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傍らのぬくもり

 王国では珍しい、白乳色の石造りの長椅子に座っていた少女は、どこか遠くに焦点を向けて―いや、その瞳は遠くを見ているようで、どこも見ていなかったのかもしれない―呟いた。

「“零ノ刻”まであとニ刻……」



『零ノ刻』



 それは双児園の双子の巫女が贄になる儀式の事だ。



 遙か昔から続く、隔離して育てた双子の子供を“神”に捧げるという名目の。

 その供物として少女―アピスと双子の妹、ステアは贄として上がることが決まっていた。

 ニ刻―残りの約一時間ほどが二人に“残された”時間だった。




××××




「アピス!」

 扉を蹴破る勢いで入ってきたのは、アピスと瓜二つの顔を持つ少女だった。

「ステア? どうした……」

「アピス!」

 突然の乱入者に驚きつつも微笑みながら問いかけたアピスの言葉を遮り、ステアはアピスに縋りついた。

「私は、必要じゃないの?」

「ステア、落ち着いて」

 縋りつきボロボロ泣き崩れたステアを、アピスは優しく宥めた。

「“零ノ巫女”に選ばれるのは愛されない人なの? 私は愛してもらえないの?……死ぬのはイヤ!」

「ステア……」

「怖い、怖いの! 誰か、私を見て!」

「ステア」

「私を、愛して!」

 混乱しながら泣き叫ぶステアを見つめ、アピスは片割れの身体を優しく抱きしめた。



××××




 双児園に生まれた双子は、世間から、親から隔離されて育つ。

 与えられない愛を求めて泣き叫ぶステアを抱きとめながら、アピスの瞳から一筋、涙が流れ落ちた。

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