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Starlog ー星の記憶ー  作者: 八城主水
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Rider

 刀を納めて一瞬でも安心したのが間違いだったと、千悟(ちさと)がそう思うほどに船の上に立つリョーマは気迫に満ちていた。


 しかしリョーマからなにかを仕掛けてくる様子はない、出方を窺っている、というよりは千悟の攻撃を待っているようにも見える。


 千悟は銃に魔力を込め弾倉の中の銃弾をすべて魔力元素弾(まりょくげんそだん)として放つ、様々な魔力を纏いながら銃弾はリョーマに向かっていくがそれらはすべて刀で切り落とされる。先ほどと違い、刀の刀身には魔力が帯びていた。


「狭間、まだなにかを隠しちゅうなら出しおよけなみしやーせん方がええぞ。」


 そう言ってリョーマが刀を納め、右手を上に掲げた。すると船体の砲門が開き、大砲の砲口が露になる。なにが起こるのか容易に想像できた千悟は身体に魔力を纏わせた。


「じゃなきゃ、これでしまいやき。」


 そしてリョーマが右手を振り下ろすとその合図と共にすべての大砲が一斉砲撃をする、魔力を纏った砲弾を必死に回避するが着弾した時の衝撃と爆風で千悟は吹き飛ばされ防波堤に勢いよく身体を叩きつけられる。


 リョーマの船の大砲が次弾を装填している間に千悟は痛みを堪えながら大地を蹴って跳び上がり、船の上に飛び乗ると銃を構えるがリョーマに服の胸ぐらを掴まれており身体がフワッと浮いた。


わや(バカ)に───すなぁ!」


 怒号と共にリョーマは海に向けて千悟の身体を思い切りぶん投げ、勢いよく叩きつけられた千悟が沈んでいった海面へ砲撃を撃ち込んだ。




(クソ、さすがだな本当に・・・)


 海中で砲撃を躱しながら星霊(せいれい)であるリョーマの抱く志とその強さをあらためて痛感するが、千悟にも負けられない理由がある。千悟はポケットから鍵を取り出すとそれを前に突き出した。


(でも、俺だってやっと好きな女に想いを伝えられたんだ。返事を聞かないまま死ねるかッ!)


─────

───


(狭間、おまんもただならん志もってこの戦いにきたっちゅうことはワシにもわかる。ほがなおんしがこがなげに沈きいくような男なわけがあるか・・・!)


 千悟が沈んでいった海を見つめながらリョーマは思いに耽っていた、心の中でつぶやいた言葉には『そうであって欲しい』という感情も込められていた。




─────ッ!!!




 突如、海中から地鳴りのような轟音が鳴り響く、そして次の瞬間、なにかが水飛沫と共に海中から勢いよく飛び出し宙を舞う。砂浜に着地したそれは唸り声のような音を立てながらその場にたたずむ。


 "鉄の馬"と呼ぶにふさわしい姿をしているそれにずぶ濡れの千悟が跨っていた、ゴーグルを外した時のその闘志に満ちた目を見たリョーマは喜びと共に安堵した。


「それがおんしの船ながか。」


 そう言いながらリョーマが再び右手を上に掲げた、千悟はゴーグルを装着し、鉄の馬───ではなくバイクのアクセルを握りエンジンを吹かすと魔力を纏わせた。


 千悟の愛銃も、いま乗っているバイクも、"魔装兵器(まそうへいき)"と呼ばれ、魔力を纏わせることで真の力を発揮する。長門(ながと)の"魔眼"や有間(ありま)の"神性体質"といった特異な能力を持たない狭間家の人間にとって異形や神秘に対抗するための唯一の手段である。



 リョーマが右手を振り下ろすと爆音と共に大砲から砲弾が射出される、千悟がアクセルを握るとバイクは轟音を鳴らしながら走り出す。砲弾を躱しながらバイクは魔力を纏ったタイヤで海上を走り、リョーマの乗る船へ向かっていく。


 そしてバイクの帯びる魔力は膨れ上がり、その速度と相まって彗星のように船へと激突すると文字通りに駆け抜け、船体に大きな風穴を空けた。



 砲撃は止み、リョーマは船の上でただ黙って立っている、千悟もバイクに跨ったまま沈黙で返した。


 しばらくしてお互いに背を向け合ったままリョーマが口を開いた。


「行け、狭間。」


 その言葉を聞き、振り向こうとする千悟を『振り返るな!』とリョーマが強く制止した。


「おんしにゃなさせんといかんことがあるろう、やき・・・行けぃ!」


 リョーマの叫びに呼応してか、千悟の目の前に空間の裂け目が現れる。千悟は名残惜しさを感じながらもアクセルを握りしめ、裂け目に向かってバイクを走らせた。


─────

───


 戦いの場から千悟が去り、空間の裂け目は閉じた。


 船の上に残されたリョーマは後ろを振り向き、燦々と輝く太陽を見つめる。




 ───突如として呼び出され、予期せぬ縁に恵まれた。


 ───驚くことも多くあったが、とても良い旅行だった。



「まっこと、満足ぜよ・・・!」



 リョーマは陽射しに向けて微笑んだ、そして星の記憶で召喚されたその身体は光の粒子となって霧散していく。


 リョーマは意識が星に還らぬうちに大きく息を吸い、めいいっぱいの大声で太陽と海に向かって叫んだ。




 "頑張りや!若者たちよ!縁があったらまた会おうや!!!"

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