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Starlog ー星の記憶ー  作者: 八城主水
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Approach

「喉乾いたし疲れたからこの1球でラストな!」


 そう言うと千悟はボールをやや前方に高く投げジャンプサーブを打つ。千晶がレシーブするが体勢を崩し、千晶にトスを上げるつもりだった千歳は戸惑ってしまう。


「千歳!打てっ!」


「っ!」


 千晶の声に反応し千歳は腕を振り上げながらジャンプし、打ち上げられたボールに向かって腕を振り下ろす。千歳の放ったスパイクは千尋と千悟のチームのコート後方の角に叩き込まれ、その一発に千尋と千悟はもちろんのこと決まると思っていなかった千歳も唖然とする。


「やったな千歳、いい所見せれたじゃないか。」


「え?」


 コートの外を見ると紗奈が千歳に向かって満面の笑みで拍手をしている、それに応えるように千歳も照れ笑いを浮かべながら手を振る。



 バレーボールが終わると千歳は紗奈に腕を引っ張られフードコートのアイスクリームの店へと連れてこられていた。


「ちぃちゃん、さっきのスパイクかっこよかったよ。」


「え、あぁ・・・ありがとう。」


 そして二人ともベンチに横に並び一緒にアイスクリームを食べていた、千歳は心無しか紗奈との距離が近いような気がしていた。


「打った瞬間の手応えはどうでしたか?」


 そう言いながら紗奈が隣の千歳にすり寄り自分の持っているアイスクリームをマイクのように千歳の顔に近づける、そして『食べていいですよ』と小声で囁く。千歳はさすがに照れくさくなり周りに誰もいないことを確認すると紗奈のアイスクリームを小さく一口食べる。


「え、いやまぁ・・・決まるなんて思わなかったね。」


「ほほうなるほど。」


 そして何事もなかったかのように紗奈は自分のアイスクリームを食べ進める、千歳は内心どぎまぎしている。


(おぉ、ちぃちゃんが照れている、若葉ちゃんの言っていた通りですな・・・)


 そんな千歳の様子を紗奈は内心ニヤニヤしながら見ていた、お昼の時に紗奈は若葉から千歳にアプローチするコツを聞いていたのだ。


─────

───


「私が思うに、二人とも奥手なんです。」


「う、そ、そうかも・・・」


 千歳が若葉の昼食を買いに離れてる間に意気投合した二人、若葉は紗奈に千歳との恋愛についてアドバイスをしていた。


「椎名先輩、兄さんは『押せば行けます』。積極的にアプローチしちゃいましょう。」


「あ、アプローチ?自信無いなぁ・・・」


 言葉通り自信なさげな紗奈に若葉はニヤリと笑みを見せる。



「なにを言ってるんですか、椎名先輩には立派な武器があるじゃないですか。」


「ぶ、武器?」


 紗奈は若葉の言葉の真意がわからず首を傾げる、若葉はそーっと紗奈の胸元を指差し小声で話す。


「椎名先輩には立派な()()があるじゃないですか、それで迫られてドキドキしない男の子はいませんよ?」


「へ・・・?はっ!えぇ!?」


 若葉の言葉を理解した紗奈は思わず自分の胸を両腕で隠しながら声をあげる、その様子を見て若葉は相変わらずニヤニヤと笑っている。


「今日だって皆さんがいますからいつも通りみたいな感じですけど、二人きりの状況で椎名先輩の肉体美で迫れば兄さんはもう一撃ですよ。」


「へぇ・・・そ、そうなのかな。」


 今までそこまで積極的なアプローチをした記憶がない紗奈にはとてもハードルが高く感じてしまう、すると若葉が身を乗り出し指先で紗奈の胸元を優しく触れる。


「大丈夫ですよ、結局大事なのは恋心(ハート)です。椎名先輩なら大丈夫。」


 若葉の言葉に紗奈は不思議と安心感を覚える、とても後輩とは思えない言葉の説得力と声の優しさに。


「・・・ち、ちょと、頑張ってみる。」


 紗奈が頬を赤らめながら言うと紗奈は『うんうん』と満足気な笑みで頷く。


「あ、あとね橘さん。橘さんのこと・・・

()()()()()って呼んでもいいかな?」


「もちのろんです!私も椎名先輩のこと()()()()って呼びますね!」



 若葉の返事に少々違和感を覚えた紗奈はすぐにその正体がわかった。


「いえ、若葉ちゃん。私のことは()()()とお呼びなさい、もしくは()()()ってね。」


「お、お姉様!?」


 冗談めいた紗奈の言葉に若葉はクスッと笑ってしまい、それにつられて紗奈も嬉しそうに笑いを浮かべる。千歳が戻ってきたのはこのやりとりの少しあとである。

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