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Starlog ー星の記憶ー  作者: 八城主水
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Serious game

「「(りゅう) (そう)!!」」


 叫び声と共に龍脈の渦が炸裂すると千歳(ちとせ)とナガトの二人は龍装を身に纏った。千歳の背後には黒い龍が姿を現し、ナガトは白いシャツに黒いスーツ、そして黒いネクタイというまるで(おぼろ)たちのような服装に変化した。


 二人は刀を構えると瞬く間に姿を消し、次の瞬間にはお互いの刃と刃がぶつかり合っていた。鍔迫り合いをしながら千歳の影を写さない霊写(たまうつ)しの眼とナガトの星映(ほしうつ)しの眼、漆黒と白銀の眼差しが交差する。


「なんだ、丸腰で来たからなんのつもりかと思ったが・・・ちゃんと真剣あるじゃないか。」


「龍装しないと出てきてくれなくてね。」


 軽く言葉を交わすと二人は後方へ跳び、刀の刀身に龍脈を集中させて構える。


「「断風(たちかぜ)───!!」」


 同時に振り下ろされた二対の刀から黒と白の斬撃が飛翔する、二人は自身に向けて放たれた斬撃の軌道を見切り躱しながら距離を詰めると剣戟の音を響かせながら二人の刃が激しく幾度もぶつかり合う。


 千歳は身体に纏った龍脈で身体能力を強化すると大地を蹴りナガトの背後へ瞬時に回り込み刀を振り薙ぐ。後ろを振り返ったナガトは身を仰け反らせて躱し、千歳は刀を鞘に納めるとナガトの腕をとっ掴み身体を回転させて勢いよく投げ飛ばす。


 千歳は刀を抜いて構えると刀身に黒い龍脈を集中させる、すると背後の黒い龍も同じように構えた剣に黒い影を纏わせた。そして千歳が刀を振り下ろすとそれに合わせて黒い龍も剣を振り下ろし、二つの断風が放たれると異なる軌跡を描きながら飛翔した斬撃はナガトに直撃する。黒い斬撃が柱のようにの渦を巻きナガトが呑まれていったのを見ても千歳は気を緩めなかった。


「なるほど、たしかに前よりは強くなってるな───」


 黒い渦の中からナガトの声が木霊し、渦が龍脈の粒子となって霧散すると阿修羅(アシュラ)を発現したナガトが無傷でその場に立っていた。


(デカい、まるで神性体質(しんせいたいしつ)だ・・・)


 以前の戦いで見た時よりも巨大でナガトを覆うように具現化している阿修羅を見た千歳は息を呑んだ、同時にナガトも千歳の纏っている龍装にどこか不気味さを感じていた。


 龍装とは使用する者が思い描く龍脈の鎧を身に纏うもの、ゆえにダンテやナガトのように服装が変化するという者がほとんどなのだが千歳の龍装は服装が変わらず、刀と共に黒い影の龍が現れる。黒い龍は千歳の動きに合わせて攻撃したり、千歳への攻撃を防御するといったまるで意志をもっているかのような動きを見せていた。


(同じ人間の龍装でここまで違いがあるとはね。)


 ナガトは刀を抜かずに阿修羅が手に剣を握り薙ぎ払うと白銀色の斬撃が放たれる。千歳は咄嗟に回避すると衝撃と風圧を振り切って駆け出し、ナガトとの距離を詰めようとするが阿修羅に阻まれる。千歳は秋水の刃を指でなぞり、阿修羅の持つ巨大な剣に匹敵するほどの長い刀身を龍脈で練成した。


 そして千歳が刀を振り下ろすと阿修羅が龍脈の刃を阻み押し合いになり、そこへ黒い龍が阿修羅に向けて剣を振るう。阿修羅が黒い龍の刃を防ぐとその隙を見て千歳は刀を鞘に納め、龍脈の身体強化で一気にナガトと距離を詰める。


 "長門流剣術・居合───影違(かげたがい)"


 千歳はすれ違いざまに居合斬りを繰り出し駆け抜けた、そして暫しの沈黙のあとナガトが口を開く。


「その技は───俺も知ってる。」


 次の瞬間、千歳が膝をつく、倒れないように刀を杖がわりにしているが身体には傷を負っており、龍装も解けてしまっている。


「千歳、祖父さんに剣術習ってたのは御前だけじゃない。」


 そしてナガトは何事も無かったかのように振り向くとカチンッという鍔鳴りを響かせながらいつの間にか抜いていた刀を鞘に納める。ナガトも元いた世界で剣術道場の師範をしている祖父から剣術の指南を受けていた、居合斬りを見切ったナガトは瞬時に抜刀すると刃を防ぎながら千歳の身体を袈裟斬りにした。


「わかってはいたつもりだけど、自分を斬るっていうのはあまり気分いいものではないな。」


 そうつぶやきナガトは阿修羅を解く、そして心做しか虚しさを帯びたため息をもらした。


─────

───


 袈裟斬りにされた身体の痛みを必死に耐えながら千歳は深呼吸をする、しかし呼吸すらままならず口からは血と一緒にか弱い空気の音が漏れる。


 なぜか思考は落ち着いており解けてしまった龍装を発現しようとするが、身体に走る激痛に龍脈を練ることが出来ない。


"─────"


 声が聞こえる、龍脈の修行をはじめる前の影を纏った時に聞こえていたあの声が。以前と同じように耳を傾けようとすれば意識が遠のいていく、こんな時に気を失うわけにはいかない。必死に意識を保とうとするが呼びかけてくるその声の穏やかで優しい響きに千歳の意識は水の中に沈んでいくように暗闇へと堕ちていった。

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