Same town
昼食を終えた千歳たちは再びプールで遊んでいた。
双子姉妹と若葉はウォータースライダーへ、紅葉がすごく怖がっていたが青葉と若葉が半ば強引に連れていった。
ビーチエリアでは千歳&千晶VS千尋&千悟のビーチバレー対決が繰り広げられていた。その傍らで紗奈と澪が観戦している。千晶と千尋がスパイクの打ち合いをしているのだが双方ともにテレビで観るプロが打つようなかなり強い球威で打ち合っている。
「やるな千尋、俺のスパイクをこんなに拾うやつなんて西にもいないぞ。」
「そりゃお互い様だ、千晶。」
あまりに実力が拮抗しており2人とも魔力を使いだしそうな雰囲気だ、しかしそれほどにこの4人で遊べるという状況を喜んでいるということである。
そして千尋が楽しそうに笑っているのを美琴は少し離れた場所から嬉しそうに見つめていた、そんな美琴のもとへ歩み寄り声をかける人影がひとつ。
「お隣、よろしいですか?」
美琴が声の方を向くとそこには桐江が両手に飲み物が入ったグラスを持って立っていた、美琴は嬉しそうに微笑みを浮かべる。
「あぁ、もちろん。」
「ありがとうございます、では失礼して・・・。」
そう言って桐江は美琴が座っているデッキチェアの前のテーブルに飲み物を置き、向かい側のデッキチェアに座る。
「有間くんとは仲良くやっているみたいですね。」
「・・・それ、どういう意味?」
しばらく沈黙したのち桐江が口を開く、美琴は言葉の意図がわからず桐江に問いかける。
「貴女、中学を卒業したあと有間の御屋敷に行くときすごい思いつめた表情をなさっていたものですから。」
「え、そんな顔してた?」
『してた。』と答えるように桐江は頷く。
「有間のご隠居は厳しい方ですから。プレッシャーを感じるのも無理はないと思っていましたが、どちらかと言うと貴女は千尋さんとの間になにかわだかまりがあったようなので。」
桐江の言葉に美琴は俯き、当時を思い出したのか少し照れ笑いを浮かべている。
「たしかにあの時は不安でいっぱいだったが、今はもう大丈夫だ。」
「・・・そうですか、それはなによりです。」
そう言いながら桐江がグラスのスポーツドリンクを一口飲むと、美琴が何かに気づいたように『あっ』と小さく声を上げる。
「そういえば桐江、なんで私に敬語なんだ?」
「・・・一応主人の前ですので。というか今更ですか?」
桐江がそう言うと美琴は少し寂しそうな表情で頬を膨らませる。
「いいじゃないか私達の仲なんだし、それに千晶くんには私から言っとくから。」
「・・・はぁ、まぁそこまで言うなら。」
少し躊躇ったあと美琴の表情を見た桐江はため息をひとつつく。
「ていうかあんたそないに甘え上手みたいなキャラやったっけ?」
「おぉ!懐かしい、いつもの桐江だ!」
美琴が嬉しそうに小さく拍手している、桐江は思わず呆れたようにため息をもうひとつつく。
「いや今日はもうずっとこの調子でいくんや思うとったわ。あんたもうちを苗字で呼んでるし。」
「ははは、まぁ一応私も旦那の前だからな。しかし考えてみれば今日は休日、それに千尋は友人たちと遊んでてこちらのことは気にしてないさと思ってな。」
桐江が千晶たちの方を見るとちょうど千晶がスパイクを決めたようで千歳とハイタッチをしている。
「・・・たしかに、そう言うた意味ではあっちも気ぃつかってくれてるのかもわからへんね。」
「そうそう、だから私達は私達で昔を懐かしもうじゃないか。まみみ」
美琴と桐江 真美のこの二人、実は西で小学校と中学校が同じでなおかつ幼なじみという超仲良しだったのだ。ちなみに『まみみ』というのは美琴が桐江を呼ぶ時のあだ名である。
「なんかだんだん西の調子に戻ってきてへん?旦那さんに見られたら幻滅されるで?みこちゃん」
桐江の言葉に美琴は『ふふん』と自信ありげに笑みを浮かべる。『みこちゃん』は桐江が美琴を呼ぶ時のあだ名である。
「大丈夫さ、私は千尋に愛されているから。」
「あーはいはいごちそうさま、おなかいっぱいです。」
桐江は思わず呆れたようにため息をつく。これから調子を取り戻した美琴と桐江はお互いの中学卒業から今まであったことを語り合っていた。




