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Starlog ー星の記憶ー  作者: 八城主水
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Ogre

『はぁー・・・めんどくせぇ・・・』


 魁の口から発せられた声を聞いて、千歳たちは耳を疑った。声の響き方があまりに非人間的、まさしく異形のようだったからだ。


『この眼鏡も、邪魔だったがもう外すとしましょう。あとはこのような堅苦しい装いも・・・』


 そう言いながら魁はキッチリと締めたネクタイを外し、ジャケットも脱ぐと地面に放り投げる。


『そして、この喋り方もめんどうだ。すまないが普段の口調に戻させてもらうよ、下等生物共。』


 言い終えると魁は千歳と同様に黒い影を体に纏い、千歳と千尋を睨む。



 『なんとかなる。』そう思っていた千歳と千尋の希望を崩すには十分な存在感と威圧感、魁の放つ赤い眼光に睨まれた二人は思わずたじろいでしまう。


 そこへ後ろから一人の人物が歩み寄り、千歳と千尋の肩に手を置く。


「千尋、千歳くん。よく頑張ってくれた、あとは僕に任せて二人は下がりなさい。」


 二人がバッと後ろを向くと、そこには千尋の父親である有間(ありま) 道雪(どうせつ)が立っていた。物怖じする様子もなく、道雪は禍々しい雰囲気を放つ魁を真っ直ぐに見つめる。


「父さん!?そんな、父さんにあんなの相手できるわけが・・・」


「いいから、下がっていなさい。僕もね、彼を一発殴らないと気が済まないんだ。」


 千尋は意外そうな表情を浮かべる、普段穏やかで戦いとは無縁だと思っていた父親が自ら戦いを望み、なおかつ千尋が見とこともない雰囲気を放っていたことに。


「おやおや、有間のご隠居が来るかと思えば・・・戦いが大嫌いな現当主様じゃないか。まさか、君が私の相手をすると?」


「その通りだ。今言ったように、僕はあなたを一発殴りたい気分なんだ。」


 表情には出さずとも怒りの念に駆られている道雪、それに対し魁は侮蔑の笑みを浮かべる。



「戦う前にひとつ聞く、あなたは異形なのか?魁さん。」


 道雪の問いに眉をピクっと動かしながら魁は『ふん』と鼻で笑う。


『異形だと?私をあのような野蛮なだけの下衆共と一緒にしないでもらいたいね。まぁだからといって、君たち人間のような脆弱な者共と一緒にされても困るのだが。』


「異形でもなく、人間でもない・・・」


 少し考えた道雪は魁の正体に見当がついたのか、千尋と同じように拳を構え雷を身体に纏う。


「アンタは・・・『鬼』だったのか。」


『今頃気付いたかバカめ。そんなだから息子を利用され・・・っ!?』


 言葉を言い終える前に魁の眼前に道雪の拳が光速で迫り、魁はこれを間一髪で避ける。が、魁の表情からは侮蔑の笑みは消え、焦りが出始めている。


 そして魁は思い出す。万歳のような威圧感がなくとも、千尋のような天賦の才能がなくとも、自分が相手をしているのはあの有間家の現当主だということを。


「鬼だというのなら、容赦はしない。ましてや息子とその息子が愛する女性、この二人の愛情を利用するものならば、僕はお前を許しはしない!」


 そう言いながら道雪は建御雷を顕現させ、『久しぶりだな』と声をかけるとすぐに建御雷の雷を身体に纏わせる。千尋が千歳との戦闘中に見せた神性体質の能力だ。


「千尋、よう見ておれ。あやつの戦いを、当主としての戦いを。」


 呆気に取られる千尋に万歳が声をかける、千尋は『はい』と返事をしてただ父親の背中を見守る。

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