第12章 卒業試験②
それから軽く昼食を済ませた後、庭へ向かった。
「…準備はいいですか?」
「はい…!」
「審判はジョシュア=ペンシルゴンが執り行う。1本勝負、アルフレッドはアーノルドに勝てたら合格だ。」
「分かりました…!」
試験内容は予想通りだ。
「…いつでも来なさい。」
「では…行きます!!」
俺は両手剣Lv.6“ジェットスマッシュ“で瞬時に間合いを詰め、攻撃のモーションに入った。
師匠は驚く様子がなく、攻撃の軌道で防御の姿勢を取った。
「…今だ!!」
“ジェットスマッシュ“を強制停止し、そして両手剣Lv.7“ジェノスストリーム“に切り替えた。
「むっ…!!」
そう、これが俺の奥の手の1つだ。
ソードスキルを強制停止し、そして停止した軌道で別のソードスキルを行使するのだ。
初めて師匠の焦った顔を見たかもしれない。
しかし、驚いて隙ができたのは一瞬だけだった。
師匠はなんと“ジェットスマッシュ“を後ろへ向けて行使し、距離を取ったのだ。
「…驚きました。まさか坊ちゃまがこの技を使うとは…流石です。」
「ありがとうございます。改めて…行きます!」
不意打ちの“ジェットスマッシュ“はもう効かないので、今度は両手剣Lv.1“スラッシュ“の構えをしながら少しづつ距離を縮めた。
「…はぁぁぁ!!!」
間合いに入った瞬間、俺は全速力で“スラッシュ“を行使した。
もちろんこんな単純な攻撃はパリィされ、体勢を崩される。
俺はパリィされた剣の軌道を利用し、両手剣Lv.7“ジェノスストリーム“を行使した。
これは体術の訓練で体幹が強くなり、出来るようになった。
「むっ…!!」
師匠も“ジェノスストリーム“を行使し、7連撃が相殺された。
しかし、俺の攻撃は7連撃で終わらない。
「…ここだ!!」
「むっ…!!なんとっ…!!」
7連撃の相殺が終わった後、その軌道で両手剣Lv.3“アークスクエア“を行使した。
これにより、7連撃→11連撃へと変貌した。
そう、これが本命の奥の手だ。
前世でやっていたバグが多いゲームの抜け道として使っていた技だ。
俺はこれをスキルチェインと名付けた。
残りの4撃は見事師匠の身体に直撃し、1本取ることが出来た。
「そこまで!!勝者、アルフレッド!」
「よっしゃぁぁぁ!!!」
これを防がれていたら、もう勝てる見込みがなかった。
1回で決められて本当によかった…
「坊ちゃま、先程の技は…?」
「自室で訓練しているときに見つけたもので、ソードスキルを行使し終えたその軌道を利用して次のスキルを発動するんです。」
「…なかなか難しそうですね。」
「はい。俺も完全に習得するまで2年近くかかりました…」
「そんなに…!!坊ちゃまは本当に努力家ですね。」
「ありがとうございます…!!」
今まで生きていて初めて努力家などと評価された。
前世では趣味のゲームで世界ランク4桁になったりしたが、
「そんな不毛なことは早く辞めなさい。」
と言われるばかりだったのだ。
周囲の環境が悪かったとしか言いようがない。
…趣味の剣術は不毛じゃないからってこともあるだろうが。
「…坊ちゃま、少々こちらで待っていてください。」
「…?分かりました。」
数分後
師匠が皮袋に包まれた、巨大な荷物を担いできた。
「どうぞお開けください。」
紐を解き、開けるとそこには大剣が入っていた。
俺の身長、130cmとほとんど同じくらいの大きさだ。
「これは…?」
「合格祝いです。」
「ありがとうございます…!!!」
成年して今より身長が伸びたら、これを使わせてもらおう。
ひとまず『神器一覧』と一緒に自室に飾っておこう。
「俺からも少し。アルフレッド、この5年間よく頑張った。」
「ありがとうございます…」
「お前は成人したあと目の届かないところに行ってしまう…だから、実はお前の兄達より厳しく指導していたのだ。」
「っ⁉そうだったんですか⁉」
「ああ。訓練は2倍以上、勉強に関しては5倍以上だ。」
「5倍⁉」
確かに専門書のような分厚い本を毎日読むのはしんどかった。
これがこの世界の常識だと思って頑張っていたが、そうではなかったのか…
「騙したようですまない。」
「いえ…むしろ心配してくれてありがとうございました!!」
「そうか…昔から思っていたが、お前は本当に大人びているな。」
「そ、そうですか…?」
しまった。
前世の自我があることを隠しきれていると思っていたが、そうではなかったのか…!!
「まあそれは良いとして…アルフレッド、本当に冒険者を目指すんだな?」
「はい!!俺は…世界中をこの目で見て回りたいんです…!!」
「そうか…分かった。ではこの後執務室に来てくれ。」
「分かりました。」
自室に大剣を置いて水浴びをした後、執務室へ向かった。
実は、執務室に入るのは生まれて初めてだ。
少し緊張している。
「父上、アルフレッドです。」
「入れ。」
「…失礼します。」
中に入ると、机には大量の書類が置かれていた。
俺は父上の案内で、対面して座った。
父上はどこか険しい表情をしていた。
兄様達との模擬戦でも見せなかった、まるで何かに追い込まれているような顔だ。
「アルフレッド、お前にはこの屋敷から出て行ってもらう。」
「…え?」
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