第151章 商会
俺が今向かっているのはこの街にある商会だ。
この前情報提供料を受け取りに行った際、サリーちゃんに
「あ、そうそう!商会に良い魔道具が入ったらしいわ〜!行ってみたらどうかしら〜?」
と言われて気になったからだ。
ちなみに今まで自分で回復薬等を作っていたため買いに行く必要はなく、商会に行くのはこれが初めてだ。
商会とは商業組合連合会の略で、冒険者ギルドと同じく多くの街に置かれている。
正確には冒険者ギルドが買い取った魔物素材等を商会に売却しているため、冒険者ギルドと商会は連動して活動している。
取り扱っているものは武器や装飾品、食料品、魔道具、衣服などありとあらゆるものが揃っているらしい。
取扱量が多いので、商会はコルセアでコロッセオの次に大きい建物である。
『…っと、着いたな。入ってみるか…!!』
木の扉を開けて中に入ると、そこは見渡す限り全てが棚と衣服、そして客で埋まっていた。
視界いっぱいに商品があるとは言っても、陳列はとても綺麗なものだ。
辺りを見渡していると、右手前に階段と案内地図を発見した。
全10階構造で、俺が目当てにしている冒険者関連の道具は3〜5階のようだ。
ちなみに商品配置は以下の通りである。
3階:武器防具等の装備品
4階:回復薬等の消費アイテム
5階:魔道具等の補助アイテム
『1階から全部見たいけど…半日で見終わらなそうだな。今日は3階から見るか。』
階段を上って3階に着くと、そこは1階とはまるで違った。
客層が衣服に身を包んだ民間人から装備に身を包んだ冒険者や傭兵に変わったというのもあるが、それよりも商品陳列だ。
中央にショーケースに入った商品飾られており、その周りに木箱に入った商品が仕舞われている。
おそらくショーケースは有名な鍛治師達が、木箱は無名の鍛治師達が作ったものだろう。
『こういうのは木箱に仕舞われた商品に掘り出し物があるんだよな…!!』
これほど多くの武器が並んでいるところを見たことがないというのもあるが、最近レアアイテムコレクターとなりつつある収集魂が昂った。
時間をかけて1つ1つを“鑑定“して回った。
2時間弱後
『…さすがに今の装備より高性能なものは見つからなかったな。』
中央に飾られているものよりも性能が高い装備…自分が初心者ならば掘り出し物であった商品はいくつか見つけた。
だが、俺に必要なものは特に見つからなかった。
『…4階行くか!!』
3階は傷ついていたり安い防具を身に纏った人が多かったが、4階は綺麗な防具を身に纏った人が多い。
防具以外に回すお金がある、中堅以上の人達だろう。
『商品陳列は1階と同じ棚になったな…』
適当に棚を選んで見てみると、そこにはTP回復薬の陳列されていた。
A〜Gまでランクごとに分類し、1つ1つ凹みにはめて綺麗に整列されていた。
『おぉ…!!なかなか大規模だな…!!』
俺が作れない、もしくは持っていない消費アイテムがないか隅から隅まで見て回った。
1時間強後
『…見当たらなかったな。』
というのも、状態異常系の回復薬など一般的な消費アイテムしか無かったのだ。
レアアイテムとしてHP増幅薬とTP増幅薬がショーケースに入れられていたぐらいなので、俺のお目当ては見つからなかった。
『期待外れだったな…いや、それだけ師範が色々と教えてくれたってことか。』
心の中で師範に感謝しながら、5階に登った。そして、階段の途中で目の前に広がった光景に唖然とした。
『なっ…人多過ぎるだろ…!!』
皆サリーちゃんと同じ情報を掴んでやってきたのだろう。
5階内に入りきらない人混みが階段まで押し寄せていたのだ。
『皆人混みをすり抜けようとしてるし、列で待ってるってわけじゃなさそうだな。…俺もすり抜けるか。』
この1ヶ月で魔物討伐クエストを行いつつ、“偽装“のユニークスキルの実験をしていた。
その結果、3つの派生スキルを獲得した。
1つ目は、ギルド登録の際に習得したと思われるが最近まで気付かなかった“ステータス偽装“だ。
これは文字通り、自身のステータス値を偽装できる。
だが、あくまでも偽装なので数値を変えても実際の能力は変わらない。
2つ目は、自身の容姿を脳内で思い描いた姿に変えることができる“容姿偽装“だ。
だが、あくまでも周囲への見え方を偽装するだけなので第三者に身体を触れられると強制的に解除されてしまうという弱点を持つ。
つまり自分を女性の姿に“容姿偽装“して胸の部分を触っても、見えるだけで感触はない。
『こ、この身体では思春期だから好奇心で試しても仕方ないよな!!』
3つ目は、自身の姿を周囲に擬態させる“迷彩偽装“だ。
これは“容姿偽装“と同様、第三者に身体を触れられると強制的に解除されてしまうという弱点を持つ。
今人混みをすり抜けるために使うべきなのは“迷彩偽装“だろう。
幸いなことに天井まで高さが5mほどあるので、姿を消して吸血鬼の羽で頭の上を通り抜ければいいのだ。
一目につかないところへ移動し、“迷彩偽装“を行使した。
『ふぅ…よし、行くか!!』
この先にどんな魔道具が待っているのだろう。
期待に胸を躍らせ、飛翔し始めた。
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