神の部屋
とーこー
視界を取り戻すと、辺り一面真っ白だった。
白と言っても、雪のような自然な白ではない。
酷く不気味で、作り物という感じがする。
「……なんだここ?」
そんな声が聞こえ、周りを見渡せばいくつもの光の球体が浮かんでいた。
その光球から喋り声のようなモノが聞こえてくる。
「うわ! なんだこれ?」
一際大きな声が響く。
「あれ? あたし死んだんじゃ?」
そんな声も。
「うおっ!」
見下ろすと、自分の体も光球として浮かんでいた。
そこで俺はふとある考えにたどり着く。
この光球たちは、あのバスで死んだクラスメイト何じゃないかと。
ということは、ここは死後の世界か?
なんて考えていると。頭の中に声が響いた。
『さて、では始めるとするか』
その声はまるで男のようでもあり女のようでもある。不思議なモノだった。
『まず、手っ取り早く説明しよう。君らは死んだ』
その言葉に周りの光球たちがざわめく。
『そして、ちらほらと気付きだしている者もいるようだが。君らは今光の玉になっている。いわば魂の状況だ』
ハッと息を呑む音が聞こえた。
『本来、死んだ者は直接〝輪廻転生〟の輪の中に放り込まれ、新たな生を授かるんだが……。ちょうど別の世界で人手が必要になった。だから、君らにはその世界で働いてもらおうと思う』
つまり、転生する。と言うことだろう。
というか、そもそもこの声の主は誰だ?
『おっと、僕としたことが説明してなかったね』
まるで俺の心を読んだかのような反応。
『僕は君たちの住む世界を管理する最高神。名は……今はいいか』
〝神〟か。
その言葉を聞いた瞬間。周囲のざわめきが天頂に達する。
『実は君たちが死んだ原因は僕の配下の手違いでね。そのお詫びという形で、君たちには記憶を保持した状態で第二の人生を提供したいと考えている』
その言葉に、野太い声が飛ぶ。
「ふざけるな! お前ら神のせいで死んだんなら、もとの世界に返せよ!」
まあ、至極当然な意見だなっと思う。
『それは出来ない。君たちは一度肉体を失っただろ? 一つの生でその魂に適合した肉体は一つしか生成が出来ない。もし地球に戻りたいのであれば、魂を作り替える必要がある。すなわちそれは、君という人格の死を意味するんだけど、それでもいいの?』
「ぐっっ」
声を発した光球が押し黙る。
というか、その言い方だと、世界を替えれば同じ魂で肉体を得られる。と言うことか。
『君、飲み込みが早くて助かるよ』
……やっぱり読まれてるのか、心。
『まあ、もしこの世界に留まりたいって言うのなら、止めはしないよ。ああ、もしそういう子がいれば、前に進み出てきて。すぐにでも戻してあげるからさ』
神がそういうと、二つの光球が前に出た。
『へぇ、君たちは記憶いらないの?』
その神の問いに、小さく呟きを返す二つの光球。
ここからでは何と言っているのか聞き取れなかった。
『わかった、それじゃあ次の人生を楽しんでね』
神がそう言うと、二つの光球は一瞬にして消えた。
辺りからざわめきが聞こえてくる。
『他の人は、一旦保留でいいかな? それじゃあ続きを話すね』
そういいながら一つ、咳払いをして言葉を紡ぐ。
『君たちが行く予定の世界は、この世界とはかけはなれた世界だ。ただ、君たちの中には詳しい人もいるかもしれない、そんな世界』
「つまり、ライトノベルに出てくるような、異世界ってことですか?」
おどおどしたような声で、一つの球体が問う。
『うん、正解。あれ面白いよね。僕もたまに見るよ』
あれ? 神ってこんなにフリーなんだっけ?
『コホン。それはさておき、今ので分からなかった人達のために説明すると、剣と魔法の世界。魔物がいて、レベルがあって、亜人なんかもいる。そういう、ワクワク一杯の世界だよ』
俺は、ここにきて初めて声を出して発言する。
「なら、そのぶん危険も付きまとうのですよね? 俺たちは只の人間です。対抗手段がありませんよ?」
俺の発言を聞いた神が、フフッと笑った気がした。
『安心して。君たちが向こうに行く時、〝ステータス〟と〝スキル〟を能えるから』
その言葉に、興奮したような声がいくつか上がる。
俺は内心、かなり迷っていた。行くか、行かないか。
さっき、今の世界に戻るには、魂を作り替え、体も変えなくちゃいけないと聞くまでは帰る気満々だった。
が、それじゃあ意味がない。俺は残された親たちのことを案じて戻ろうと考えていたのに、戻ったとき俺が俺じゃ無くなっていたら本末転倒だ。
だが、正直言って異世界ってのは〝怖い〟。
何が起こるのか未知数だ。
『いいのかい? 岬ちゃんは、向こうに行くみたいだけど』
……それ、周りにも聞こえてないですよね?
『まさか、君にしか発してないよ。こんな重要な話』
いまいちこの神が掴めない。何なんだ? 本当に。
『神だけど?』
……うぜぇぇ
『はは、そう言わないでくれよ』
分かりましたよ。行けばいいんでしょう?
『別に、強制はしてないけどねぇ?』
よく言うよ、この神。わざわざ個別に話しかけといて、俺が断れない理由もつけた癖に。
なぜ神が引き留めてきたのか、よく分からないけど、何か意図があったんだろう。
それから暫くして、この場の決定が決まった。
代表として、一つの光球が前に進み出てる。
「…自分たちは、神様の提案を受け入れたいと思います」
『そうか、ありがとう! それじゃあ、早速送ろうか?』
「いえ、その前に確認したいことが」
代表が続けて言葉を紡ぐ。
「自分たちに授けてくださる能力についてなのですが、言語についてはどうなさるので?」
確かに、世界が違うなら言語も違う。俺たちは当然喋れない。
『ああ、そんなこと。コホン、この際だから君たちに能える能力について、簡潔に説明しておこうか。まず、君たち全員に授ける能力として、二つ。【言語理解】と【鑑定】が贈られる。それからランダムで一つか二つのスキルが追加で贈られるよ。というか【言語理解】も【鑑定】も、実は既に贈ってるね。だからこうして神の僕と会話ができてる訳だしね』
その言葉にまたしてもざわめきが起こる。
もう授かっているのか。俺は試しに心のなかで【鑑定】と呟いてみた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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◇◇◇◇◇◇◇◇◇
……は?
『こらー、見ちゃだめだよ。何たって神の部屋だからね』
なんか、すごく気味が悪い。
『あはは、酷いな』
さてと、と呟く神。
『もう伝えることは済んだから。今から転送するね。ああ、安心して。肉体は〝魂の記憶〟によって、生前のものと変わらないモノが生成されるから。それじゃあ、いってらっしゃい』
その声と共に、辺りが眩い光に包まれた。
お読みいただき誠にありがとうごさいました。
後々シリアスだから今のうちにふざけておこうと思いまして……慣れないことするべきじゃなかったっすね。