成長するらしい。
『状況も分かったしさっさと倒して皆と合流しよう。』
”状態異常無効”によって石化の邪眼を無効化し、困惑して隙ができたところを一刀両断した。
メデューサと対峙したのは魔物征伐以来だが、やはり”状態異常無効”様様だった。
「さて…アイリス、聞こえるか?」
”アイテムボックス”から”通信の水晶”を取り出し、アイリスに話しかけた。
これは邪神教幹部と門番が連絡を取っていた魔道具で、死体をまさぐっているときに見つけて懐に入れておいたものだ。
「はい。では予定通り70層へ移動します。」
「ああ。」
ボス部屋を抜けて待機していると、記録の扉が光るや否や中から6人が現れた。
ティーナの仕草や表情から察するに、大分前に起きて状況説明を受けたようだ。
「私の任務を代わりにやらせてしまって申し訳ない。」
「気にするな。結果としては邪神教に関するものは一切出てこなかったぞ。」
「そうか。…模擬戦を通して知ったが、”アルフレッドパーティー”には化け物しかいないのか?団長は一矢くらい報いるだろうが…その気になれば5人に騎士団が滅ぼされそうなのだが。」
「あはは…その気はないから安心してくれ。」
騎士団長の存在は軽い噂程度でしか知らない。
何でもお飾り団長だの無能団長だのと呼ばれているが、剣の実力だけは確からしい。
おそらく副団長のティーナが優秀過ぎてせいぜい署名することくらいしかやることがないのだろう。
「さて…ダンジョンが成長した確認がてら80層のボスをもう1度倒しに行くが皆はどうする?」
「私はついていこう。騎士団副団長としてこの目で見ておきたい。」
「私達はパーティーハウスに帰りますね。ティーナが寝ている間も模擬戦をして満足しましたから。」
「オレ、アルフレッドと模擬戦してねーぞ!!」
「あたしもやりたかったのに~!!」
「すまん。今度埋め合わせはするから許してくれ。」
「ちぇ~!分かったよ~」
「では私達はこれで。」
再び記録の扉が光り、5人の姿が消えて俺とティーナだけが残った。
「さて…俺達も行くぞ。」
「了解した。」
攻略を進めつつ61~70層で得た情報を全て共有した。
ティーナも俺と同じく80層のボスが変化したのはダンジョンが成長したことが原因であると確信したようだ。
それから71~80層を最短ルートで攻略し、80層ボス戦へ挑んだ。
先程はSSランク魔物のバーニングコングとブリザードコングがいたが、今回はSランク魔物のキングコング1体だけだった。
難易度もパワーバランスが崩れない程度に代わっており、ダンジョンの攻略難易度も特に変化していないようだ。
『成長は収束したみたいだな。82層から何層増えたか気になるが…それは高ランク冒険者に任せるか。』
ティーナがキングコングの拳をパリィし、体勢を崩したところへ両手剣Lv1”スラッシュ”を行使して仕留めた。
「さて…それぞれ報告しに行くか。」
「そうだな。今日は色々と勉強になった。感謝する。ではまた。」
「ああ。」
記録の扉から地上に帰り、それぞれ騎士団本部と冒険者ギルドへ足を運んだ。
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