望まぬ者
タイピングが絶望的で遅くなりました。明日にはスマホが直りますので投稿速度が戻ります。短いですがよろしくお願いします。
「はぁ、はぁ、はぁ」
ガササッと後ろから追い上げてくるような音。
「く、っそ。またこれかよっ」
思わず悪態を衝く。
俺は今魔物に襲われている。虚穴に入って二日目なのだが、今回ので大体十三回目くらいだ。
追ってきているのは狼の形をした魔物なのだが、その種族名は『グラトニーミミック』だった。初めに一目見たときは巨大な岩肌の見た目をしていたのにも関わらず、俺を追跡するとなると生物の形をとっている。そこから考察するにこのグラトニーミミックは無機物から有機物、ありとあらゆるモノに擬態出来るのだろう。だからこそ、弱くても生き残ったのかも知れない。
今日出会った魔物の中では一番弱い。何せレベルが五百八十ほど〝しか〟ないのだ。
地上でなら十分国を揺るがす脅威となり得るだろう。が、ここは地上ではない。
今まで出会った虚穴内の魔物でいえば、間違いなく弱いのだ。
なぜなら、今まで出会った魔物は、全てレベル千を超えていた。さすがに二千までいっている魔物はあの神取蜘蛛以来会っていない。尤魔なんてもってのほかだ。流石にそんなのがバンバン出てくれば、生き延びることが限り無くゼロに近づくだろう。現在の生存確率で言っても低いことにはかわりないので、焼け石に水程度かもしれないが。
と、ついにグラトニーミミックに追い付かれてしまった。
咄嗟に後ろを振り替えれば頭部が八方に裂けた様な口を名一杯広げてコチラに翔んでくる狼型の魔物の姿。
俺は即座に姿勢を低くし、摂食攻撃を避ける。
ジュクッ
湿った嫌な音が耳に入ってくる。
ミミックの攻撃による即死は避けられた。が、左腕が肩口より噛みきられていた。
傷口から血が噴き出す。
「【超回復】」
即座に修正。流石のこれにはミミックも驚いた様で体を硬直させていた。
俺は腰に差していた短剣を素早く引き抜くとミミックの横腹に突き立てる。
ギャリンッ
甲高い音が響く。短剣は攻撃の意味を成していなかった。
「チッ! やっぱりか」
予想通りの結果だったので瞬時に飛び退こうとする。が、ミミックの横腹が突然変形を始め、蔦のようなモノが姿を覗かせる。
シュルルっ
ソレは目にも止まらぬ速さで俺の腕に巻き付くと一気に引き絞り、俺の腕をキレイな輪切りにした。
「ぐっっ!」
苦悶の声が漏れる。
腕と同時に短剣も持っていかれた。
「【超、回復】」
まあ、いい。寧ろあの短剣が今まで無事だったのが奇跡なのだ。どうせ使いどころはないだろう。
さて、今日で何体もの魔物と遭遇したが、俺は死んでいない。が、もちろん俺が魔物を倒せる訳もなく、かといって逃げ切ることも出来ない。
なら、どうやって生き延びてきたのか。
「ぎょおろろろろぉぉぉおおおごおおおおおぉぉぉおぉお!!!!!!!!!!」
これだ。
ここは魔物が少ないのか、運良く出会っていないのか。今朝、そういうことを考えた。現状はそれに関係している。
結論からいうと、前後者共々的中していた。
どうやら太陽の真下から離れるにつれて魔物が弱く、そして多くなっていくようだった。
つまり、太陽の近くには少ないながらも強大な魔物が生息しており、離れれば離れるほど魔物の質は落ち、量は増える。
そして今の俺はかなり太陽から離れた。どういうことか。
もし魔物に襲われれば、絶対に他の魔物が乱入してくるのだ。
そして、必ずと言っていいほど俺と言う名の獲物の取り合いに発展する。その瞬間、隙が生まれるのだ。
今回も、木々をなぎ倒しながら巨大な眼球にムカデのような足が生えた魔物が乱入してきた。
お互いが咆哮し合いながら戦闘を開始する。
こうなれば本当に地獄だ。
この戦闘音を聞きつけた魔物が一斉に集ってくる。その数は数えるのも億劫になるほどの数。それも殆どがレベル千超え。
その戦場がどうなるのかは、想像に任せる。
そして、俺がそんな戦闘に加われば死ぬのは一目瞭然。そうなってくると魔物どもも俺に構っている暇もなくなってくる。その隙に、今までは逃げてきた。
今回もそうしようと、考えていた。
が、こんか地獄にイレギュラーは付き物だ。
まず、それを視界に捉えた時。目を疑った。この森の法則に反していたから。
ソレは、思い出したくもない存在だった。昨日の絶望感を引きずり上げられる。
何が起こったのかと言うと――――――――
〝尤魔〟が集い来る魔物たちの中に紛れ込んでいたのだ。
お読みくださりありがとうございました。
大変迷惑をお掛けしますこと、誠に申し訳ございません。これからは気を付けていきますのでどうかお許し頂ければと……
そういえば片割れAが『サイバー都市』を更新しましたので、そちらも良ければお読みください。