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Starlog ー星の記憶ー  作者: 八城主水
30/155

If

 暗い意識の中、目覚まし時計の音が聞こえる。千歳は気だるげに目を開けると目覚まし時計のスイッチを押し音を止め、起き上がろうとするが昨日の戦いで無理をした身体が筋肉痛で悲鳴をあげる。


 その全身の痛みに少し(くじ)けた千歳はちょっとだけボーッとしたら起きようと再び目を閉じる。(かい)目論(もくろ)みにより起きた鬼恐山(おにおそれやま)での一件、それを解決するために動きっぱなしだった1日があっという間に過ぎ今日は月曜日、学校の日だったのだ。


 千歳は『よっこらせ』と勢いを付けて身体を起こし制服に着替えると、部屋から出て居間に向かう。双子姉妹は日直があると言って少し早めに朝食を摂って既に家を出たらしい、千歳が朝の挨拶をしながら椅子に座ると母親が千歳の前にアイスコーヒーが注がれたコップを置く。千歳が母親に礼を言いながらミルクとシロップをアイスコーヒーに入れてかき混ぜて一口飲むとトーストを頬張る、口の中のトーストを咀嚼しながら昨日の千尋と交わした会話を思い出していた。


─────

───


「世話になったな、千歳。」


 そう言いながら千尋は千歳に深々と頭を下げる、千歳はそれを見るに耐えずすぐ千尋に頭を上げさせる。


「気にするなよ、最後には帰ってきたことだし一件落着だ。」


 これは慰めでもなんでもなく千歳の本心である、どちらかと言えば千尋と美琴は魁の思惑に巻き込まれたとも取れるし最後に千尋は戻ってきた。千歳に千尋を責めるつもりなど微塵もなかった。


「それにさ、俺もお前に対して『間違ってた』とか強く言えなかったりするんだ。」


その言葉に千尋は『どういうことだ?』と問う。千歳は『んー』と声を上げながら少し考え、千尋に自分の思いを話した。それを聞いた千尋はただ『ありがとう』と一言だけつぶやき、それ以上は何も言わなかった。


─────

───


 千歳が玄関から出て扉の鍵を閉めると、家の門の前では紗奈が笑顔で千歳を待っていた。千歳もまた笑顔で紗奈のもとへと駆け寄り、2人で並んで通学路を歩いて行った。



『───俺が千尋の立場で、もし紗奈ちゃんが人質にされたら俺も千尋と同じ選択をしただろう。紗奈ちゃんを守れるなら、紗奈ちゃんを守るためならってきっと俺も鬼の道を選んでたと思う、だから気にするな。もしかしたら、()()()()()()()()()()んだ。』



─────

───


 鬼恐山での一件から2ヶ月が経った。この間に生徒総会が行われ生徒会長は美琴、副会長が千尋となった。二人の間でお互いへの接し方が変わったようで以前のような堅苦しい様子や態度が見受けられなくなっていた。


 期末試験もまあまあな成績で乗り切り、何事もなく千歳たちは夏休みへと突入していた。


「あっづ・・・」


 先程まで外へ買い物に行っており帰ってきてすぐ冷房をつけた居間で千歳はソファーに座り込み、アイスを食べながら外で取り込んだ身体の熱を冷ましていた。アイスと冷房の相乗効果で段々と涼み、心地よくボーッとしてきた千歳だったが机に置いてある携帯から着信音が鳴り響く。


 千歳が携帯を手に取り画面を見ると『紗奈ちゃん』の文字が目に飛び込み、慌ててアイスを机の上に置き画面の応答ボタンを押す。


「もしもし?」


『あ、ちぃちゃ〜ん?今って大丈夫?』


 『大丈夫大丈夫』と気軽な感じで返事すると紗奈が安堵の声を上げる。


『あのね、あと少しでお昼になるじゃない?お昼ご飯一緒にどうかなー?って。』


 双子姉妹と両親は外出しており家には千歳1人、昼食を考えていた千歳にとてもナイスタイミングなお誘い。しかも紗奈から、千歳の心は跳ね踊っていた。


「もちろんいいよー、昼どうしようか悩んでたんだ。」


『よかった〜。じゃあ準備できたらそっち行くから、待っててね。』


 紗奈との通話が終わると千歳は先程まで汗をかいていた自分の身体を浴室で洗い流し、身なりを整えた。

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