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リトライ・ヒーローズ!  作者: ブロッコリー
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16/19

ボーン・ディス・ウェイ/レッツゴー!陰陽師

「ふははははは笑止笑止!(あやかし)の攻めなど、児戯に等しいわい!こっちには、半万年練り上げた対妖武術の錐『太極拳』があるんだ!加えて鬼人!貴様はこの『ポータブル術式装置マーク2』の影響で力が落ちている!」


タロウの連撃を難なく捌き、彼を地面に組み伏せて十三代目安倍晴明(アベノサーティーン)は高笑いした。


タロウは腰を捻って隙間を作ると、マウント・ポジションから脱出し、後退りして距離を取る。


クソ!頭が痛い!手足の力が抜ける!


「貴様…見たことないタイプだが、『鬼狩り』か…!?」


タロウは態勢を立て直しつつ問いかける。


アベノサーティーンは「フハッ!」と笑って答えた。


「と、言うよりも、『祈祷師兼、呪術研究家兼、科学者兼、天気予報士兼、古武術家兼、妖退治の専門家』って感じだな!鬼退治は片手間の片手間よ!」


タロウは額に冷や汗をかきながらも、「そーかい」と挑発的に笑ってみせた。


「じゃあ本業の鬼って奴を見せてやるよ!」


タロウは獣の様な唸り声をあげ、紫炎に身を包むと、おぞましい『鬼人態』へと変身した。


アベノサーティーンはその姿を見て慄くどころか、「にやり」と笑う。


「キツビの鬼か!資料で読んだが実物を見るのは初めてだ!今は『伸縮性外骨格…なんたら』って言うんだっけなあ」


「ほざけ!」


タロウは指先から燃え盛る『骨弾(こつだん)』を連射した。


アベノサーティーンは不敵な笑みを崩さぬまま、懐から素早く札を放ち、全ての骨弾を相殺した。


「属性は五行の『火』!わかりやすくて結構!」


タロウは彼の言う事を半分も理解しないまま、しかし、己の攻撃が看破されている事を悟った。


こういった場合、彼の取る戦法は一つ。


「ならば…」と、彼は全身に力を込めた。


「こいつでどうだあああああああ」


タロウは雄叫びとともに、全身から『骨角(こっかく)』を伸ばし、アベノサーティーンを襲う!


彼の全身全霊、『外法・灼骨針鼠(しゃっこつはりねずみ)』である。


四方八方から襲い来る灼骨(しゃっこつ)に、敵は逃れる術無し!…の、筈だった。


「フハッ!骨のある奴!」


アベノサーティーンはそう言って笑うと、自らの四方を囲う様に、地面に柊の杭を打ち込んだ。


「結界術法!四至牓示(ししぼうじ)!」


そう唱えて塩を撒くと、杭に囲まれた四方に見えない壁が出現し、タロウの攻撃を、触れたそばから全て消滅させた。


「どう言う仕組みだよそりゃあ!?」


タロウは絶対の自信を持っていた己の技を無力化され、大きく動揺した。


「塩ぉ撒いて『二度と来るな!』ってよくやるだろ!?あれだよ!あれ!」


「わかるか!」


タロウは間髪を入れず、両腕に灼骨(しゃっこつ)(とう)を構え、結界へと突進した。


「無駄無駄ぁ!この結界は貴様ら妖には、絶対(ずえったい)に破れないのだ!安倍家13代の厚みを知れぇい!バーカバーカ!」


アベノサーティーンは嘲る様にゲラゲラと笑う。


「うっせえ!」


事実、タロウが何度斬りつけようと、逆に灼骨刀がすり減るばかりだ。


アベノサーティーンは更に懐から札を取り出すと、結界の壁に貼り付けた。


「さらにこの結界、なんと内側からはすり抜ける!解界法(げかいほう)・暖簾に腕押し!」


左手で印を結んだアベノサーティーンの腕が結界をすり抜け、タロウにカウンター・パンチを見舞った!


神籬(ひもろぎ)で出来たメリケンサックだ。鬼にはさぞ痛かろう…」


タロウは吹き飛ばされ、半分意識が飛びそうになりながらも、狙っていた瞬間が訪れた事を確信した。


彼は倒れる瞬間、足払いの要領で結界を結ぶ柊の杭を蹴飛ばしたのだ。


「何ぃ!?」


支柱を失ったことで、結界は効力を無くした!


「ダメ元でやってみるもんだな!喰らえ!」


アベノサーティーンが動揺する隙すら与えず、タロウは跳ね上がる勢いで両足蹴りを放つ!


「ぐえっ!いってえ!」


「よっしゃあ!一発やってやったぜ!」


タロウは敵にダメージが入ったのを確認するや否や、全速力でその場から逃げ出した。


相性の悪い敵と戦い続ける必要はない。一発決めて溜飲を下げれば、後は逃げあるのみ!


「あっおい待て!貴様よくも!」


背後から声だけが追いかけてきたが、タロウは高笑いで受け流した。


幸いなことに、単純な身体能力ならこちらが上らしい。さて、マキナ達はどうしてるかな?



————————



「マ、機械鎧(マシンガイ)!!」


ココロはマキナに駆け寄った。


右腕を失った機械鎧(マシンガイ)は、痛みに呻き声を上げて蹲った。


『shut down』


機械音声が鳴り響き、紺色の鎧が解かれる。


露わになったマキナは口角に泡を溜め、焦点の定まらない目に蒼白な顔色であった。


ココロの胸の内は、恐怖一色に染め上げられていた。


あのマキナさんが…英雄・機械鎧(マシンガイ)が…一瞬で…!怖い!私もすぐに殺される!


ココロは、懇願する様に叫ぶ。


「お願い!もうやめてよユウスケくん!もう満足したでしょ!?これ以上人を傷つけないで!」


ユウスケは氷の様な表情で答えた。


「大丈夫。お姉さんは傷つけないよ。僕は、僕を苦しめた全てを壊すんだ。この世界の暴力を全て壊し、僕と言う最高の暴力で支配してやる」


ココロはその言葉に青ざめた。普段なら荒唐無稽且つ幼稚なコミックのセリフだが、今の彼にはそれを実行するだけの力が備わっていた。


こういう時、私の好きな魔法少女ならどうしただろうか。何も思いつかない。コミックと現実は違うのだ。


膝が震え、涙が溢れた。


「泣いているのかい?お姉さん」


ユウスケがココロの涙をそっと拭った。浅黒く伸びた指が不気味で、彼女は尚更、顔を引攣らせた。


「お姉さんは殺さないって言ってるだろう?信じてもらえないかなあ?じゃあほら、信じたくなるまで『お話』しようか?」


ユウスケがココロを捕らえようとしたその瞬間、突然、彼の肩に大穴が開いた。


「え?」


唖然とするユウスケの視線の先には、安東マキナがいた。


「マキナさん!まだ動いては……ッ!?」


ココロが言葉に詰まったのは、振り向いた先のマキナが、あまりに異常な状態であったからだ。


失った筈の右腕には巨大なリボルバーが出現し、口の端から涎を垂らしながら、「フー!フー!」とおおよそ人間とは思えない声を上げていた。


その様子を見て、ココロは思い至る。


そういえば、マキナさんの腕からは、血の一滴も出ていなかった。


マキナはフラリと立ち上がり、ブツブツと喋った。


「ま…まだ…私は闘え—『システム再起動』—るぞ…お兄ちゃん—『マシンガイ.exe が見つかりません』—の跡を継いで…人々を救けるヒーローに—『デウス・エクス・マキナ.exeを起動しますか?…yes』…待て…待て待て待て今なんて言った?—『10%』—おい、止ま—『30%』—れ!アガッ—『60%…』—ガガガガガガブツッ…『90%…99%…100%』


マキナの声は、次第に冷徹な機械音声へと変わっていった。


静寂とともにマキナの動きは停止し、その場の全員がその異常事態を見守った。


数秒の後、マキナは突然顔を上げた。


覚醒したのだ。その眼に映る全てのものを破壊する、最凶最悪の機怪人『デウス・エクス・マキナ』として。


————————


「あーもしもし、マサトくん?」


陰陽師アベノサーティーンは、懐からスマホを取り出し、雇い主に電話をかけていた。


「いや、ごめんね〜。鬼人、逃しちゃった」


電話の向こうの安東マサトは、低い声で返す。


「ワザとだろう。あなたほどの使い手が、あの程度の鬼を…」


「まーまー、俺も平和主義者なんでねえ、争い事は苦手なんでさあ」


アベノサーティーンの飄々とした態度に、マサトはイライラを募らせる。


「ふざけないでいただきたい…こっちは多額の謝礼金を…」


「それよりも、」と、陰陽師はマサトの言葉を遮る。


「アンタの妹、デウス・エクス・マキナ…目醒めたみたいだぜ」


「なっ…」


「まあ、俺は逃げるけどな。あんなもん人間にはどーしよーもねーやっ。後は若者達に任せるぜ」


そうして彼は、一方的に電話を切ると、その場から姿を消した。


———————


「…ハ、ハハ」


ユウスケは出し抜けに笑い出した。


「ハハハハハハハハ」


「何がおかしいのよ!?」


ココロは恐怖を浮かべながらユウスケに問う。


ユウスケはマキナを指差して言った。


「これが笑わずにいられるか!?機怪人からみんなを護っていた機械鎧(マシンガイ)が、実は機怪人でしたなんて、今時コミックでも見ないベタな展開…ぶべら!」


ユウスケが喋っている間に、マキナは次弾を発射していた。


今度はユウスケの左大腿部に命中し、肉が抉れて骨が露わになった。


ユウスケは苦悶の表情を浮かべ、膝をついた。


「ぅああ!くそ!治れ!さっきまでとはまるで別人だ!無感情に撃ってくる!」


ユウスケが『治れ』と念じれば傷は治る。しかしマキナは、それを見越した上で、回復しきるギリギリのタイミングで発砲を続けた。


「痛い!痛い!やめ…!死ぬ…っ!」


ユウスケは悲痛な悲鳴を上げ続けた。


しかし、痛みと衝撃に耐え続けるうちに、彼は、この地獄に、規則的な休みがある事に気がついた。


6発連射して、数秒。6発連射して、数秒。


これは…恐らくリロード時間…!リボルバーだから装弾数が少ないんだ!


4発…5はっ…うげえ…痛い…6発!!


「今だ!」


ユウスケはその隙をついてマキナに組み付き、リボルバーの右腕を押さえ込んだ。


「右腕を抑えてしまえば、こっちのものだ!」


ユウスケは勝ち誇った。


しかしマキナは、デウス・エクス・マキナは、一切の動揺を見せない。


ユウスケの爪先を勢い良く踏みつけると、痛みで緩んだ腕からするりと抜け出し、彼の溝尾に左肘をめり込ませた!


蹲る彼の顎を蹴り上げ、空中に浮かせると、右腕のリボルバーを3連射し、彼の左腕を以外の四肢を全て破壊した。


地を舐め、這いずり逃げるユウスケに、マキナがゆっくりと近づく。


「や、辞め…来るな!来るな!爆ぜろ!爆ぜろ爆ぜろ爆ぜろぉ!!」


ユウスケは左手を翳し、マキナを何度も爆破する。


しかしマキナはそんな事意にも介さずに、真っ直ぐ彼の方へ歩みを進めた。


「あれ?うそ?おかしいでしょこれ!さっきよりも何倍も強い力で爆破してるんだぞ!!止まれ!止まれってば!本当に殺すぞ!!」


マキナは大勢の一つすら崩さずに直進する。


その内ユウスケは、音も無く迫りくる恐怖と、マキナの放つ純粋な殺意という『圧』に潰されて、その場にへたり込んでしまった。


「クッソおおお死ね死ね死ね死ねしねえ!」


ユウスケは喚き声を上げながら、ありったけの力でマキナを攻撃した。爆煙で自らの視界すら遮るほどに。


しかしその煙が晴れた時には、既にマキナは彼の目の前に立っていた。


「あ…あっ…ごめっ…すいませっ申し訳…許して…あぁ…うあああああああ」


「めり」という鈍い音が響いた。マキナが彼の腹を踏みつけているのだ。


動くことのないように押さえつけ、内臓を圧迫し、呼吸を遮る。


加えてこの行為は、相手の戦意を喪失させるのに充分たる恐怖を与える事を目的としている。


マキナは、完全に威勢を失い身体中からあらゆる汁を垂れ流すのみとなったユウスケに、最後通告のように冷徹な銃口を突きつけた。


「待って!ください!マキナさん!!!」


しかしその銃口に、ココロが縋り付いた。


マキナは冷静に射撃の邪魔になるモノを排除しよう腕を振ったが、ココロは意地でもしがみついた。


「これ以上やったら死んでしまいます!もう充分懲らしめたでしょ!!後は!私がやりますからぁ!」


ココロは噛り付いてまでマキナを離さなかった。


「…」


マキナは無感情な蹴りで、無理矢理にココロを引き剥がす。


「マキナさんは、ヒーローでしょう!!ヒーローの仕事は!困ってる人を救ける事でしょう!」


しかしココロは、それならばと言わんばかりに、今度はユウスケの方にへばりついた。


「この子は、私が救います」


対するマキナは、効率的な殺戮の事しか考えない。2人まとめて『処理』しようと、その胴へ銃口を向ける。


虚ろな目で破壊対象を見つめるマキナは、もはやヒーローではなく、一つの暴力装置だった。


マキナが『機械的』に撃鉄を落とそうとしたその時、その右頬を『鬼』の拳が捉えた!


「何やってんだ馬鹿小娘ええええ!!!」


体勢を崩したマキナは、眼球だけでその拳の主を観察する。


『伸縮性外骨格人類・鬼/個体名:タロウ…脅威度SS』


タロウはマキナの前に立ち塞がり、明らかな異常を察知した。


「止めなきゃだな、コレ」


タロウは慎重にファイティグポーズを構える。


「ったく…世話の焼ける小娘だぜ…!」

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