第179章 決闘都市 出発
第2回パーティー会議を終了し、早速俺は移動の準備に取り掛かった。
普段から部屋には最低限の荷物しか置かない上に”アイテムボックス”があるおかげで荷物整理は不要なのだ。
目的地テレジア王国迷宮都市ラビリンスはかなり遠い。
”闘気操術”で走り続けたとしても5日はかかると予想される。
ソフィアもいることだし、焦る必要もないので移動手段は馬車でいいだろう。
『…乗合馬車は安いけど気まずいから嫌だな。今のうちに予約してくるか。』
出発時刻は明日の朝で決定したので、商会で翌朝のテレジア王国行の馬車を予約した。
本来の馬車移動は護衛に冒険者を雇うのだが、自分たちで対処した方が楽だと判断した。
御者が偶然商会から信用の高い女性であったことは嬉しい誤算だった。
男性の御者が盗賊とつるんで女性乗客を売りさばく事件がごく稀にあるのだ。
特にクレア達のように希少種族や美しい女性は高く売れるやらなんやらで事件に巻き込まれやすい。
とはいえクレア達なら盗賊程度返り討ちにするだろう。
「ソフィア、馬車の予約してきたぞ。明日の9:00に正門前だ。」
「ありがとうございます。こちらは荷物整理が終了いたしました。この後部屋掃除をする予定です。」
「了解。掃除はよろしく頼んだ。」
「かしこまりました。」
「頭が痛い…む?どうかしたのじゃ?」
4人の部屋に向かおうとしたところで、階段の上から師範が下りてきた。
いつもよりだいぶ起きる時間が遅いのは、おそらく昨晩泥酔していたせいだろう。
「パーティー会議で拠点を移動することに決めたんです。」
「むっ!?急じゃの…」
「遺跡の発掘品をオークションにかけたことでパーティーハウスを買う資金が溜まりましたからね。」
「ぐっ…妾が白金貨2,300枚を借りなければもっと溜まっていたのじゃな…」
「気にしないでください。満場一致でお金より師範の無事の方が心配でしたから。」
「良い奴らじゃな。どれだけ時間をかけてでも払うから安心するのじゃ。」
「分かりました。でも無理はしないでくださいね?」
「うむ!!」
俺達としては師範が保釈されただけで満足だったのだが、師範はずっと気に病んでいたらしい。
そこでアイリスが信賞必罰の精神に則り、無金利で借りた分を返すという罰を与えたのだ。
おかげで少し暗い雰囲気だった師範は生き生きとした普段の師範に戻ったのだ。
「それで目的地はどこなんじゃ?やはり迷宮都市じゃな?」
「よく分かりましたね?」
「あそこは冒険者達のロマンじゃからな。」
「その通りです!!俺達の目標はダンジョン攻略の第一線に立って先駆者になることです!!!」
「お主らなら出来るじゃろう!妾もここで頑張るのじゃ!!」
「はい!それではまたどこかで。」
「うむ。成長を楽しみにしておるのじゃ。」
師範が宿を出るのを見送った後、4人と合流して挨拶周りに向かった。
とはいっても、冒険者活動に専念していたため知り合いはサリーちゃんくらいでほとんどいない。
「サリーちゃん、オレ達迷宮都市に行くことにした!!」
「あらぁ~寂しくなるわねぇ…」
「そうですね。こちらこそサリーちゃんには良くしてもらってありがとうございました。」
「いいのよぉ~…それにしてもあなたたちひよっこがまさかここまで成長するとは思わなかったわぁ~」
「さ、サリーちゃんのサポートのおかげなのです!!」
「そうだな。色々と世話になった。」
「ありがとぉ~ちょっと待っててねぇ~」
そう言うと、サリーちゃんはギルド職員専用の奥の部屋に入っていった。
扉の隙間からソファーで寝ている師範の姿が見えた。
呼ぼうか悩んだが、既に4人と挨拶したようだしぐっすり眠っていたので辞めておいた。
「アルフレッド君、迷宮都市のギルドにはあたしの弟がいるからこの手紙を渡すといいわぁ~」
「分かった。最後まで本当にありがとう。またいつかどこかで。」
「ええ。またねぇ~!!」
挨拶を終えてギルドを出ようとしたところで、入り口から見知った顔が入ってきた。
だが、それほど仲が良いわけでもなく名前が思い出せない。
「あ、兄貴!!どこか行くんですか!?」
「黒龍の雷の…リーダーか。拠点を移そうと思ってな。」
「そうですか…今まで世話になりました!!」
「ああ。俺達に抜かれる前に頑張ってSランクパーティーになれよ。」
「はいっ!!」
大熊宿最後の夕食は送迎会ということで、シルビアさんが豪華な料理を大量に作ってくれた。
非常に美味しかったが、まさか金貨4枚分も食べるとは思わなかった。
そんなこんなで迎えた翌朝
「では皆様…お気を付けて行ってくるのですわ。」
「シルビアさんもお元気で。」
「姉様…また会いましょう。」
「ええ!もちろんですわ!」
10分前に正門前に到着すると、既に馬車が待機していた。
流石は商会からの信用が高い御者だ。
「さて…それじゃあ迷宮都市に向かうぞ!!」
「おう!!」
これから始まる生活に胸を躍らせながら、俺達は決闘都市コルセアを出発した。
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