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Starlog ー星の記憶ー  作者: 八城主水
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長門と有間 Ⅰ

 有間の屋敷を後にした千尋と美琴は魁の案内で山の頂上付近に建てられた屋敷に連れてこられていた。


「いつの間にこんな屋敷を・・・ここって有間(うち)が管理してる立ち入り禁止の山の中でしょう?」


「えぇ、ですが実際に視察や管理をしていたのは私なのですよ。この屋敷も一応、『観測所』という名目で建てました。」


 いま千尋たちがいる『鬼恐山(おにおそれざん)』は過去に異形などの目撃情報があり、一般人に害が及ばぬように万歳が立ち入りを禁止し、管理している。


「今日はもう日も暮れているので休みましょう、早ければ明日にはまたお父様方がいらっしゃるでしょう。」


 そう言うと魁は屋敷の玄関の引き戸を開け、千尋と美琴を招き入れる。


─────

───


 小さい頃、千尋は有間と長門の話を美琴に聞かせてもらったことがある。


 まだ有間と長門という姓が存在しなかった国、そこに同じ年の同じ日、日蝕が起こった日に二人の子供が産まれた。


 二人には産まれた時から不思議な力があり、『アリマ』と名付けられた子は神々しい光が身体に宿り、『ナガト』と名付けられた子には影を写す眼が宿っていた。


 二人は同じ年ということもあり兄弟のように仲良く過ごしていた、そして国に邪悪な魔物が迫ると二人は自身に宿っていた力と仲間たちでこれを退けていた。


 その後アリマは人間に被害を及ぼす異形や魔物を駆逐することをナガトに提案すると、(いたずら)な殺生を嫌ったナガトがこれを拒否し、始めて二人は対立した。


 自分の考えを曲げることをしなかった二人はついに決闘をすることとなり、その戦いは辺りの地形を変えるほど激しかったという。


 結果、決着はつかず人類のためにお互い協力することを誓い合った二人は和解した。そして二人の力に敬意を表した国の長は二人に姓を与えることとなる、二人はそれぞれ自分の名を姓にし、自身は名を改めたという。


 それから『有間』と『長門』はその国において『双璧』とも呼ばれており、お互いが自分の思想を持ったまま協力し、国に被害を及ぼすものが迫ればそれを撃退していた。


 そして二人は妻を娶り子供も産まれた、二人は子供が大きくなると家督を譲り隠居することとなった。


 しかし二代目で再び有間と長門は対立してしまう、理由は初代の時とまったく同じである。


 人間に被害を及ぼす異形や魔物を駆逐しようとする二代目有間と、生命を殺生することを嫌い不可侵とともに共存しようとした二代目長門。


 二人は後に決闘になりそれはまた激しいものであったという、全力を出し合った二人の決闘が決着することはなく、両家が和解することもなかった。


 そして現在の当主である千尋の父親と千歳の父親の代で再び和解した、それまで有間の長門の両家の人間は対立というより敵対に近い関係だったという。


─────

───


 翌日の早朝、布に包んだ木刀を手に千歳が家の1階に降り居間に入ると、玄信と万尋が立っていた。


「お、千歳・・・行くか?」


「・・・うん、千尋を止めに行くよ。」


 万尋の問いに千歳が答えると玄信はただ千歳の肩をポンと叩き、『行こう』と声を掛ける。


 玄信と万尋、千歳が車に乗ると町から少し離れたところにある鬼恐山を目指して玄信が車を走らせる。千歳は窓から外の風景を眺めながら千尋にかける言葉を考えていたが気の利いた言葉など思いつかず目を閉じたが、玄信が千歳の座っている後ろの座席の窓を開けて千歳の顔に風が当たるようにした。


 驚いた千歳だったがひんやりとした心地よい風に吹かれ、千歳は頭がスッキリした。そして気の利いた言葉など思いつかずとも、いつも通り親友として千尋に会おうとあらためて決心した。

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