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Starlog ー星の記憶ー  作者: 八城主水
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Sandstorm

 男の攻撃は激しさはあれど千尋の本気に比べるとスピードもパワーも劣っていた。千歳は霊写しの眼で攻撃を見切り反撃するが、千歳の攻撃が当たる直前に纏っている影が解けてしまう。


「なんだその腑抜けた攻撃は!?」


 男は憤慨しながら蹴りを繰り出す、千歳は影を鎧のように纏おうとするが間に合わず蹴り飛ばされ、数メートル吹っ飛び倒れ込む。


 千尋との戦いの後から千歳は影を纏っていると誰かに小さな声で語りかけられているような感覚を覚えるようになっていた。その声は影を纏って戦っている時にははっきりと聞こえ、睡魔に襲われた時のように意識が遠のいていくため影を解いてしまう。


「朧さん!ほんとにコイツあの有間千尋と引き分けたんスか?全然弱いっスけど。」


「・・・そのはずだ。」


 男の実力は千尋よりもだいぶ劣っている、それが千歳を圧倒しているのだから朧は不思議に思っていた。


「さて、じゃあそろそろ気ぃ失ってもらうか。」


 男はそう言いながら倒れている千歳の前に立つ。千歳は膝に手をつき息を切らしながら立ち上がり影を纏おうとするがやはりあの声が聞こえ、すぐに解いてしまう。


 千歳が紗奈の方を見ると、紗奈はわなわなとした様子で涙目になっていた。千歳は紗奈の不安を拭おうと『大丈夫』と心の中で思いながら精一杯の笑みをつくるが、それが更に男の怒りを買ってしまう。


「なに戦いの最中にヘラヘラ笑ってやがんだ!」


 男が怒号と共に千歳に向かって禍々しい影を纏った拳を突き出す。が、その拳は千歳と男の間に突如として現れた岩の壁によって阻まれる。


 男は朧が千歳を守ろうと妨害したのかと思い、朧の方を見るが朧は何もしていない。それどころか朧でさえ岩の壁に驚いていた。


「じゃあ誰が・・・。」


 男がそう言うとこれまた突然に砂嵐が巻き起こり、強い風に乗った辺りの砂が男の顔面や全身に叩きつけられる。男はたまらず千歳の前から離れる。


 千歳は霊写しの眼で視て理解していた。岩の壁は当然として今の砂嵐、これらは自然現象ではなく魔力を行使した物だと。しかし誰が?


莫迦(ばか)が、誰に断りを得て俺の親友に手を上げている?」


 千歳は声が聞こえた背後の方にバッと振り向く、するとそこには千歳と同じ年くらいの少年が悠々とこちらに歩み寄っていた。


「誰だテメェは?長門千歳の仲間か?」



 男の問に少年は『ふっ』と鼻で笑う。



「そんな他人行儀なものじゃないさ、俺はこの長門千歳の親友。助力するには十分過ぎる理由だ。そうだろう桐江?」


「おっしゃる通りでございます、坊っちゃん。」


 少年の言葉に少年の後ろに立つメイド服に身を包んだ女性が返事をする。思わぬ加勢に千歳は気が抜けてその場に座り込んでしまい、少年はそんな千歳を優しい眼差しで見下ろす。


御前(おまえ)は休んでいるといいさ、千歳。」


 少年がにこやかに千歳に声をかける、千歳はその笑顔と声に懐かしさを感じた。


「御前、まさか・・・」


「ん、まぁ待て、まずはこの状況をどうにかしてからだ。だが安心しろ、御前も椎名さんも傷ひとつつけずに助けてやるからな。」


 少年はそう言いながら魔力で創った杖をクルクルと回しながら男の前に立つ。その表情は余裕そのもの、それでいてどこか嬉しそうな笑顔であった。

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