第127章 古代文明都市 地下10階
散らばった紙の中に、クリップで纏められている書類を見つけた。
開発施設で見つけた日記と同一の筆跡だ。
『あれの続きか…?とりあえず読んでみよう。』
「121日目。地下10階を増設した。前世に好きだった………のラスボス部屋を思い出して作ってみた。年甲斐もなく………盛り上がってしまった。」
前世という単語がある辺り、これはやはりフランクリンさんの日記だったようだ。
「195日目。騎士団が弱過ぎる。地下1階に配置した最弱の機械に負けるとは。仕方ないから……の配置を変えよう。」
『騎士団を殺すとか意気込んでなかったか?ゲームマスターみたいになってるが…』
「216日目。………騎士団長がエラー持ちの機械に負けてしまった。こうなったら地下1階~9階の機械を全て作り直すしかない。」
『騎士団長弱すぎないか!?…いや、あの頃は対魔物戦したことがなくて慣れてなかったからか。」
「249日目。地下1階〜9階の機械を全てスクラップにし、エラー持ちの粗悪な機械達と交換した。これで………騎士団もやって来れるはずだ。失敗作は3階と7階に捨てよう。」
『…廃棄施設はこうして出来たのか。あの量は厄介だったな…』
日記を読んでこの施設について知ると同時に、今までの攻略の思い出が蘇ってくる。
「262日目。………騎士団達は順調だ。私は暇だったので、スクラップにした………でドラゴンとリザードマンを作った。だがこれは強過ぎるので地下10階に配置しておこう。」
『…だからリザードマン型とドラゴン型だけ比類ないほど硬くて強かったのか!!』
もし元の配置のままだったら、無理ゲーと言っていいほどの高難易度設定だっただろう。
粗悪な機械達に変えてくれていて助かった…
「295日目。……施設の労働者達が立ち去ったのを思い出し、管理ユニット……を作った。ちなみにメイド服は……の趣味だ。」
寂しさを紛らわすために作った個体を、死後管理ユニットにしたのだと思っていた。
それはさておき、メイド服はいい趣味だ。
「302日目。地下9階の………メイン開発装置を解体した。裏切り者どもをモルモットにした懐かしの装置だ。サブは他に使い道がありそうなので、取っておこう。」
『…隠し部屋で見つけた紙に壊して欲しいって書いてあった装置か?手間が省けたな。』
「319日目。………騎士団がこの施設の攻略を諦めてしまった。私も歳なので、……ゲームマスターを辞めて自由に生きようと思う。」
『やっぱりゲームマスター気取ってたのか…っと、これで日記が終わってるな。』
椅子の上に白骨死体があることから、余生はここで過ごしたのだろう。
何もないが…楽しく過ごせてのだろうか?
「弟子よ、何か見つかったのじゃ?」
「い、いえ。紙以外は特に何も…師範はどうですか?」
「紙の山に埋もれてる指輪を付けた白骨死体を見つけたのじゃ!!」
それは左手の薬指に指輪をつけた、女性の死体のようだ。
フランクリンさんの死体を見てみると、彼の指にも指輪が付けられていた。
『…そうか。結婚して幸せに暮らしたんだな。』
「この指輪の“鑑定“を頼むのじゃ。」
「うーん…特に何も効果はないですね。ただの指輪です。」
「ふむ…死体から物を盗るのも気が引けるし、そのままにしておくのじゃ。」
「そうしましょう。」
アイテムを探しつつ散らばった紙に書かれている内容を読んだのだが…
全て結婚してからの日記で、のろけ話ばかりだった。
『ムカつくし燃やすか?…いや、それは辞めておくか。』
隅から隅まで探したが、見つかったのは紙とペンくらいしかなかった。
入り口や部屋に機械生命体が生きていた時点で侵入者はいないし、財宝が溜まりに溜まっていると踏んでいたのだが…
期待外れだ。
「ドラゴンが守っていたのに何もないのじゃ…」
「そうですね…」
ドラゴンは財宝を巣に溜め込む習性がある。
師範はこのドラゴンが人造の機械だということを知らないので、相当落ち込んだだろう。
「…もう帰りましょうか。」
「そうじゃな…」
中央に直通しているエレベーターで楽に帰ろうと思ったのだが…
”構造探知”によると一部が壊れていて既に動かないようだ。
『仕方ない…螺旋通路で帰るか…』
野宿をしながら来た道を辿り、地下4階まで上がって来た。
「ふぅ…一旦休憩するのじゃ…」
「そうですね。」
自動ドアを通り、畑の方へ向かっているとタイヤの擦れる2つの音源がこちらへ向かってきた。
「オ客様、オカエリナサイマセ。」
「オカエリナサイマセ。」
「た、ただいま帰りました。無事姉妹で合流できたんですね。」
「ハイ。オ客様のオカゲデス。アリガトウゴザイマス。」
「オ姉様ト一緒二暮ラセルナンテ夢ミタイデス。本当二アリガトウゴザイマス。」
「いえいえ。どうか末永くお幸せに。」
2人のメイド服を着た管理ユニットは、行きに会ったときよりも幸せそうに見えた。
ただ保管庫の素材を全て収納しただけだが、お互い幸せになれて良かった。
「…そろそろ行くのじゃ。」
「はい!!」
それからペースを上げ、地下1階に入る扉を抜けて地上に出た。
もちろんその先はクラディーバットの住処だったところで、またクラディーバットが大量に住み着いていた。
「ぬ、ぬぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
「あはは…やっぱり苦手は克服できていませんでしたね…」
師範は石の投てき、俺は両手剣Lv.9”ノヴァディザスター”で殲滅して迷いの森へ出た。
ちょうど真上に位置していた太陽は眩しく、久しぶりの外の空気は美味しかった。
『…さて、ファンタジー異世界生活の再開だ!!』
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