第203章 第18ダンジョン 変容
「遅れてすみません。」
「気にすることはない。」
「キミが白薔薇~?」
「そうだ。自己紹介をした方が良さそうだな。私は騎士団副団長のティーナだ。今日はよろしく頼む。」
「私はアイリスです。よろしくお願いします。」
「オレはクレアだ。よろしくな!」
「あたしはスーだよ~!よろしくね~」
「ボ、ボクはイザベルなのです。よ、よろしくなのです。」
「私はソフィアと申します。非戦闘員ですが、今日はよろしくお願い致します。」
ソフィアには俺が来るように伝えておいたのだ。
たまには一緒に外で行動したいし、何より俺が分析したティーナの実力を二重で分析してもらうためだ。
お互いに強者のシンパシーを感じ取ったのか、一瞬だけ表情が険しくなった。
相手の力量を把握するとともに、自分の実力で倒せるか見定めているのだろう。
しかし見定めが終わると、女子トークが弾んで着いた頃にはすっかり仲良くなっていた。
特にアイリスと気が合うようで、先程から業務の苦労話でずっと盛り上がっている。
まるで前世のOLの会話を聞いているようだ。
「着いたぞ。…ところでティーナはどこまで記録の扉を登録してるんだ?」
「半年前に犯罪者を追いかけて…80層のはずだ。」
「俺達は70層までしか登録してないから70層でもいいか?」
「構わない。」
「じゃあ行くぞ。」
予め門番の騎士団員に連絡していたのか、身分証明書を提出しなくてもティーナの顔パスで記録の扉をくぐることができた。
”偽装”のようなユニークスキル保持者が騎士団員に化けていたらと考えると、ガバガバな警備である。
記録の扉をくぐり抜け、70層ボス部屋奥に到着した。
早速クレアがボス部屋に戻るべく後ろにあるボス部屋の扉を開けに行った。
「あれ…?おいアルフレッド、開かないぞ?」
「…ああ、そういえばボス部屋は入り口からしか開かないんだったか?」
「そういえばそうでした…管理者の私が気付くことができず申し訳ございません。」
「いや、全員忘れてたんだ。気にするな。…それでティーナ、申し訳ないんだが80層まで攻略するってことでいいか?」
「構わない。」
「ありがとう。
今日はティーナとソフィアを含む7人構成なので前衛はクレアとティーナ、中衛はスーとアイリスとソフィア、後衛はイザベルと俺の新たな隊列を組んだ。
アイリスがソフィアの護衛、俺がイザベルの護衛役を務めつつティーナを前衛に置くことで少しでも実力を把握するという完璧な構成だ。
「それじゃあとっとと80層まで行くぞ。」
「おう!」
それからはまるでタイムアタックをしているような速度で攻略していった。
いつも通り最短ルートを導き出し、現れた魔物はクレアとティーナがワンパンで仕留めて進んだ。
ティーナは反応速度と攻撃精密度ともに優れており、流石は副団長といった実力だった。
数時間後
「着いたな。」
「凄まじい攻略スピードだな…」
「でしょでしょ~?でもいつもは走って移動するからもっと早いんだよ~!!」
「流石は彼の”アルフレッドパーティー”だな。」
「今日は…そうだな。俺はソフィアの護衛をするから5人で倒してきていいぞ。」
「りょ、了解なのです。」
「アイリス殿、いつもこんな感じなのか…?」
「はい。危なくなったらアルフレッドが助けてくれますし、私達としては安心して全力で戦えます。」
「なるほど…」
「会話はこの辺にしてそろそろ行くぞ!」
いつもより一回り大きく、装飾品も豪華になっていたボス部屋の扉を気にすることなく押し開け、中に入った。
すると、ボス部屋の左半分は赤い炎に包まれて燃え上がっており、右半分は積もった雪に包まれて猛吹雪が吹いているという今までに見たことがない環境になっていた。
左側はあまりの熱気で蜃気楼が起きており、右側はあまりの寒気で氷霧が起きている。
俺達が立つ入り口は暑くも寒くもないが、それは炎と雪で覆われたフィールド内に入るまでのことだろう。
「アルフレッド、私の記憶が正しければ80層のボスは確かSランク魔物のキングコングだったはずだ。決してこんな部屋ではなかった!!」
「どういうことだ…?」
ボスが亜種に変化する記録なら今まで実際に何回か戦ったこともあるので知っている。
しかし、魔物が属性を持つようになるのは間違いなく進化だ。
Sランク魔物キングコングの進化魔物だとすると、80層のボスは炎と氷を操るSSランクのコング系魔物だということになる。
『ボスが進化したなんて記録は見たことが…いや、ある!!』
「おそらくダンジョンが急激に成長したんだ!!総員全力で警戒態勢を取れ!!」
俺はソフィアに”結界展開の石”を3つ持たせ、”闘気操術”を全力で行使して回復スキルを持つイザベルの護衛がてら後衛に参加した。
嫌な予感を感じながら周囲を警戒していると、目の前で炎と氷がそれぞれ集約し始めた。
そして炎が赤色から青色に、雪が氷塊へと変化してそれらは現れた。
ボス部屋左側の炎を纏ったコングはSSランク魔物バーニングコング、右側の氷を纏ったコングはSSランク魔物ブリザードコングである。
どちらも体長10mほどあり、ウホウホと咆哮を上げながらドスドスとドラミングして俺達を威嚇した。
咆哮の際にはそれぞれ炎と氷が口から吹き出し、ドラミングではそれぞれ火と氷の粉が散っている。
「ボスが2体…!?そんな記録騎士団には…」
ティーナが驚きに立ち竦んでいるなか、俺達はむしろ強敵を前に生き生きとしていた。
そしてそんな俺達を見たティーナは我に返り、戦闘狂な性格を引き出して薄く笑みをこぼした。
「炎の方は俺がやる!!5人は氷の方を頼む!!」
「はい!!」
「おう!!」
ティーナとの模擬戦で身体を動かすつもりだったが、予定変更だ。
命懸けの魔物戦へと洒落込もうではないか。
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