第122章 古代文明都市 開発施設
『そういえば…さっき壊したカプセルの近くに書類があったような気がする。』
朧げな記憶を頼りに、周辺の探索をメインに据えつつ目的地へと足を運んだ。
だが、なかなか辿り着かことができない。
『…待てよ。そういえば師範が壊したガラス、貴重だったりするんじゃないか?』
地上でもガラスは使われているが、純度が低いため白く濁っている。
しかし、ここのガラスは純度が非常に高く完全な透明なのだ。
使い道がないかもしれないが、無くて困るよりは有って困る方がいいだろう。
『…まあ“アイテムボックス“の容量に限界無いし、持っていて困ることは無いけどな。』
探索をしながらガラスの破片を拾い続けること数十分
『…全然書類見つからないな。』
大体西区画の半分を探索し終えたのだが…
ガラス以外には保存液が入っていたカプセルの土台やそれを操作する機械ばかりで、武器や防具はもちろんアイテムの1つも見当たらない。
『…まあ開発施設にそんなものあるわけないよな。レア素材を期待してたけど…それも見当たらない。』
血眼になって探しても見つかる気配がしないので、脳死状態でガラスを収納しつつ探索を再開した。
再開して数分後
『…おっ!!書類だ!!』
隠し部屋で見つけた地図と説明文同様、長い年月が経っているので茶色く変色していた。
そのため所々文字は読めないが、読めるところだけ読んでみよう。
「実験を開始してから41日目。………が作動せず、失敗。やはり……を混ぜるしかないのだろうか?……45日目。媒体を変えることで、………に成功。これは大きな1歩だ。」
『これは…日記か。実験開始初日の日記から全て集めた後に通して読みたいけど…仕方ないか。』
途切れている部分は憶測を入れて読むしかない。
そういうのは苦手なんだがな…
「52日目。……の制御が出来ず、開発員…人が死亡。奴は未だ…………のなかにいる。見つかり次第殺処分を。」
『…実験対象が開発員を殺して逃げ出したのか。一体どんな実験をしてたんだ…?』
機械生命体の実験なら、自我を持たないので殺して脱走するなんてことはないだろう。
となれば、これは別の実験ということになる。
自我を持つ生きた魔物を媒体にしたのか…?
人間を媒体にした可能性も否定できない。
「59日目。……が奴に食い殺された。これで8人目だ。機密情報を……ためにも傭兵を雇うことはできない。誰か奴を止めてくれ。」
『傭兵…古の時代にもそういった職業があったのか。』
ちなみに現代でも傭兵は存在している。
冒険者は対魔物のスペシャリストだが、傭兵は言うなれば対人のスペシャリストだ。
主に国家間の戦争や反国家団体の駆逐などの仕事をしている。
『機械生命体は魔物型ばかりだし…あの時代にも冒険者がいたかもしれないな。』
「71日目。人間の脳を……してみたが、演算能力が不足して焼け切れてしまった。やはり……は使えないようだ。」
『人間の脳…!?』
いわゆるサイボーグというものだろう。
サイボーグの頭を潰して倒した際、ドロッと脳が飛び出してくるのを想像すると吐き気がする。
機械生命体は全身機械仕掛けで助かった。
「84日目。他の開発者が私の実験を非人道的だと非難され始めた。作りかけの………で彼らを捕縛した。彼らを被験体として扱うことにする。」
『ん…?これは隠し部屋で見つけた紙に書かれてた事件だな。詳しく見てみるか。』
「97日目。国が私を狂科学者として指名手配した。……ために実験しているのに何故だ?……で反撃してやる。」
この日記を書いた者が、隠し部屋の紙に載っていたこの施設を占拠した者なのだろう。
この建物に立て篭って国と対抗したのだろうか?
「100日目。ついに……生命体が完成した。騎士団達もこれで皆殺しにしてやる。」
そこで日記が途絶えていた。
怒りが込み上げていたのか、最後の文は筆圧が強くて紙に跡が残っていた。
『騎士団もいたのか…そんなことより、その後どうなったのかすごい気になる…!!』
この開発者は国を滅ぼしたのだろうか?
それとも、騎士団に捕縛されたのち処刑されたのだろうか?
『くそっ…!!打ち切り作品みたいなモヤモヤ感が…』
続きを知りたいが、予想を立てても意味がない。
俺は気持ちを鎮め、日記を“アイテムボックス“に収納して探索に戻った。
それから特に何も見つけられずに西区画の探索が終わった。
東区画を探索していた師範と合流して成果を尋ねたが、同じく何も見つからなかったそうだ。
「無駄足じゃったな…」
「そうですね…」
期待を裏切られ、師範はとても残念そうな表情をしている。
目に光が無く、師範のこんな惨めな姿は見たくない。
「あ、明日はついに最下層の探索ですよ?楽しみですね!!」
「うむ…」
「この建物の真実が分かりますよ!!」
「どうせ文字が読めないから無理なのじゃ。」
「あっ…」
『…“言語理解“のスキルを持っていることを明かすか?…腹を括るか!!』
「師範、実は…」
俺は隠し部屋で見つけた紙やさっき見つけた日記の内容を師範に伝えた。
すると徐々に目に光が宿ってゆき、ついには満開の笑顔になった。
「ほぅ…ほぅ!!何とも興味深いのじゃ!!」
「ですよね!!」
「うむ!!明日に備えて早く寝るのじゃ!!」
「はい!!」
いつもの師範に戻ってくれて良かった。
それから2人で豪華な夕食を作り、気分を高めてから眠りについた。
明日が楽しみだ。
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