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Starlog ー星の記憶ー  作者: 八城主水
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有間と長門 Ⅵ

 ふと、意識が目を覚ますとそこはなにもない真っ白な空間だった。千歳は焦燥感に駆られる、この光景を見ているということは自分が夢を見てしまっているということで、つまり現実の世界では無防備に倒れ伏してしまっているのだ。


 千歳はこの夢に必ずいるはずの黒い影を探す、あの影に会えれば現実の自分が目を覚ますと思っていたからだ。


 周りを見渡しても見当たらないので千歳は試しに『おーい』と声をあげて呼びかける、すると後ろからチョンチョンと肩をつつかれ千歳が振り向くとそこには黒い人型の影が立っていた。


「あぁ、よかった。俺いま寝てる場合じゃなくて、すぐに起きたいんだけど・・・」


 千歳がそう言うと黒い影は両手で千歳の両肩を掴みグッと下に降ろす、千歳が腰を落とすとそこにはいつの間にか二人掛け用のソファーが現れていた。


 千歳をソファーに座らせ、黒い影が千歳に背を向けて歩きだし始める。そして千歳が声をかけてもなにも答えることはなく、振り向くこともなくどこかへと消えていく。


─────

───


 遠くから眺めていた千悟にとっても、自分が見ている光景は異様なものだった。倒れている千歳の横に千尋が立ち、唇が動いているのがわかったので何かを話したのだろうとは思う。だが千歳は反応を示さなかった、意識を失っているのは明らかだ。


 だが千尋が建御雷と共に千歳に向かって拳を突き出すと、千歳の身体から黒い影が溢れ出し千尋の、というより建御雷の拳を防いだのだ。


 千歳は黒い影を身に纏い立ち上がっている、そして千悟の見間違いでなければ建御雷の拳を防いだ後、千歳があくびをしているように見えた。



「いったいどういう・・・」



 状況をよく見ようと千悟は一歩前に出る、すると足元から『サクッ』という音が鳴り千悟が下を見ると、夏も近いというのに辺りの地面にに霜柱が出来ていた。千悟の足元から聞こえた音は霜柱を踏んだ音だった、気づけば吐く息も白く、気温も低くなっている。




 黒い影を纏った千歳はまるで寝起きのような気怠い眼差しで千尋を見る、千尋は千歳の纏う雰囲気を不気味に感じ一旦後ろに退り距離をとる。



 そして千歳が千尋に向かって手をかざすと黒い影はブワッと広がり手のかざした方へ、千尋の方へ向かって伸びていく。千尋はそれを横に跳んで躱すが影はそれを追ってくる、千尋はすぐさま脚に魔力を纏わせ地面を蹴り千歳に向かって飛び蹴りを繰り出すと、千尋を追っていた影が瞬時に千歳のもとへ戻りそれを防ぐ。そして千尋の脚に絡みつきそのまま千尋をぶん投げた。


 千尋は着地と共に体勢を整えすぐに建御雷の魔力を身体に取り込む、そして光速で千歳の後ろに回り込み拳を突き出すも千歳の影がそれを防ぐ。


(それなら!)


 千尋は先程と同じように様々な方向に光速で跳び回りながら千歳に打撃を打ち込むも、それらを千歳の影は全て防ぐ。その間、千歳は攻撃された方へ眼をやることはあれどその場から一歩も動いていない。


 千尋は一旦攻撃をやめ、襲ってくる影に対応できる距離をとりつつ千歳の動きを警戒する。



(なにがなんだかわからんが、千歳は木刀が折れて武器を失っている。近接戦ならこちらが有利・・・)



 と、千尋が思っていると千歳が胸の前に右手をかざす、すると影が千歳の右手に集まり棒状へと形を変えていく。そして千歳はその黒い棒に魔力を集め振りかざし、一気に振り下ろすと黒い斬撃が千尋に向かって跳ぶ。



「なっ・・・!?」



 千尋が慌ててそれを避けると斬撃は地面を切り裂き、風切り音を鳴らしながら千尋の横を通り過ぎていき霧散した。


 千尋は先程の千歳が似たようなことをしていたのを思い出す、だがその時は千歳の振り下ろした木刀から斬撃が跳んでくることはなかった。


(雰囲気も戦い方もまるで別人だ、アレは本当に千歳なのか?)

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