Departure
後日、ダンテが長門家を訪れてきた。その日は千歳の父親である信玄もいたので、ダンテが千歳の両親と話をしていた。
「お兄ちゃん、エヴァンスさんお兄ちゃんにすごい親しげだったけどいつの間に知り合ったの?」
「えーと、春休みの時に紗奈ちゃんと映画観に行った時にね。」
キャプテン・ドラゴン役の俳優として人気を博しているダンテの来訪に長門家は騒然となり、応接間で両親がダンテと話しているあいだ千歳に双子姉妹が詰め寄っていた。
「おにぃ!私サイン欲しい!」
「多分喜んでしてくれると思うから後で頼んでみるよ。」
そんな事を千歳が言ってると双子姉妹の背後にダンテがスッと現れ、サインを描く時用のマジックペンを片手でクルクルと回している。
「Exactly!サインでよければいくらでも。何枚欲しいんだい?」
「「ひゃッ!?」」
二人は驚きのあまり悲鳴をあげてお互いに抱きつく、千歳とダンテはその様子を微笑ましく見ていた。
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あのあと千歳の家族全員にサインを描き、ダンテは長門家を後にした。ダンテが戦いの際に使用している龍脈というエネルギー、それを千歳に習得させるための修行をアメリカでするため千歳の家族に了承を得に来たのだ。
千歳は両親に自分たちが星霊と戦うことを話しておらず、『日本で仲良くなった千歳をアメリカにある自宅に招待した。』ということでなんとか了承を得られた。
そしてダンテが次に向かったのは長門家のすぐ横に並び立つ椎名家である、千歳も一緒だ。ダンテが紗奈に用があるというので千歳が案内人としてついてきたのだ、千歳は椎名家のインターホンのボタンを押すと玄関の扉の鍵がガチャッと開く音が鳴り扉が開く。
「おや、ちぃちゃんじゃないですか。どうしたの?インターホンなんか鳴らしちゃって・・・」
扉を開けた紗奈は門の外の千歳の姿にすぐ気付いた。そして千歳の隣にいる人物の顔を見た瞬間、表情も動きも一瞬固まるとすぐさま扉をバタンと閉め紗奈の姿は椎名家の中へと戻っていく。そして家の中から紗奈が慌ただしく動いてるのが想像できる音と、時おり悲鳴も聞こえ、ダンテはなんだか申し訳ない気持ちになった。
「お、お邪魔してしまったかな・・・?」
「・・・いや、大丈夫ですよ。」
そして再び家の扉が開き紗奈が顔を出す、相当慌てていたのか息を切らしている。
「エヴァンスさん、いらっしゃいませ。ごめんなさい、さっきまで夏休みの課題やってたもので部屋着で・・・」
「Don't worry!大丈夫さ、こちらも突然訪れてしまったからね。」
紗奈の緊張を解こうとダンテは気楽に話し、千歳の肩に手をポンと乗せる。
「実は今日、Ms.椎名にお願いがあってね。明日から千歳をアメリカに連れていくのだが、君も一緒に来てくれないだろうか?」
「え?」
「ひゃッ!?」
ダンテの突然の言葉に紗奈はもちろんのこと、千歳も驚きのあまり声を上げた。
「い、いいんですか・・・?えと、はい。喜んで・・・」
「Good!ご両親はいらっしゃるかな?ご家族の了承を得なければね。」
そう言って千歳とダンテは紗奈に招かれ椎名家の中に入り1階のリビングでダンテと紗奈の両親が話をしている間、千歳と紗奈は2階にある紗奈の部屋で話が終わるのを待っていた。
「ほわぁ・・・まだ実感が無いや、ダンテさんがウチに来てくれただけでもすごいことなのに。まさかアメリカの自宅に招待してもらえるなんて・・・」
「え、うん・・・そうだね。」
紗奈はベッドに座り夢見心地な表情で両脚をブラブラと揺らしていた、その隣で千歳はまさか紗奈も一緒だとは思ってもおらず突然のことに混乱していた。
ノックの音が鳴り紗奈の部屋のドアを開けたダンテは千歳と紗奈の二人の前で右手の拳を握り親指を立てる所謂サムズアップのハンドジェスチャーをして、紗奈が千歳やダンテとアメリカに行くことを紗奈の両親から了承を得たことを示す。
そして翌朝、ダンテと千歳、紗奈の3人は地元の近くの結月大社にてご参拝をした後、空港でアメリカ行きの飛行機に搭乗し日本から旅立った。




