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Starlog ー星の記憶ー  作者: 八城主水
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Platinum

 修行で自身の龍脈との邂逅を果たした千歳は龍脈から攻撃を受けてしまい、その日の修行は断念した。ダンテから休息を取るように言われていた千歳だったが、次の日の早朝にはレリクスバレーに1人で来ていた。


 千歳は1番近くにある純白色の高い岩に近づき右手に黒い影を纏わせると、昨日ダンテがやったように右手を岩に押し当てる。すると手の黒い影が白い岩に吸収されていき、千歳が手を離すと白い岩の岩肌から唸り声と共に純白色のゴーレムが姿を現した。


 純白の身体に黒い影を纏うゴーレムは千歳の姿を見るや龍のような荒々しい咆哮をあげた。昨日戦った赤い岩のゴーレムよりも強い威圧感と殺意に圧倒されないように千歳は己を奮い立たせ、全身に黒い影を纏い純白のゴーレムと対峙する。


─────

───


 太陽が輝き雲が漂うアメリカの青空の下、青い流れ星が疾走する。


(急がなければ・・・チトセ、早まったことを!)


 今朝方、紗奈が血相を変えてエヴァンス夫妻のいるリビングにやってくると千歳が部屋にいないと言うのだ、千歳はレリクスバレーにいるに違いないと向かおうとするダンテに紗奈が一緒に連れて行ってほしいと頼む。


 ダンテは一瞬躊躇うが紗奈を自宅のガレージに停めている車の後部座席に乗せ、自身は運転席に座りハンドルを握る。


「サナ、シートベルトをしっかり締めるんだ。」


 そう言いながらダンテがアクセルを踏むと車は青い龍脈を纏って走り出し、瞬く間にダンテの自宅の前から姿を消した。


 そしてレリクスバレーに到着し、車から降りたダンテと紗奈は千歳が純白色のゴーレムと戦っている光景を目にする。


「いた!」


Jesus(なんということだ)!よりによってプラチナゴーレムを起動するとは!」


 このレリクスバレーに点在する高い岩、龍脈を注いだり自然を脅かす者に対してへの防衛機能としてゴーレムが起動するのだが岩の色によって強さ、ランクがある。


 千歳がはじめて戦った赤いゴーレムは"ブロンズゴーレム"と呼ばれ、この荒野の中ではランクが一番下である。そしていま千歳が戦っている純白色のゴーレムは"プラチナゴーレム"、この荒野において最高ランクのゴーレムである。


(しかしプラチナゴーレムはそのあまりの強さがゆえに温厚で起動したとしても滅多に人は襲わないはずだが、あのプラチナゴーレムは明らかにチトセに殺意を持っている・・・なぜだ?)


 巨大で重厚感のある見た目とは裏腹に素早い動きと攻撃で千歳を追い詰めていくプラチナゴーレム、千歳はそんなプラチナゴーレムの攻撃を避けるので精一杯でまともに攻撃を仕掛けることもできないでいた。


 ダメージを与えたとしてもブロンズゴーレムのように傷を修復され、より堅固になっていくだろうことは前回の戦いでわかっていた。


(決めるなら一撃、影を集中させた攻撃で急所を叩くしかない!)


 そう思い千歳は右腕に影を集中させ、霊写(たまうつ)しの眼でプラチナゴーレムの弱点を探る。そうした中で千歳の耳には細々とあの囁き声が聞こえ、意識が朦朧としはじめる。しかし影を解くわけにもいかず千歳はその場に膝をついてしまう。


「ちぃちゃーーーん!!!」


 そんな様子の千歳を目の当たりにし紗奈は千歳の名前を叫ぶ、気づいた千歳は声が聞こえた方を向くと紗奈が千歳を心配そうな表情でじっと見ている。


「紗奈ちゃん!?どうしてここに・・・?」



『█████ー!』


 突如プラチナゴーレムが咆哮をあげ、紗奈がいる方向へと歩き出す。千歳はプラチナゴーレムを止めようとなんとか立ち上がろうとするがあの声が聞こえ千歳は意識を奪われそうになる。


 影を纏わなければ千歳には戦う術がない、千歳は思い切って意識を澄ませ声を聞き取ろうとする。



『───るよ。』



 するとなにを言っているかわからなかった声が段々と聞こえるようになっていき、言葉として聞き取れるようになっていく。


 そして───。


『私にまかせて。』


 その言葉がはっきりと聞こえた時、千歳の意識はまるで眠るように暗闇の中へと消えていく。


『私はわかるなぁ、その子の気持ち。』


『え?』


 薄れゆく意識の中で千歳は昨日の紗奈との会話を思い出す。


『その子はきっと、()()()()()()()()()()んだよ。』


─────

───


 千歳の意識が目を覚ますとプラチナゴーレム、ではなく黒い龍が目の前に立っていた。千歳の右手には刀が握られており、黒い龍も昨日の夢の中で千歳の身体を貫いた剣を持っている。


「・・・力を貸してほしい、大切な人が今ピンチなんだ。」


 千歳の言葉に黒い龍はなにも言葉を返さずただ無言で立っている。


「頼む・・・俺にとってとても大切な、俺が本当に守りたい人なんだ。」


 千歳の言葉に黒い龍は剣を構え、昨日と同じように千歳の身体に突き立てようとする。しかし千歳は自分に向けられている剣を防ごうともせず、右手に持っていた刀を手放し両腕を広げる。


 すると瞬く間に黒い龍は姿を変え黒い人影となって千歳の身体に抱きついた、千歳は広げていた両腕でそっと黒い人影を抱きしめた。


「俺のことは守ろうとしなくていい、これからは・・・()()()()()()()。」


 千歳の言葉に黒い人影はコクンと頷くと千歳から離れ、右手を差し出す。千歳はその右手を自分の右手でそっと握り握手を交わすと、黒い影が握手している右手を伝って千歳の身体に纏わりついていく。


 そして黒い人影が千歳の右手をするりと名残惜しそうに離すと二人の目の前に扉が現れる。


「ありがとう。」


 千歳は扉のノブに手をかけ、黒い人影に向けて感謝の気持ちを伝えると扉を押し開けた。


─────

───


 意識が現実世界に戻ると千歳はすぐさま黒い影を纏うと全力で大地を蹴って飛翔し、紗奈に向かって歩いているプラチナゴーレムの前に立ちはだかる。


 もうあの声は聞こえない、千歳は右手に影を集中させると一振の刀が姿を現す。そして千歳は鞘から刀を引き抜きその勢いのまま縦に一直線に振り上げる。


 冷たい刃音と共にプラチナゴーレムの身体の中心線を黒い線が走り、千歳は振り上げた刀を鞘にゆっくりと納めていく。そしてカチンッという鍔鳴りと共にプラチナゴーレムの身体は縦に両断され、ただの白い岩となって辺りに散らばった。


 千歳は影を解くと青空を見上げ安堵のため息をつくが、このとき自身の身体に起こった異変に気付いていなかった。

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