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Starlog ー星の記憶ー  作者: 八城主水
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U.S.A.

 3人がアメリカに到着した頃には日が落ち空は暗くなりはじめていた。ダンテが手配したタクシーに乗り、千歳と紗奈がアメリカに滞在する間お世話になるダンテの自宅へと向かっていた。千歳と紗奈は生まれて初めてのアメリカで周りの景色をタクシーの窓から見渡していた。


「あ、そうだ。ダンテさん・・・」


 千歳がタクシーの助手席に座っているダンテの名前を呼ぶと、ダンテはなにかを思い出したかのように声を上げ千歳の言葉を遮る。


oops(おっと)!そうだ、2人とも。ずっと気になっていたんだが、今から私に敬語は無用だよ。呼び方も"ダンテ"でいい。」


「あぁ・・・えぇと、じゃあ、ダンテ。日本で空港に行く前、結月大社(ゆづきおおやしろ)に御参りに行ったのは何のために?」


 千歳の言葉を聞き、隣に座っている紗奈が肩を指でちょんちょんとつつく。


「えっと、映画だと最初からキャプテン・ドラゴンは龍脈を使ってるけど、漫画版だと日本で修行して龍脈を習得してるの。その修行の場所が結月大社なのですよ。」


Excellent(素晴らしい)!百点満点だよサナ。」


 ダンテに褒められ、紗奈はとても得意気な笑顔を浮かべて喜んでいる。しかし千歳にはひとつの疑問が浮かんだ。


「え、じゃあ日本でよかったんじゃ・・・」


「チトセ、その時になれば説明するさ。大丈夫、わざわざアメリカまで来させて手ぶらで帰したりはしない。それだけは信頼してくれ。」


 ダンテにそこまで言われては千歳も納得するしかなく、それ以上はなにも言わなかった。その横で紗奈はなんの事かわからず首を傾げていた。


 数十分ほどしてタクシーが目的地に停車し、先にタクシーから降りた千歳と紗奈は目の前に建つ豪邸に唖然としていた。


「うわデッカ・・・」


「さすがスーパースターだね・・・」


「二人とも、ようこそアメリカへ!ようこそ我が家へ!」


 自宅の扉の鍵をカードキーで解錠し、ダンテは扉を開けて2人を家の中へと招き入れる。玄関ホールに入るとエプロンを着けた女性が3人を出迎えた。


「おかえりなさいアナタ、2人ともよく来たわね。」


「ただいまビーチェ。」


 ダンテと妻であるベアトリーチェ=エヴァンスはハグとチークキスをする。日本では見慣れない挨拶に千歳と紗奈は思わず視線を逸らす。


「じゃ、2人とも荷物を置きに行こうか。」


 そう言ってダンテは千歳と紗奈を連れて階段で2階へと上がって行く、そしてダンテはひとつの部屋のドアを開けると2人をその部屋に通す。



「・・・ん?」


 部屋は広く、綺麗に片付けられていた。千歳が目を疑ったのはその広い部屋にベッドが2つ並んでいることだった。


「ダンテ、もしかして・・・」


「ん?ここが()()()の部屋だぞ、好きにくつろいでくれ!」


「ちぃちゃんすごいよベッドが!ふかふかだよふかふか!」


 そう言ってダンテはウィンクをしながらニカッと笑い、グッと親指を立ててサムズアップを決める。千歳は唖然としているが、紗奈ははしゃいだ様子でベッドに寝転がっている。


 部屋に荷物を置いたあと千歳と紗奈はリビングでエヴァンス夫妻とディナーを共にした、長旅の疲れもあり千歳と紗奈は食後に入浴した後すぐ眠りについた。


─────

───


 翌朝、千歳は目を覚ますと天井がいつもの自分の部屋のものでは無いことに一瞬戸惑うがダンテの家に泊まっているのだとすぐに気が付く、時計を見るとだいぶ早い時間に目が覚めてしまったと千歳は再び眠ろうとするが気分が落ち着かない。


「ん、ん〜・・・スゥーッ・・・」


 すぐ隣のベッドでは紗奈が寝息を立てて眠っている。千歳はゆっくりと、紗奈を起こさぬように慎重に紗奈の寝ているベッドの方を見る。横顔しか見えないが、紗奈が安らかな寝顔で眠っているのがわかる。千歳は目を閉じて深呼吸をして身体の力を抜き、紗奈の寝息に耳を傾けていると段々と意識が暗闇へと溶けていった。



『───ぃちゃん、ちぃちゃん。』


 暗い意識の中、声が聞こえ千歳の意識が目を覚ます。(まぶた)を開くと紗奈の優しい笑顔が映り千歳の心臓がドクンッ!と跳ねる。


「あ、起きましたねちぃちゃん、おはよう。朝ごはんだよ?」


「・・・おはよう、紗奈ちゃん。」


 千歳は紗奈と朝の挨拶を交しながら起き上がると部屋の窓から外の景色を眺める、日本とはまったく違う景色に千歳は自分がアメリカにやってきたのだとあらためて実感する。そして1階からベアトリーチェの声が聞こえ、千歳と紗奈は部屋を出てリビングへと向かう。


─────

───


「2人とも、朝食が終わったら出掛けるから着替えて支度しておいてくれ。」



 朝食を食べ終わり言われた通りに準備を済ませた千歳と紗奈はダンテに呼ばれ、彼の運転する車に乗り込む。助手席にはベアトリーチェも乗っている。


 数時間ほどしてダンテの運転する車が止まると、そこは巨木が立ち並ぶ森の入り口だった。


「さぁ二人とも、アメリカに来たら観光だ!ここは世界遺産のトリックスター国立公園さ!」


 車から降りた千歳と紗奈にダンテが自慢げに話す、二人は目の前に広がる日本では見られない豊かな大自然に圧倒された。


 そして千歳はある事に気付く。


(龍脈の修行って・・・いつやるんだ?)

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