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Starlog ー星の記憶ー  作者: 八城主水
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Dash

 ナガトの世界に顕現した伊邪奈美命(イザナミノミコト)は星の命を根絶するため、まずナガトを最初の殺戮対象に選んだ。ナガトはイザナミを止めるため、なにより紗奈を救うために戦ったがイザナミの強さは常軌を逸していた。


 満身創痍で魔力も尽き、ナガトは膝をついた。イザナミは紗奈の顔で歪んだ笑顔を浮かべながら目の前で跪くナガトを見下ろす、その眼差しはあの優しい紗奈からは想像もできないほどに黒く冷たかった。そしてイザナミはナガトにとどめを刺そうとするが突然苦悶の表情を浮かべると動きが止まった。


 ナガトは刀を握りしめると立ち上がり、イザナミの───紗奈の胸を貫いた。


 ぐったりとした紗奈の身体がもたれかかり、我に返ったナガトは刀を引き抜いて紗奈の身体を力いっぱい抱きしめた。


「ありがとう、千歳くん───」


 そのたった一言だけ伝えると紗奈は息を引き取った。ナガトは涙を流し、声をあげて泣きながら生気のない紗奈の身体を抱きしめていた。この時、ナガトの両眼は星映(ほしうつ)しの眼を開眼した。


"─────"


 悲しみに暮れるナガトは何者かの声が聞こえ、『誰だ!?』と叫びながら辺りを見渡す。するといつの間にか夜のように暗くなっており、空には満天の星と自分たちの住む地球が映る。戸惑うナガトだったが再びあの声が聞こえた。


"長門(ながと) 千歳(ちとせ)、星に仇なす邪悪なる神をよくぞ屠った。此度の功績は星の記憶に記された・・・。"


 朧気だった声もはっきり聞くと抑揚のない、とても無機質な声であった。そして目の前には白銀色の人影が現れ、ナガトに歩み寄ると手を差し伸べた。


"よってお前には星と契約し、星霊(せいれい)として邪悪なる牙から守護してほしいのだ。"


 星霊降臨(せいれいこうりん)という大魔法については話に聞いただけではあったが、ナガトはまさか自分がその星霊に誘われるとは思いもしていなかった。


「・・・星霊ってのになれば、過去に戻れたりするのか?」


 ナガトの問に白銀色の人影は"召喚者次第だ。"と、また無機質な声で答えた。


 もしも自分が星霊として人々を救っているうちに()()()に戻れるなら───あの時に戻ってやり直せるなら・・・。


 そう思いナガトは白銀色の人影の差し伸べられた手を握り握手をした。これにより星との契約は完了し、ナガトの身体には星の守護が宿る。こうして無名の人間であった長門 千歳はナガトという一人の星霊となった。


 それからナガトは星霊としての役目を果たしていくが、永く孤独な戦いを繰り返すうちにある事に気付き絶望することとなる。


 ナガトはイザナミの死を経て星霊となった、つまり人々と星を幾度と救おうとも彼の世界ではイザナミ───紗奈が生きていた過去に召喚されることはないのだ。


 望みを無くすと同時に星霊として召喚され、様々な想いに触れてきたナガトは覚悟した。星霊として邪悪なる牙とやらを駆逐し、自分と同じような悲しい思いをする人間を減らすのだと。


 平行世界である千歳たちの世界に召喚されたナガトはイザナミの器となった女の子に紗奈の面影を感じて涙が出そうになったがすぐに紗奈ではないとわかった。そしてこの世界でイザナミの器となったのが紗奈ではないことに安堵しながら、自分を召喚したのがイザナミであることに妙な因縁を感じながら千歳と戦った。


 今日(こんにち)も刃を交えて心から理解した。自分と千歳は同一人物でありながら違う存在であると、だからこそナガトは千歳を殺すつもりでこの戦いの場に立った。"自分に殺されるようでは紗奈を守れない"、そう思いながら───。


 星霊として戦い、千歳に負けたのは口惜しいが同時に不思議と安堵感がナガトの胸に湧き上がる。


(なんて顔してるんだ、千歳・・・御前は勝ったんだ。少しは嬉しそうにしろっての───)


 千歳の顔を見て心の中で微笑みながらナガトの身体から力が抜け、倒れそうになるが駆け寄ってきた千歳に支えられる。


「千歳、御前は・・・御前だけは、俺のようになるな・・・紗奈を守ってくれ・・・!」


「ナガト・・・!」


 ナガトは最後の力を振り絞り、願いを伝えた。千歳はナガトの名前を呼びながら身体を揺すりながら力強い声で応える。


「わかったよ、ナガト。紗奈ちゃんは俺が絶対守る、イザナミも止めてみせる。だから───!」


 千歳が言葉を言い終える前に星霊であるナガトの身体は役目を終え、この世界から消えようとしていた。


「御前の覚悟、聞き届けたよ───」


 ナガトは満足気な笑みを浮かべながらそう告げる。そして身体は星の粒子となって霧散していき、空高く舞い上がっていった。


 ナガトの残滓を見送った千歳は両手の拳を握りしめると立ち上がり、目の前に現れた空間の裂け目を通る。するとそこは先程まで戦っていた場所ともあの噴水の公園とも違う場所だった。


「ここは・・・」


 そこは千歳たちの住む神酒円(みきまる)町から離れたところにそびえる山の麓の平野であった。千歳は星映しの眼を開き周りを見渡すと紫ヶ丘(むらさきがおか)に千尋たちやイザナミ、天翁(てんおう)と同志たちの影が集まっていた。


 千尋たちの影が見えたとき一瞬安堵したが、よく見るとその場に紗奈の影もいることに気付き千歳は考えるよりも先に足が大地を蹴り、紗奈のいる場所へと駆け出していた。


 1秒でも速く紗奈のもとへ駆けつけようと身体に龍脈を纏う、ナガトとの戦いを経て千歳の龍脈は黒と白が織り混ざったような色へと変化していた。

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