第168章 新遺跡 倉庫
ゴーレムを倒した部屋に戻って時計の魔道具を見ると、いつの間にか夜になっていた。
皆にも疲労の色が見えたので、”結界展開の石”を使って野宿することにした。
念を入れてじっくり準備したおかげで何の不便もなく快適に過ごせた。
翌日
全員の支度が終わるのを待ち、中央の道を進み始めた。
「…そこ罠だ。避けて進もう。」
「分かりました。」
「…そこも罠だ。避けて進もう。」
「りょうか~い。」
「…そことそこも罠だ。誤作動させて進もう。」
「は、はいなのです!!」
「ああああああああああ!!!!!!!」
順調に進んでいたと思っていたら、突然後ろから大きな声が聞こえた。
俺が見落とした罠に掛かったのかと冷や汗を垂らしながら振り向くと、むすっとした顔のクレアがいた。
俺のミスではなかったことに安心しつつ、様子を窺う。
「ど、どうしたクレア?」
「罠ばっかじゃねーか!!もう200mくらい進んでるのに隠し部屋も無い!!」
「そうだな…だがあと100mくらいで扉に着くみたいだぞ。我慢だ。」
「うむ。頑張るのじゃ。」
「おう…」
この道は縦横の縮尺やシャンデリアは他の通路と同じなのだが、右の道より罠の量が2倍近くある。
きっとこの先には大量の宝が眠っているのだろう。
もしそうでなければトラウマになってもおかしくないレベルで進むのが大変だ。
それから数十分かけて進み、ついに俺の身長の5倍近くある扉の手前まで来た。
そこは先程の作業場より2倍近く扉が大きいので、中もそれなりに広いのだと予想される。
だが扉の装飾は1つもなく、機能性だけを追求したような扉だ。
この部屋も”探知”が通らないため中の様子を窺えない。
敵がいた時に備えて意識を集中させて戦闘態勢を取る。
「…開けるぞ?」
「おう。」
ギィィと音を立てながら少しづつ扉が開いていく。
そこは照明が無いもしくは機能していないようで、真っ暗だった。
俺は警戒しつつ1人先行し、部屋に入るや否や”魔物探知”を行使した。
「…敵の反応なし。入ってきていいぞ。」
「分かりました。」
静寂の中コツコツと歩く音が響く。
”構造探知”で詳細を確認すると、横30m奥行き50mほどあった。
予想以上に広い空間だ。
周辺視野で目を慣らして上を見ると、そこにはシャンデリアが吊るされていた。
今までの推測からここは居住空間である可能性が高いため、照明がないということはあり得ないだろうと踏んでいたが。
電気による照明であればスイッチを押すだけで点くのだが、残念ながらこの異世界では魔石がエネルギー源となっている。
明かりがないということは魔石に内包されたエネルギーが切れたということなので、魔石を取り換えなければシャンデリアの明かりを再び灯すことは難しいだろう。
そう判断して”アイテムボックス”から照明の魔道具を4つ取り出して部屋の四隅に置くと、なにやら巨大な箱が6つ姿を現した。
「これは何かしらぁ~?」
「ふむ…ギルドの保管庫に似ておるのじゃ。」
「ということは…金庫かな~?」
「そのようですね。」
「”罠探知”には…開け口のところに反応があるな。下手に触らない方が良い。」
「りょ、了解なのです。」
右手前にあった金庫をじっくり観察していると、開け口のハンドル部分付近にアルファベットの羅列とB・□という表記を見つけた。
おそらくこの□に当てはまるアルファベットを選択すれば金庫が開くのだろう。
念のため右にあった残り2つも見てみると、それぞれA・□とS・□の表記があった。
『…間違いない。さっき見つけた3人の名前だ。左の3つは左側の道で分かるんだろうな。』
1度集合してこのことを説明すると、アイリスや師範も同じことに気付いていたようで深く頷いた。
クレアやイザベルはおぉ!!と感嘆の声を上げている。
「それで、今3つだけ開けるか、それとも左の道に行って暗号を把握してから6つ開けるか…どうする?」
「ふむ…ごく稀に1度宝箱を開けると二度とその部屋に入れなくなる罠があるのじゃ。この倉庫もその可能性が捨てきれんのじゃから、後者の方が無難じゃな。」
「なるほど。反対の人は…いないみたいだしそうするか。」
”罠探知”にそういった反応は無いが、もしかしたらそれはシステムであって罠に分類されないため反応していないだけかもしれない。
居住空間であることを考えてもその可能性はあり得ないだろうが、居住者しか知らないシステムがあったかもしれない。
だが、もし本当にそうであった場合は財宝の半分が手に入らなくなるので師範の意見に従った。
それから面倒だったが同じ道を戻り、ゴーレムを倒した部屋へ戻ってきた。
途中でクレアが精神的疲労から油断して壁の罠を作動させてしまい、毒が塗られた矢が飛んでくるハプニングがあったが無事に帰ってきた。
「ふぅ…少し休憩したら左の道に向かおうか。」
「了解じゃ。」
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