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Starlog ー星の記憶ー  作者: 八城主水
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Gun man

 (ふしど)と名乗る天翁(てんおう)の同志の案内で千悟(ちさと)が空間の裂け目に足を踏み入れると、目の前に大海原が広がる砂浜へと景色が変わった。


 そこには既に着物姿の若者が腕を組んで立っており海をじっと眺めている、若者は千悟に気づき背を向けたまま声をかけた。


「待っとったぜよ。海を眺めるがは好きじゃが、この時代の海はまっこと静かじゃのう。」


 そして千悟の方へ振り向いた若者はこれから戦う相手に向けるものとは思えないほどの気さくな笑顔を見せた。


「・・・そういや、名を名乗っとらんかった。ワシの名前はリョーマじゃ、おまんは?」


狭間(はざま) 千悟(ちさと)です。」


 リョーマと名乗る若者に千悟は自分の名前を名乗った。


「さて、生きる時代も違うワシら二人、長々と話すこともないじゃろ。」


「・・・そうですね。」


 千悟は頷くとリョーマに背を向ける、その行動にリョーマは不思議そうな表情を浮かべた。


「そりゃどういうつもりじゃ?」


「アメリカのとある地域じゃ銃を使う者同士の戦いはこうして互いに背を向け合って合図と共に始まるんですよ。」


 西部劇などでよく見るガンマンたちの決闘の形式を千悟が説明するとリョーマは眼を輝かせた。


亜米利加(アメリカ)の!?そりゃおもろい!」


 そしてウキウキした様子でリョーマも千悟に倣い背を向けるとこの場から去ろうとしている臥に声をかける。


「のうおんしゃ!もしいぬる(帰る)なら始まりの合図だけやってくれんかのう!」


「・・・承知した。」


 臥はリョーマの要求を聞き入れると右手を上に掲げた、千悟とリョーマはお互いに背を向け合ったまま愛銃を取り出すと構える。


 静寂のなか、臥は右手を勢いよく振り下ろしながら大声で叫んだ。


「始め!!!」


 その合図と共に二人はバッと向き合い引金を引くとお互いの銃から一発の弾丸が放たれた、二つの銃弾はすれ違いながら標的へと一直線に向かっていく。


 二人は自身に迫り来る銃弾を躱しその度に引金を引いては相手に向かって銃弾を放つ、そんなことを繰り返すうちに二人の銃の弾倉から弾が尽きた。


 千悟は弾を再装填すると目に見えるほどの魔力を銃に纏わせ銃弾を二発放った、二発の銃弾は赤い炎の魔力を纏っておりロケットのように加速しながらリョーマに迫る。


「うぉっ!なんじゃあッ!?」


 リョーマが声をあげて驚きながらギリギリ銃弾を躱すと千悟は心の中で『惜しい』とつぶやいた。


 千悟が銃から撃ち出したのは"魔力元素弾(まりょくげんそだん)"、弾倉の弾に魔力を蓄積させて撃ち出し、その銃弾は魔力の属性によって異なる特性を持つ。


 再び千悟が炎属性の魔力元素弾を射出し、銃弾は炎の魔力の特性で超加速しながら標的であるリョーマへと迫る。しかしリョーマが手を前にかざすと水の壁が現れ炎の銃弾を防ぐ、その光景を目にしたリョーマは感嘆の声をあげた。


「ほぉ!便利なもんじゃの、()()っちゅうのは。」


 そしてリョーマは弾を装填した銃を構えると銃弾を放つがそれらは何の変哲もない銃弾であり千悟は難なく躱す。


 千悟は再び銃を構えると魔力を帯びた銃弾を二発撃ち出した、先程とは違い二発の弾は黄色い雷の魔力を纏い普通の銃弾ではありえない不規則な軌道を描くが、リョーマは銃弾の軌道を見切り二発の弾を回避した。


 すると躱された二発の銃弾はリョーマの後方の空中で『バチッ!』と音を立てて軌道を変え、背後から再びリョーマへと襲いかかる。


 音に気づいたリョーマは即座に後ろへ振り向きながら拳銃を手離す、そして腰に差していた刀を抜くと雷の魔力を帯びながら飛来してきた銃弾を二発とも斬り落とした。


「いかんのぉ、思わず刀抜いてしもうた。おんしとはピストルで勝負したかったんに・・・」


 そしてリョーマは自身の手に持っている刀を見てどこか残念そうな表情を浮かべる。


「そりゃしかたないでしょう、アンタは生粋の武士だ。拳銃より刀を握っていた時間の方が遥かに長いはずだ。」


「なんじゃ、ワシのこと知っとるんか?」


「この国でリョーマさんのことを知らない人はいませんよ。」


 『教科書で見たまんまだし』と、千悟は心の中でそう思った。


「しっかしおもろいぜよ、ワシが生きとった時代にはおんしのようなピストルの使い手はおらんかった。」


 心底楽しそうな笑顔を浮かべながらリョーマは地面に落ちた銃を拾うこともなく刀を構える、すると彼の纏う威圧感は拳銃を持っていた時のものとは比較にならないほど膨れ上がった。


「・・・すまんのぉ狭間、わしゃ()()()のが性に合っとるようや。」


「お気になさらず、俺には()()()しかないんでね。お互い、好きに()りましょうや。」


 リョーマの言葉に千悟は気楽な口調で応じながら銃を構える、言葉とは裏腹にその表情には油断など欠片もなかった。

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