第198章 第18ダンジョン 帰還
ピエロの死体を“アイテムボックス“に収納してから”邪神教徒探知”に反応がないことを確認し、4人の元へ向かった。
すると、4人は爆発跡の上で深刻な表情で何かを話し合っていた。
「あっ、アルフレッド!!オレ達は上手くいったんだが…」
「あの爆発は自爆に見せかけた逃走だったようで、道化師を逃がしてしまいました…」
「それなら問題ない。逃がしたのはこいつだろ?」
”アイテムボックス”からピエロの死体を取り出し、アイリスの前に置いた。
4人は声を上げて驚き、思考停止して表情がフリーズした。
「ど、どうしてアルフレッドが…?」
「偶然俺の方に逃げてきてたんだ。」
「に、逃げられなくて良かったのです!」
「そうだね~!」
もし逃亡を許していたら、俺達の情報が邪神教本部に流れるどころか危険人物として指名手配されていたかもしれない。
そう考えるとゾッとするが、同時に敵が俺の前に逃げてきた幸運に感謝した。
「それで、この後についてだが…」
「70層まで攻略して帰ろうぜ!!」
「賛成~!!全然身体動かし足りないよ~」
「あの大男のステータス値は高かったはずだが…?」
「なんて言うか…そう、戦闘技術がなかったんだよね~」
「子供みたいな攻撃だったんだ!」
「子供…?」
パッと思いつくのは腕をブンブン振り回して攻撃することや傘で攻撃することくらいだが、流石にそれはないだろう。
大男の戦闘スタイルが気になって気になって仕方がない。
「時間も無いですし、移動しながら語り合いましょう。」
「賛成なのです!」
「そうだな。そうしようか。」
それからの戦闘報告は過去を見ないほど大盛り上がりだった。
特にアイリスとイザベルが戦った道化師は初めて見る戦闘スタイルだったので、非常に興味深かった。
『鋼線使いは漫画やアニメの中だけだと思ってたが…実在していたとはな。』
おそらく前回の活動報告でこの世界がアップデートされ、スキルが細かく設定された結果だろう。
ちなみにソフィアが鍛えている“暗殺術“もアップデート後に現れたスキルなので、道化師も似たようなものだろう。
それから“邪神教徒探知“で残党を探しながら攻略を続け、70層のボス部屋前まで来た。
邪神教徒は見つからなかったが、俺たちが来る前に70層の記録の扉から出たという可能性も考えられる。
『いや…62層にいた奴らは殲滅したし、階段から降りて来たのは幹部だけだからその可能性は低いか。』
「アルフレッド?早く戦おーぜ!」
「ああ。そうだな。」
ゴゴゴゴと重い扉を開けて中に入ると、そこには2足歩行で牛頭をした8mほどある巨大な人型魔物、ミノタウロスがいた。
右手には5mにも渡る骨切り包丁のような見た目の片手剣を地面に擦りながら持ち、肌は黒色で分厚く目は赤黒く血走っていた。
体長や肌色の特徴から察するに、これはミノタウロス亜種だ。
「咆哮されるとスタンするから厄介だな…」
「オレ達4人で戦っていいか?」
「ああ。俺は後ろで休んでるからヤバくなったら言えよ。」
「はい。」
遠くからミノタウロスの雄叫びが聞こえる中、入り口の閉じた扉に寄りかかりってウィンドウで“アイテムボックス“を操作した。
道化師の死体を“鑑定“して調べるためだ。
『ふむふむ…つまり“奇術“と“暗殺術“の複合技か?“奇術“スキルなんて初めて見たな。』
“奇術“スキルの技術は前世で言うところのマジックやイリュージョンに相当するらしい。
とすると、街の大通りでたまに公開ショーをしている大道芸人は全員“奇術“スキルを習得していることになる。
『ん…?“奇術“スキル使ってるのになんで道化師って呼ばれてたんだ…?』
考えつくのは2つ、大道芸人はタキシードを着ているが彼はピエロの格好をしていたことと奇術を教わった師匠が道化師だったことだろう。
これはいくら考えても本人に聞かなければ分からないので、考えるのを辞めた。
一通りの“鑑定“を終えた頃、ミノタウロス亜種が激しい断末魔を上げて靄になって消えた。
「よし、早く模擬戦しようぜ!!」
「そうだな。」
アイリスとイザベルは特に道化師を逃したことに悔しさを覚えたようで、いつもより模擬戦に身が入っていた。
それから記録の扉を登録し、地上に帰った。
「なっ…!」
扉から地上に出ると、俺達の姿をみた邪神教徒の門番2人が驚きの表情を浮かべた。
自分の仲間達に襲撃されて生還するとは思いもしなかったのだろう。
何らかの理由をつけて拘束や尋問されるかと思ったが、顔を青くして俺達を見つめるだけだった。
『…まあこの2人の情報はギルマスに提供済みだしな。何かしら手は打ってくれるだろう。』
そう考え、俺達はパーティーハウスに直行した。
ただいまと言いながら扉を開けると、目の前にはソフィアが立っていた。
「皆様おかえりなさいませ。ご無事で何よりです。」
「おう。案外楽勝だったぞ!」
「あたしソフィアのご飯食べた~い!」
「今準備いたしますね。」
その美しい顔にあまり表情を出すことはないが、今は少しだけ微笑んでいるように感じた。
それから食べたソフィアのご飯は美味しいだけでなく、温かみを感じる最高のものだった。
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