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Starlog ー星の記憶ー  作者: 八城主水
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Opening

 伊邪奈美命(イザナミノミコト)星霊(せいれい)たちとの邂逅から1ヶ月が経ち戦いの日がやってきた、千歳(ちとせ)は朝早くに起きるとまだ寝ている家族を起こさないように家から出て門を静かに閉めた。


「おはよう、ちぃちゃん。」


 そして公園に向かおうとすると突然背後から声をかけられ千歳は驚いて身体がビクンと跳ねる、後ろを振り向くとそこには紗奈(さな)が立っていた。


「あぁ、おはよう紗奈ちゃん。どうしたの、こんな朝早くに・・・」


「ちぃちゃんこそ、こんな朝早くからどこに行くのです?」


 紗奈からの問に千歳は言葉を詰まらせた、そんな千歳の様子を察して紗奈はひとつため息をつく。


「わかってるよ、若葉ちゃんを助けに行くんでしょ?」


 そして紗奈は千歳に歩み寄り、両腕を広げて千歳の身体を力いっぱい抱き締めた。


「ちょ、紗奈ちゃん!?」


「私に黙って行こうとするなんて、『いってらっしゃい。』の一言くらい言わせてよ・・・」


 紗奈は戸惑う千歳の胸に頭を寄せそうつぶやいた、千歳は紗奈の優しさに感謝しながら彼女の身体を抱き締めると、紗奈のあたたかい身体の体温が夏の暑さのなかでも心地良く自分の身体に伝わるのを感じる。


「行ってくるね、紗奈ちゃん。」


「うん、いってらっしゃい。ちぃちゃん。」


 二人は名残惜しそうに離れ、千歳は公園への道を歩いて行った。紗奈も千歳の無事を祈りながら後ろ姿をじっと見守っていた。


ーーーーー

ーーー


 千歳が公園に足を踏み入れると入り口から人避けの結界が張られていた。公園の中を歩き噴水広場に着くと既にイザナミや天翁(てんおう)、その同志たちがおり千晶の相手である鬼頭(きとう)や星霊たちの姿がなかった。


「おはようございます長門(ながと)さん、お待ちしておりました。」


 天翁の同志である(おぼろ)が千歳に気づき歩み寄るとお辞儀をする。


「あぁ、えぇと、おはよう・・・ございます。」


「いい顔つきになりましたね、良い師のもとで修行を積んだようだ。」


 丁寧な朧の挨拶に千歳は戸惑いながらも挨拶を返す、朧はそんな千歳の顔を見て優しく微笑んだ。そして次第に千尋(ちひろ)千悟(ちさと)千晶(ちあき)桐江(きりえ)がやってきて公園の噴水広場に集まった。


「千歳、もう大丈夫なのか?」


 千尋が心配そうに千歳にたずねると、千歳はニッと笑顔を浮かべ右手の拳を握り千尋に向けて突き出す。


「大丈夫だ。前よりも強くなったぜ、俺は。」


「・・・ふっ、そうみたいだな。」


 自信に満ちた千歳の表情に安心した千尋は突き出された千歳の右手の拳に自分の左手の拳をガシッと合わせた。そしてそこに千悟と千晶の拳も加わり、4人はお互いの顔を見合いながら笑みを浮かべた。


「とっととアイツらぶっ飛ばして、また皆で遊びに行こうぜ。」


 千悟の言葉に他の3人は強く頷いた、そして千悟はひとつ息を吸うと声を張り上げた。


「勝つぞッ!」


「「「おうッ!!!」」」


 千悟の掛け声に千歳、千尋、千晶の3人も大きな声で応え、4人は拳で作った円陣を解いた。


 そんな千歳たちの様子を見た天翁や(かい)、他の同志の二人は『人間が星霊にかなうはずがない。』と鼻で笑っていたが、朧だけは憧憬(しょうけい)の眼差しで見つめていた。



「さて、そろそろはじめるとしようか。」


 イザナミが指をパチンと鳴らすと千歳たちの前に空間の裂け目が4つ現れた。


「この先に御前たちの相手がいる、邪魔者など誰ひとりとしていない。存分に殺しあえ。」


 そう言ってイザナミは朧たちに合図をすると千歳たちのもとに1人ずつ天翁の同志たちが歩み寄る。


「今日の我々は案内役です、どうぞこちらへ。」

 

 千歳に声をかけて朧はひとつの空間の裂け目に入っていく、千歳もそれに倣って裂け目に足を踏み入れた瞬間、今までいた公園とは景色がまったく変わり千歳は周りを見渡す。


「来たか、千歳。」


 千歳が声の聞こえた方を向くとナガトが宙に浮いた状態で両眼を閉じ坐禅を組んでいた、千歳もアメリカの荒野で似たようなことをしていたがナガトの龍脈に乱れはなく安定している。


 案内役の務めを果たした朧は振り向くと入ってきた裂け目に向かって歩き出した。


「長門さん、ご武運を。」


 千歳とすれ違いざまにそう言って朧は裂け目の向こうへと消えて行った、それと同時に空間の裂け目も閉じこの場所には千歳とナガトの二人だけとなった。


 そして瞑想を終えたナガトは両眼を開き地に足をつけ刀を構えながら千歳を睨む、ナガトの両眼は既に星映(ほしうつ)しの眼を開いており、千歳も左眼の霊写(たまうつ)しの眼を開き身体に黒い龍脈を纏う。


「・・・勝てると思ってるのか?」


 余裕の笑みを浮かべ千歳にそう問いながらナガトは白銀の龍脈を身体に纏う、千歳はひとつ深呼吸をすると力強い声でナガトの問に答えた。


「勝つさ。」


 千歳とナガトの纏う龍脈が渦を巻き辺りに強風が吹き荒れる、そして二人の叫びと共に戦いの幕が上がった。



「「(りゅう) (そう)!!」」

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