第46話 卒業試験・意思
ーーーマーティ視点ーーー
スルトと別れて僕とラルスさんはパリスの活動範囲に向かう
いや、向かっていた
「むっ?」
「ラルスさん?」
ラルスさんが立ち止まる
「……まずいな」
そう呟くラルスさん
「えっ?」
その時
ドシン!ドシン!
「うぉぉぉぉ!?」
「ひゃっはぁぁぁぁ!?」
ガルネクとユルマリが目の前を走り抜けていった
そしてその後に
「グォォォォォォ!!」
昨日の巨大モンスターが二人を追いかけて走っていった
「ちょ!?今の!?」
僕は驚く
「どうやら見つかったようだな……」
「な、何とかしないと!」
僕は火球を空に撃とうとして
「待てマーティ!」
ラルスさんに止められた
「な、何でですか!?」
「今撃っても皆と合流する頃には二人は離れているだろ?」
あ、そうだ……撃つなら二人と一緒の時の方がいい
てか、二人が撃てばいいのに……いやそんな余裕がないのか
「じゃあどうしますか!」
「マーティ、君はパリスを頼む……あのモンスターは私が止めよう!」
「出来るんですか!?」
「筋肉に不可能はない!!」
そう言ってラルスさんは二人の走った方に走っていった
「…………」
ラルスさんがモンスターを止めてる間にパリスと説得しなきゃ!
ラルスさんが戦ってる間にガルネクかユルマリが火球を撃つよね?
・・・・・・・・
「マーティ、死にたいのか?」
森の東側、そこの奥にパリスは居た
僕より少し高い所に立って銃を向けてる
「パリス、話をしよう!」
「その必要は無い!」
「良いから聞いてよ!!」
僕はパリスを見る
「…………」
パリスは銃を向けたまま黙る
「パリス!この卒業試験はバトルロワイアルなんかじゃない!皆で協力するサバイバルなんだよ!」
「何を根拠に……」
「実際に僕達は合流して二日過ごしたよ!これが不正行為だったら教官達から何かの反応がある筈だよ!でも何もなかった!」
「…………」
「ゴルバ教官は個人評価って言ってたけど……それは生き残っていた結果の話なんだ!協力してもいいんだよ!!」
僕はパリスに必死で呼び掛ける
「……」
「パリス!皆の所に行こう!」
「……断る!」
ドン!
「っ!」
キィン!
パリスの弾が僕の剣の柄に当たる
「これは警告だマーティ、失せろ!次は眉間に当てる!」
「……どうしても駄目なんだね?」
「あぁ、駄目だな」
…………
これ以上は戦いになる、絶対に無事では済まない
でも……さっきのモンスターがこっちに来たらパリスが危ない
だから……
「だったら……無理矢理でも連れていくよ!」
僕は剣を抜く……説得が駄目なら連行だ!拠点に連れていって皆で説得すれば……いやこの場合説得というより強制だよね……
「そうかよ!」
ドン!
パリスが撃つ
キィン!
僕は眉間を剣で隠す
剣の刃に弾が当たる感触
「ちっ!」
ドン!ドン!
足下の地面に弾が当たる
僕の足を狙ってるのか……だったら走って狙わせない!
僕は斜めに走る
右斜め、左斜め、右斜め、左斜めと見せかけて右斜め
そんな風に前進していく
「あー!狙いにくい!」
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
あの武器に弾切れとか隙とか無いの!?連射してくるんだけど!?
僕は前にある木の根を踏んで跳ぶ
少しずつパリスの居る高台に迫る
「ちっ!」
ドン!ドン!
パリスが後ろに下がりながら撃つ
ビッ!
「つぅ!」
弾が首筋をかすった
「うぉぉぉぉ!!」
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
ヒュン!ヒュン!
そんな音が耳元を通り過ぎる
「着いた!」
僕はパリスと同じ高台に到着する
「くっ!」
少し離れた所に居るパリス
その顔は焦りの表情だ
「パリス!」
「来るんじゃねぇ!!」
ドン!ドン!ドン!
ビスッ!
「っ!」
弾が1つ僕の左肩を貫いた
「この程度ぉ!」
僕は気にせず走る
「くそ!来るな!来るなぁぁぁ!!」
キーン!
パリスの銃が光る
「!?」
「『走れ!水弾』」
ドゥン!
パリスの銃から水の塊が飛んでくる
「この!」
僕は剣で水の塊を斬ろうと剣を振る
水の塊は普通の弾よりかなり遅い、だから簡単に斬れる……そう思った
ザクッ!
剣が水の塊に触れる
プクッ
「へっ?」
すると、水の塊が膨らみ始めた
「っ!?」
嫌な予感がした
僕は剣から手を離して距離をとる
パァン!
水が弾けた
強い衝撃が周りに響く
木は揺れ
葉は舞い
枝は折れ
僕はぶっ飛ぶ
「うわっ!」
ザクッ!
僕の手元に剣が突き刺さる……飛んできたみたいだ
「なに……いまの?」
「まだやるかマーティ?」
僕は剣を取り立ち上がる
「当たり前だ!」
対策は何も浮かんでない……けど何とかしないと!
「うわぁぁぁ!!」
僕は突っ込む
「馬鹿が!」
キーン!
パリスの銃が光る
またさっきのがくる!?
僕は走りながら避ける方法を考える
「『痺れろ!稲妻!』」
パリスが弾を撃とうと指を曲げる
「っ!」
僕は走りながら剣を前に出して、弾を防ぐ準備をする
ドシン!
『…………』
地響き、突然の地響き
僕もパリスも止まった
ドシン!ドシン!
嫌な予感がする……
「な、なんだこの揺れは!?」
パリスが戸惑っている
ドシン!ドシン!ドシン!ドシン!
ドンドン揺れが酷くなる
そして……
「グォォォォォォ!!」
あのモンスターが僕達に向かって走っている姿が森の奥から見えた……僕が来た方向からだ
「!?な、なんだあの化物は!?」
パリスが驚く
「三人ともやられたの!?」
僕も驚く
「グォォォォォォ!!」
驚いてる間も奴はこっちに迫る
「っ!マーティ!こっちだ!」
「うわっ!」
パリスが駆け寄って僕の手を引いた
・・・・・・
僕とパリスは走る
さっきまで戦っていたのとか関係ない
僕もパリスも憎くて戦ってる訳じゃないからね
今は生き残ることを優先しているだけ
「グォォォォォォ!!」
だけどモンスターからは逃げ切れない、徐々に距離は離れてるけど……まだ逃げ切るには時間がかかりそうだ
「ぐっ、はぁ!」
僕の前を走るパリスは苦しそうだ
僕はまだ平気だけどパリスの体力は限界が近そうだ
どうやってモンスターが逃げ切る?
火球で皆を呼ぶ?
いや、こうして走りながらだと意味がない……
どうする?どうする?
「ぐっ!」
グイ!
「へっ?」
悩んでいたらパリスに引っ張られて
ドン!
「うわぁ!」
横に突き飛ばされた
「『飛ばせ!風よ!』!!」
「ぶっ!」
そして空気の塊に吹き飛ばされた
ガサガサッ!
「ぐぅ!」
僕は森の中の茂みに飛ばされた
「いきなり何をするんだ!?」
僕は茂みから起きてパリスを見る
ドン!ドン!
僕が見たのは
「こっちだ!化物!」
「グォォォォォォ!!」
モンスターを引き付けて走っていくパリスの姿だった
「パリス……僕を庇ったの?」
もう限界が近いのに?
「無茶して、あの馬鹿!!」
僕は空に火球を放つ
そしてパリスを追いかける
追いかけながらまた火球を放つ
すると
「マーティ!にゃにがあったにゃ!?」
ミストがやって来た
ミストは僕と並走しながら話す
「礼のモンスターに襲われた!ガルネクとユルマリとラルスさんが多分やられた!今こっちの方向にパリスを追いかけてる!」
「にゃるほど!それで?!どうするんだにゃ?」
「皆を集めて!あのモンスターを倒す!」
作戦もなんも考えてないけど!
「わかった!じゃあみんにゃに声をかけてくる!しにゅんじゃにぇえよ?」
そう言ってミストは拠点の方に走っていった
「パリス!」
僕はパリスを追って全力で走った




