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Starlog ー星の記憶ー  作者: 八城主水
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Hello High school

ピピピピ…ピピピピ…ピピピピ…


 部屋に鳴り響くアラームを止めて目を覚ました千歳はひとつ伸びをして起き上がり、制服に着替えたあと部屋を出ると下の階から楽しそうな声が二階にまで聞こえてくる。


 そして1階のリビングでは双子姉妹が母親と父親に制服姿を披露しており、千歳の姿を見つけた双子姉妹は揃ってニコニコ笑いながら兄の前に立つ。


「おはようおにぃ!どう?制服、似合う!?」


「お兄ちゃんおはよう、おかしくないかな?」


 二人ともくるりと一回転したりして千歳に感想を求める。


「おはよう、二人とも似合ってるよ」


 千歳の感想を聞いた双子姉妹は満足気な笑みを浮かべながら喜んだ。母親がコーヒーの淹れられたマグカップをテーブルの上に置き、千歳はお礼を言いながら椅子に座ってコーヒーを啜ると向かいに座る父親が感慨深そうに制服姿の双子姉妹を見つめていた。


「時が経つのは早いなあ、2人ともこの前まで中学生だったのに。これだと千歳もあっという間に酒を飲める歳になるなぁ」


 千歳と双子姉妹の父親である長門(ながと) 玄信(はるのぶ) はコーヒーを飲みながらしみじみと話す、公務員に勤めており地方への出張が多いため家に帰って来れない日も少なくはない。母親との夫婦仲は大変良く、喧嘩をしてるところをあまり見たことがない。千歳や双子姉妹のことも大変大事に思っており、親子仲も良好。この日も普段父親は仕事なのだが双子姉妹の入学式ということで休みを取ったらしい。


 母親と父親は学生時代に同じ高校で父親が一目惚れして付き合いはじめ、そのまま結婚に至ったらしい。夫婦ともに同じ配属の公務員だったらしいが母親は妊娠を機に現場に出なくなったらしく家でも仕事の話をしないが、居間でパソコンを使って難しい資料を作ってるところを見た事があるのでやめたわけではないようだ。


─────

───


 家の門の前で玄信がカメラで双子姉妹の写真を撮っている、その様子を後ろで千歳が見ていると隣の家から紗奈が制服姿で出てくる。千歳が紗奈の姿を見つけヒラヒラと手を振ると、紗奈もニコニコ微笑みながら千歳の隣に歩み寄る。写真を撮られていた双子姉妹が紗奈に気づくと一緒に写真を撮ろうと手招きし、紗奈は喜んで双子姉妹の間に立ち姉妹二人に両側から腕を組まれながら写真を撮る。


 千歳の幼馴染みである紗奈は双子姉妹とも仲が良く、双子姉妹の『すり替わり』のいたずらを見破ったこともあって懐かれている。千歳がどうやって見分けたか聞いても紗奈は『なんとなく』の一言で終わる。


 最後は千歳も加わり、4人で写真を撮ると千歳と紗奈の二人は登校のため長門家をあとにした。双子姉妹は新入生のため少し遅れての登校になり、玄信が運転する車で登校する。


─────

───


 新学年最初の一大イベントと言っても過言ではない『クラス分け』、各クラスの名簿が千歳の学年である2年生の下駄箱前の廊下の壁に貼りだされている。そのクラスで2年過ごすため、名簿を見たものの反応は様々である。


 仲の良い友人と同じクラスになり喜ぶ者、好きな生徒と同じクラスになれず落胆する者それとは逆の者も、喜んだかと思えば担任の名前を見て少しテンションを落とす者。それらを見ていて千歳も僅かばかりに胃がキリキリと痛むような感覚を覚え、緊張しながらクラスの名簿をみる。


 『椎名 紗奈』の名前を見つけ、同じクラスに自分の名前がないか探していると・・・






 あった。


 千歳は安堵の溜め息をつく。


 紗奈も自分と同じクラスに千歳の名前を見つけると嬉しそうに千歳の肩を軽くペシペシと叩く、そのあと紗奈は友人の女子に連れられ一足先に教室に歩いていった。


 1人でクラス名簿の前に佇む千歳のところに1人の男子生徒が近づき、声をかけてくる。


「よ、千歳。俺ら同じクラスだから2年間よろしくな」


 この男子生徒の名前は狭間(はざま) 千悟(ちさと)、千歳の幼馴染みであり親友で、高い身長にノリのいい性格、くわえてイケメンであるため男女から人気があるクラスのムードメーカーのような存在。


「あー千悟もか、千尋は?」


「なんと千尋も同じクラスなんだな、気楽なクラスでよかったぜほんと」


 2人が言う『千尋』とはもう1人の千歳の幼馴染みで親友、前年度はこの学校の生徒会の会計を務めていた。


「でも千尋が同じクラスってことは、制服の着崩しも出来なくなるな?」


「着崩し言うな、オシャレだオシャレ」


 それからしばらく千歳と談笑していた千悟が突然、名簿を見詰めながら真面目な表情をし始める。


「そしてな千歳、お前らがいるってこと以外で俺に好都合なクラスになってるんだ」


「あー、前から言ってた気になる女子?結局誰なの、名前すら聞いてないんだけど」


 千歳から聞かれると千悟は『ふふっ』といたずらっぽく笑う。


「まあ帰りのホームルームになればわかるさ、多分な」


 千悟にそう言われ頭に疑問符を浮かべる千歳、なにか手がかりはないかともう一度クラス名簿の名前を一通り見るが千悟の場合、人気者なので心当たりが多すぎる。


─────

───


 教室に着いた千歳が自分の席に座ってボーッとしていると、千悟とは別の男子生徒が声をかけてくる。


「千歳、同じクラスになったな。双子ちゃん達も入学おめでとう」


 男子生徒の名前は有間(ありま) 千尋(ちひろ)、千歳の幼馴染みであり親友。学業優秀で運動神経もよく生活態度も良好の超優等生。今年度生徒会の生徒会長になってもおかしくないと言われているが、本人は副会長に立候補するつもりのようだ。


「双子ちゃん達がもう高校生か、しかも同じ高校の後輩。なんかダチの妹が後輩になるとか、先輩になった感増すよなぁ・・・」


 千尋の隣に千悟が立ち、会話に加わる。千尋は千悟の制服の着崩し様を見て少し呆れた表情をする。


「先輩になった感が増すならもう少し制服をキチンと着たらどうだ?もうそろそろ生活指導の担当の教師に目ぇ付けられるぞ」


 千尋にそう言われ、千悟は少したじろぐ。千悟ですら苦笑いを浮かべるほど生活指導の担当は怖いようだ。


「ま、まあオシャレだってオシャレ」


「オシャレにしてはネクタイが緩んでいるな、締め直してやろうか?」


 千尋から脅し気味に言われ、千悟は口笛を吹きながらネクタイを締め直す。そしてチャイムが鳴りクラスの担任が教室に入り教壇に着く。そして一通りの挨拶を済ませると生徒達は入学式の式場である体育館に向かう。

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