第202章 迷宮都市 騎士団模擬戦
「模擬戦は第1部隊から順番に行う!!自分の番が来るまではいつも通り自主訓練だが、今日は手が空いたので特別に私が監督する!!」
「うぉぉぉぉぉ……」
心底嫌そうな騎士団員達の歓声が上がった。
どうやら彼らはランニングで疲れ切ったので自主訓練で怠けたいらしい。
少し申し訳ないことをしてしまった。
「それでは第1部隊は模擬戦場に移動を。」
「はいっ!!!」
部隊は武器毎ではなく、1つ1つのが独立して動けるように分けられているらしい。
第1部隊は前衛が重装タンク6人と軽装タンク4人の10人、中衛が槍使い7人と短剣使い3人の10人、後衛が弓使い8人と盾使い2人の10人というバランスの良い武器構成になっている。
「アルフレッドさん、よろしくお願いします!!」
「ああ。それで…いつもはどんな感じで模擬戦しているんだ?」
「副団長1人対5人または6人1パーティーで行っています。」
「なるほど…ならいつも通りでいいか?」
「はいっ!」
「それじゃあ準備してくれ。」
俺は“アイテムボックス“からバスタードソードを取り出し、剣が抜けないよう紐で縛って構えた。
相手は重装備でタワーシールドと片手剣使いが2人、槍使いが2人、弓使いと盾使いが1人づつの計6人構成で挑むようだ。
「この石が落ちたら戦闘開始だ。先手はそっちに譲る。」
「はいっ!」
10mほど距離を取ってから石を投げ、そして地面に落ちてコツンッ!という音がした。
すると、開始と同時に1本の矢が俺の頭を目がけて飛んできた。
俺はそれを難なく両手剣で斬り落とし、再び武器を構えた。
『殺す気満々だな…そう来なくっちゃな!!』
第1部隊は弓で牽制しつつじわじわと距離を詰めてくるため、10mあった彼我の距離はあと5mほどまで短くなった。
踏み込めば一気に届く距離であるが…
『…どれくらい手加減すればいいか分からないんだよなぁ。』
クレア達より遥かに弱いため、少し触れただけで簡単に壊れそうな気がして怖いのだ。
そんなことを考えているうちに距離を詰め切られ、重装タンク達がタワーシールドの隙間から片手剣を突き出してきた。
『こいつらの装備は頑丈そうだしこいつらで手加減を学ぶか。』
素早く突き出された片手剣を激しくパリィし、1人は即座に片手剣を手放す選択をした。
だがもう1人はそのまま手放さず、パリィされた片手剣が隣にいる重装タンクのタワーシールドを弾いた。
「そこだ!」
ガチガチに封鎖されていたタワーシールドの隙間にグレートバスタードソードを差し込み、90度回転させて横一閃した。
重装タンク達は咄嗟に屈んで斬撃を回避したが、両者のタワーシールドは遠くへ弾き飛ばされた。
だが、流石は訓練に訓練を重ねた騎士団達だ。
タワーシールドを失った瞬間に片手剣を両手持ちに切り替え、隊列を組み替えて中衛の槍使いと連携した。
下手に距離を詰めれば重装タンクは仕留められるだろうが槍が被弾し、距離を取ればまた矢が飛んできて振り出しに戻る見事な隊列だ。
『…だが甘いな!』
俺は速度に変化をつけて重装タンクへ距離を詰め、槍と片手剣で斬りかかってきたところで前衛と中衛の間にある死角へ潜り込んだ。
これにより、弓兵の射線を断ちつつ振りかぶった片手剣と突き出した槍同士がぶつかった。
「なっ!?」
『そこだ!』
想定外の事態に困惑し、油断したところで4人を斬り飛ばして戦闘不能にした。
そのうちの重装タンク1人を盾使いに飛ばし、転んで弓兵の守護が居なくなったところで弓兵を気絶させた。
そして重装タンクに押し潰されている盾使いに剣を向け、決着がついた。
「…降参です。」
「うぉぉぉぉぉ!!!」
いつの間にか木柵の向こうで自主訓練をしていた騎士団員達も観戦に参加しており、試合終了と共に大きな歓声が上がった。
監督をしていたはずのティーナも釘付けになって見ていたらしく、指摘しようにも出来ずもどかしそうにしていた。
「あー…部外者の俺が言うのも何だが自主訓練は大事だぞ。順番は回ってくるからそれまで適度に身体を温めておけよ?」
「はいっ!!」
副団長の代わりに指揮をとったので、ティーナが少し赤面しながらこちらへ軽く会釈した。
自主訓練が再開するのを見て、俺も模擬戦を再開した。
それからただひたすらに模擬戦を繰り返した。
どのパーティーも模範通りの動きで変則性がなく、飛び抜けた強者もいないので退屈だった。
結果、“闘気操術“を行使することもなく無傷で全員の相手を終えた。
その後「アルフレッドの騎士団100人斬り伝説」が巷で噂になったのはまた別のお話。
「これにて早朝訓練を終了する!!各部隊今日の予定に沿って行動せよ!!」
「はいっ!!!」
騎士団員達が続々と宿舎へ戻る中、俺とティーナはクレア達の到着を待った。
「アルフレッドから見て騎士団はどうだったのだ?正直に言ってくれ。」
「…型に囚われすぎてるな。3回戦えば戦闘パターンが丸わかりだ。」
「そうか…アルフレッドも団長と同じ意見か。」
「ん?それはどういう…」
「おーーい!!!アルフレッドーーー!!!」
詳細を聞こうとしたところで、入り口からクレアの声が聞こえて来た。
ソフィアも合わせて5人全員が来ているようだ。
「さて…後片付けも終わったし第18ダンジョンに行くか。」
「そうだな。行こうか。」
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