第119章 古代文明都市 地下8階
翌朝
ヒカリゴケの発光とともに目を覚まし、早朝訓練を始めた。
『…筋肉痛は完治したみたいだな。』
これで昨日のように動きが鈍って重傷を負うことは無くなっただろう。
『これからはもっと最悪の展開まで考えて行動しないとな…』
もしあの時ウェアウルフ型の背後にいた機械生命体達が同時に襲い掛かって来ていたら、間違いなく俺はやられていただろう。
完全に油断してしまっていた。
「おはようなのじゃ…」
「おはようございます。向こうに洗面と朝食の用意しておいたのでどうぞ。」
「うむ!助かるのじゃ!」
毎回思うのだが、寝起きで食事が喉を通るのはすごい。
それが当たり前なのかもしれないが、少なくとも俺は数時間経たないと喉を通らない。
俺も訓練を終えて朝食を取り、出発の支度を整えた。
「…よし、行くのじゃ!!今日は何か得られるといいのじゃが…」
「そうですね…」
地図の説明によると、地下8階は保管庫のようだ。
機械生命体のパーツ用保管庫かもしれない…
が、もしかしたらレアアイテムやレア素材の保管庫という可能性もある。
『楽しみだな…!!』
それからスキルを行使して周囲を警戒しつつ、地下8階へ続く通路を下った。
効果範囲を拡大したりしてみたが、反応は皆無だった。
「…全く敵の反応がありません。」
「ふむ…」
コツコツと、俺と師範が歩く足音しか聞こえない。
まるで嵐の前の静けさのようだ。
「ここまで静かだと怖いですね…」
「うむ…警戒を頼んだのじゃ。」
「はい。」
その後警戒を強めて進んだが、相も変わらずコツコツという足音しか聞こえないまま地下8階の扉の前に着いた。
“構造探知“によると、扉の先は約5mおきに棚が並んでいる倉庫のようになっている。
“機械探知“にはただ1つだけ、小さな反応があった。
「…中に1体だけいますね。扉は地下4階と同じで自動で開くようです。」
「ふむ…では行くのじゃ。3…2…1…今!!」
「イラッシャイマセ。私ハ保管庫管理用ユニットデス。」
「あっ…」
どうやらただ1つの反応は彼女のものだったようだ。
身長がやや小さいし、なによりあげた首飾りを着けていないので地下4階のユニットとは別個体だ。
「地下4階デハ妹ガオ世話ニナリマシタ。」
「あ、いえ。こちらこそ良くしていただきました。」
管理ユニット同士で通信が繋がってるのだろうか?
何はともあれ、戦闘に発展しなさそうで良かった。
「ソレハナニヨリデス。デハ、ゴ要望を御伺イシマス。」
「貴重なアイテムとか素材が欲しいんですけど…」
「ソレデシタラA1~A20ノ棚ヲゴ覧クダサイ。ドウゾゴ自由ニオ持チ帰リクダサイ。」
「えっ…いいんですか!?」
「ハイ。放置サレルノハモッタイナイデスシ、ナニヨリ寂シイデスカラ…」
表情は真顔のまま全く動いていないが、どこか寂しそうに見えた。
やはり管理ユニットには感情があるのだろうか…?
「で、では行くのじゃ。」
「そうですね。」
入り口右手の壁にここの地図が貼ってあったので、それを参考にして移動した。
「…ここがA1の棚ですね。」
「そのようじゃな…」
地下5階の博物館とは異なり、全ての物がショーケースではなく引き出しに仕舞ってあった。
A1の棚だけでも縦横30cmほどの引き出しが約50個ある。
「これは…全部見るのにだいぶ時間がかかりそうじゃな。」
「そうですね…どうしましょうか?」
「うむ…時間は十二分にあるわけじゃし、一つ一つじっくり見て書き出すのじゃ。」
「…分かりました。」
地図によると、A1~J20まで棚があるようだ。
その全てを見るとなると…
『アルファベットの区画が10個でそれぞれ20個の棚があって、1つの棚に約50個の引き出しがあるから…10×20×50で少なくとも10,000個あるのか…』
了解の返事を出したが、改めて計算してみたらゾッとした。
「弟子よ、顔を引きつらせてどうしたのじゃ?」
「い、いえ。何でもないですよ。」
「ふむ…なら始めるのじゃ。妾には見分けがつかないことじゃし、隠し部屋でも探してくるのじゃよ。」
「行ってらっしゃい…」
『ははは…まじかよ。』
一つ一つじっくり見て回るということは、”鑑定”をして見て回るということを意味していたらしい。
師範は”鑑定”を習得していないので、当然俺1人の労働と言うことになる。
前世の社畜時代と負けず劣らずの労働状態ではないだろうか…?
だが唯一の救いとしては、この保管庫にある物は全てレア素材と思われるので”鑑定”していて楽しいということだ。
『さて…そんなこと考えてないでやりますか…』
早速A1の端にある引き出しを開けた。
そしてそこに入っていた銀色の粉に”鑑定”を行使すると、どうやらこれは魔物由来の麻痺薬らしい。
『…”パラライズバタフライの鱗粉”?初めて聞く魔物だな…』
古代文明の遺産なので、その時代に生息してした魔物なのだろう。
考古学をやっているようで、なんだか楽しい。
『…さて、ちゃっちゃと”鑑定”しますか!!』
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