第4話 3つの条件
「お父さん!僕騎士になりたい!」
僕が家に駆け込みながら言う
「ごふっ!?」
仕事を終え水を飲みながらくつろいでいたロックは水を吹き出した
・・・・・・・・・
「マーティ…いきなり騎士になりたいってどういうことだい?」
ロックが僕を膝に乗せて言う
「いきなりじゃないよ?前から思ってたよ?」
「うん、いつからとかはこの際いいから、なんで騎士になりたいんだ?」
「強くなりたいから!」
「騎士にならなくても強くなれるだろ?」
「それじゃ限界があるよ?」
「騎士になっても限界はあるが?」
ロックが僕の眼を見ながら言う
「それでも騎士にならないよりはずっと強くなれるよ!」
「……………」
「お父さん?」
「マーティ、呼ぶまで部屋で待ってなさい」
「えっ?」
「待ってなさい」
「はぁい………」
僕は部屋に向かう
・・・・・・・・
ーーーロック視点ーーー
驚いた
マーティが昔から身体を鍛えていたのは知っていたが騎士になりたいと言うとは思っていなかった
「…………騎士か」
正直親としては行かせたくない
騎士や傭兵とか危険が多い仕事は子供には目指してほしくはなかった
マーティにもフライスやサースの様に農夫になって欲しかった
「………マーティが自分からなりたいと言ったしな……」
駄目だとは言いにくい
子供のやりたいことを否定したくはない
「んっ?」
外に人の気配を感じる
扉を開ける
「んっ?ネルちゃんじゃないか?どうしたんだ?」
「あ、おじさん……あのマーティは?」
「マーティなら今は部屋にいるよ、呼ぶかい?」
「う、ううん!いい…………」
……………………
「おじさん、マーティは騎士になるの?」
「聞いたのかい?」
「酒場に居た騎士様と話してたから………」
その騎士の影響を受けたのかな?
「おじさんとしては駄目って言いたいんだけどね」
ネルちゃんからも説得してもらうかな?
「……………あの、その」
「んっ?」
「マーティが騎士になるの………認めてください!」
「!?」
ネルちゃんが頭を下げる
「なんでネルちゃんが頼むんだい?」
「だって……マーティの騎士になりたいって夢、本気みたいだから………応援したくて………」
「騎士学校に入ったら3年は会えなくなるんだよ?もしかしたらもう会えなくなるかもしれないよ?」
「それは………嫌だけど………でもマーティの事応援したいから……」
「……………取り敢えずルーティとも相談しないといけないからネルちゃんも帰りなさい」
「う、うん………」
ネルちゃんが帰るのを見送る
「…………さて、どうするか……」
・・・・・・
ーーーマーティ視点ーーー
「うーん………」
どうやって父さんを説得するか………
「説得の言葉が見つからない………」
黙って行っちゃう?
いや流石に駄目だろ
「どうするかな…………」
『マーティ!!来なさい!』
父さんの声が響く
・・・・・・・・
「………………」
「………………」
「マーティ………」
「………………」
ダイニングには皆が揃っていた
僕はいつもの席に座る
「マーティ、騎士になりたいんだな?」
父さんが言う
「うん!」
僕が答える
「そうか………」
「騎士は大変だぞ?」
フライス兄さんが言う
「わかってる」
「それでもなんだな」
「うん!」
「父さん、説得は無理だ」
「そうか………マーティ」
父さんが険しい表情になる
「君の夢はわかった、だけど家もそこまで余裕があるわけじゃない、だから条件がある」
そう言って父さんは指を立てる
「1つ、5000Gを自力で稼ぐ
2つ、王都にいる間は定期的に手紙を書くこと
3つ、試験に落ちたときや騎士学校を卒業出来なかったらすぐに帰って来て農夫になること、この3つが条件だよ」
5000G………結構な大金だ
パン1つ買うのに5Gだからパン1000個分か………まあ王都までの旅費とか装備とか色々揃えることを考えたら妥当かな
「わかった……頑張る!」
こうして条件が出されたが、両親から許可を貰った僕だった
・・・・・・・・
翌日
夜明けごろに僕はいつものように走り込みの為に外に出た
「やあマーティ」
外に出たら昨日のお兄さんが居た………僕が出てくるの待ってたの?
「騎士様」
「その様子だと両親から許しを貰った様だね」
「はい!」
「それは良かった」
お兄さんはそう言いながら僕に折られている紙を渡す
「?」
僕は折られていた紙を拡げる
「これは……」
そこには身体の鍛え方や剣の基礎が書いてあった
「鍛えるならそっちの方が効果的だよ、それと剣の基礎も書いといたからね」
「あ、ありがとうございます!」
「うん、それじゃ私は王都に帰るから………っと!そう言えば名前を言ってなかったね」
お兄さんはそう言うとピシッと構えて礼儀よく僕に自己紹介した
「私はナイラス、ナイラス・アルテミス………マーティ、君が来るのを楽しみにしてるよ♪」
そう言って彼は村の出口に向かっていった
「………ナイラス・アルテミス………」
僕はその名前を忘れないように呟いて
彼を見送った