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Starlog ー星の記憶ー  作者: 八城主水
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Awakening Another

 初代長門である弌月(いつき)龍装(りゅうそう)によって完全体となった阿修羅と対峙する千歳は龍脈を練り上げると自身も龍装を身に纏った。そして壱月と同じように阿修羅にも龍装を纏わせようとするがかなりの集中力が必要なうえ白の阿修羅が消えかかってしまい、千歳はすぐさま断念する。


(やっぱりいきなり"完全体"っていうのは無理か・・・)


 突然、地鳴りが響くと大地が大きく揺れはじめた。空気まで震え、地の底からなにかの唸り声が木霊する。しばらくして大地の揺れは止み、何事も無かったかのような静寂に包まれた。


「な、なんだ・・・今の地震は」


 千歳が周りを見渡してもなんら変化は無く、ただ目の前の弌月が残念そうに阿修羅を解いた。


「長門千歳、今日はここまでだ」


 そう言って壱月は龍装も解くと振り返り、イザナミたちのもとへと歩み出す。なにがなんだかわからず千歳は声をあげて弌月を呼び止めた。


「待ってください!いったいどういう・・・」


「俺たちが戦う時は今ではない、ということだ。傷を癒し、出直すがいい。」


 弌月は刀を鞘から引き抜くと何も無い空間に刃を走らせた。刃音と共に空間の裂け目が出現し、弌月は裂け目の向こうへと去っていく。


 千歳は龍装と阿修羅を解き、その場にガクッと膝を着いた。ナガトと弌月、二人の星霊と続けて戦った千歳の体力と気力は限界を迎えている。しかし心配そうに見詰めてくる紗奈の表情を見た千歳は身体に鞭を打ち、秋水(しゅうすい)を杖がわりにして立ち上がった。


「まったく、主の(わたし)に断りもなく去っていくとはな・・・」


 イザナミは壱月が消えていった裂け目が閉じていくのを見ながら呆れ気味にぼやき、千歳と紗奈の方を向くと次の瞬間には二人の前に姿を現した。両眼の魔眼でも捉えられないほどの速さに驚きながら千歳は秋水を引き抜くと構える。


 しかしイザナミが手をかざすと千歳の身体は吹き飛ばされ、駆け寄ろうとする紗奈の首をイザナミがとっ掴んだ。


「かはっ・・・!」


「紗奈、もう一度だけ言う。妾と来い、千歳はお前の傍に置いてやるから。ね?」


 イザナミは優しく語りかけるがその笑顔はとても歪で邪悪なものであった。千歳は起き上がろうとするが身体が言うことを聞かず、紗奈は両手で自分の首を掴むイザナミの手を握りしめて抵抗する。


「私はアナタの仲間にならない。私は・・・この世界が大好きだから!」


「・・・ふぅん、そう。」


 紗奈に拒絶されたイザナミは一瞬にして表情を変え、冷たい眼差しで紗奈を見詰める。そして黒い影を身体に纏うと首を掴む手に力を入れ、紗奈の首を締めはじめた。


「じゃあ、お前は死んでいい・・・」


 苦しそうな表情を浮かべながら紗奈は嗚咽の声をもらす。暗闇へと堕ちていく意識の中、紗奈には誰かの声が聞こえてきた。



───このまま死にたいか?


(そんなわけない、せっかくちぃちゃんが来てくれたんだから・・・!)


 紗奈は必死に意識を繋げながら自分にしか聞こえない声に心の中で言葉を返す。


───ならば、お前を救ってやろう。


(どうやって・・・?)


───お前の意識の底、暗闇に意識と身体を委ねるだけ。眠るのと同じことだ、簡単であろう?


 この状況で『眠る』というのはつまり、『死ぬ』という事ではないかと紗奈は不安に思う。しかし身体からは段々と力が抜けていき、紗奈の意識は暗闇へと堕ちていった。


───おやすみ、我が器よ。そしておはよう、穢れた生命が蔓延る醜き世界よ!


 気を失い、ぐったりとした紗奈の身体から黒い影が溢れ出した。そして両眼を見開いて覚醒するや自身の首を締めているイザナミの手の手首をとっ掴み、握りしめると首から離していく。


「な、これはどういう・・・!?」


 そして紗奈は反対の手でイザナミの首を掴むと持ち上げ、イザナミが纏う黒い影を自身の身体に取り込んでいく。


「ば、莫迦な、妾の力が・・・」


 やがてイザナミは気を失い、紗奈はその身体を地面へ放り投げた。紗奈の変貌ぶりに千歳は驚き戸惑う。


「紗奈・・・ちゃん?」


 自分を呼ぶ声に反応し、紗奈がゆっくりと千歳の方を向く。千歳は自分を見詰める紗奈の眼差しに既視感を感じ、ある名前を口にした。


「その眼、もしかして・・・イザナミ!?」


 その名を聞いた紗奈はニヤッと笑みを浮かべた。


「なんだ、愛想振り撒いてお前が近づいたところを殺してやろうかと思ったが・・・気付いたか。」


「な・・・っ!?」


 自分の知る紗奈からは想像もつかないセリフが彼女の口から飛び出し、千歳は動揺する。その様子を見た紗奈は不気味な笑い声をあげた。


「なんだその顔は、()()()があったから気付いたんじゃなかったのか?あぁ、惜しいことをした。この器の娘の振りを続けていれば・・・」


 口惜しげにそう呟く紗奈の目の前に天翁が歩み寄り、膝を屈して跪くと同志たちもそれに続いた。


「お待ちしておりました。貴女様こそ正真正銘、本物の

伊邪奈美命(イザナミノミコト)にございます。」


 深々とお辞儀をする天翁の言葉に紗奈は笑みを浮かべる。ナガトがいた世界と同じように千歳の世界でも紗奈は伊邪奈美命として覚醒してしまったのであった。

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