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少年はただ幸せになりたい  作者: ファルコン
三度目の人生
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第45話 卒業試験・激突

 エルフィとファランとミートルス以外のメンバーで交代で見張りをしながら一晩過ごした



 翌日


「よし、出発だ!」


 僕とスルトとラルスさんで森に入る

 目指すは森の東側の奥の方

 僕がシャルルを発見した場所あたりだ


「てなわけでここまで来たけど……ルーク居ると思う?」


 僕はスルトを見る


「……あれから人が通った形跡は無いな、モンスターは何体か通ったみたいだが……」


 スルトは近くの茂みを覗いたり、木の根を調べたりしている


「ふむ、ルークの事だ、どこか安全な場所を見つけて拠点にしているんじゃないのか?」

「その拠点を見つけるのも一苦労しそうだな」


「ルークゥゥゥゥゥ!!いるぅぅぅぅぅ!?」


 僕は大声で叫ぶ


 返事は当たり前だが無い


「おいおい!いきなり叫ぶな!例のモンスターが来るかもしれないだろ!」

「あ、ゴメン……」


 それ考えてなかった……


「ふむ、もう少し奥を調べるか?時間に余裕はあるだろ?」

 ラルスさんの提案


「そうだな……」


 僕達は奥に進んだ



 ・・・・・・・


 ーーールーク視点ーーー



「はぁ……はぁ……」


 僕は崖を風魔法で削って作った穴に入って気配を殺していた


「くっ!」


 手が震える

 手だけじゃない……身体も震えている


「シャルル……」


 頭に浮かぶのは二日前襲ってしまったシャルルの事だ

 僕の剣が彼女の肩を貫いた

 彼女はそのまま坂道を転がり落ちていった……


「…………」


 頭に浮かぶ『死』という文字

 確かめた訳じゃない……でももしかしたら僕は彼女を殺してしまったんじゃないか?


「うぅ……」


 後悔したって僕がやった事実は変わらない


「どうしよう……どうしよう……」


 皆に合わせる顔がない

 僕は仲間を襲い傷つけた

 ……パリスに襲われていたから錯乱していた……混乱していた……そんな言い訳が浮かぶが……そんな事を言うのは『甘え』だ


『僕』が『自分』の『意思』で!

 彼女を襲ったのだから!!


「…………」


 ぐぅ……

 そんな音が僕のお腹から聞こえる


「こんな状態でもお腹は空くんだね……」


 喉も渇いた……水は水魔法でどうにか出来るが

 食べ物はね……


「飢え死にするわけにはいかないよね……」


 死んだら何の意味もない……シャルルを襲った意味も……


 僕は穴から出て食料を調達しに行く


「近くに果物があった筈……」


 木に実っていた果物……それで飢えをしのごう


 ・・・・・・


 ーーーマーティ視点ーーー



「んっ?」


 ルークを探していたらスルトが立ち止まった


「スルト?どうしたの?」

「どうやらルークが近くに居るかもしれない」

「何故わかる?」


 スルトが指を差す


「あそこの木の木の実を見てみろ、もがれた形跡がある」

「えっ?」


 もがれた形跡?そんなのわからないけど…………


「よく見てみろ、へたが残ってるだろ」

「……あっ」


 言われてみると確かにへただけが枝に残っていた


「自然に落ちたのではないのか?」

「時期的に熟す前の木の実がか?他の木はそんな形跡は無かっただろ?」


 そこまで見てないよ……


「それに……ほらやっぱり」


 スルトが木に近付いて地面を見る


「足跡を消した痕跡がある……ルークのだ」

「他の誰かってのは?リーデス達が食料調達してるんだし」


 僕の問いに


「なら足跡は四人分……少なくても二人分はある筈だろ?単独行動しないように言っておいたし……それにアイツ等なら他の木の実ももぎ取ってるだろ?少なすぎる」


 ……確かに、へたの量からして一人分くらいかな


「パリスの可能性は?」

「アイツの行動範囲はこことは離れてるだろ?」


 まあ僕やラルスさんが撃たれた場所からはかなり離れてるけど


「ルークは近くに居るぞ、探そう」


 スルトはそう言って奥に進んだ


「あ、待ってよスルト!」

「あまり離れない方がいいぞ!」


 僕とラルスさんが追いかける


 ・・・・・・・


 ーーールーク視点ーーー



「…………!?」


 果物を食べて穴に戻ろうと歩いていたら人の気配を感じた


 振り返るとスルトの姿が見えた


「スルト……」


 相棒の姿を見てほっとする気持ち

 無事だったんだと嬉しい気持ち

 そんな気持ちが訪れた後に


「隠れないと……」


 合わす顔がないと焦る気持ち

 シャルルを襲った罪悪感

 この感情が押し寄せて、僕は隠れることを選んだ


「っ!」


 僕は近くにあった木に登り、枝や葉の中に隠れる


「…………」


 気配を殺して……スルトが去るのを待とう


 ・・・・・・


 ーーーマーティ視点ーーー


「スルト!」


 先に行ったスルトに追いつく


「マーティ、近くにルークが居るぞ……」

「えっ?」

「足跡がここで途切れてる、俺達に気付いて隠れたんだ」


 地面を見ると確かに足跡が不自然に途切れていた


「どこに隠れたのかわかるのか?」


 ラルスさんが追い付いて聞く


「……わからん!」


 スルトは周りを見渡す

 そして……


「ルーク!出てこい!」


 叫んだ

 さっきは僕に叫ぶなって言っておいて……まあいいけど


「話がある!隠れてるんだろ?」


 周りに変化はない


「お前の事だ!シャルルを襲った事を気にしてるんだろ!?安心しろ!シャルルは無事だ!」


 ガサッ


 そんな音が近くから聞こえた……スルトの叫び声でどこからかはよくわからなかったけど……


「シャルルも心配している!出てこい!」


 ………………


 出てこない……


「…………」


「スルト、もしかしたら木の上を移動したのかも知れないよ?」


 ミストみたいに、それなら足跡は残らないし……


「いや、近くに居る……間違いない、俺はアイツと三年も組んでいたんだ!アイツの行動くらいわかる」


 そう言ってスルトは周りを見渡す


「…………」


 そして少し考えて……


「マーティ、おっさん……悪いが二人はパリスの方に行ってくれないか?」

「えっ?」

「なに?」


 えっ?スルトを一人にしろって言うの?


「単独行動はするなって言ったのは君ではないのか?」


 ラルスさんが聞く


「そうだ、だが俺はすぐにルークと合流するから安心しろ」


 いや、ルーク見つかってないから!?


「頼む!」


 スルトが僕とラルスさんに向けて頭を下げた

 …………必死なスルト……こんな姿を見たのは初めてだ


「……わかった」

「ラルスさん?うわっ!」


 ラルスさんが僕を抱える


「必ずルークと戻ってこい!私とマーティもパリスを見つけてくる!」


 そう言ってラルスさんは走り出した


「えっ?ちょ!自分で走れるからぁぁぁ!!」


 僕は運ばれた


 ・・・・・・



 ーーースルト視点ーーー


「さてと……」


 俺は頭上を見上げる


「降りてこいルーク!そこに居るんだろ!!」


 …………ガサッ!


 スタッ!


「君には敵わないなスルト……」


 ルークが木から降りてきた


「さっきも言ったがシャルルも心配している、一緒に来い」


「…………シャルルは無事なんだね?」


 ルークは俺を見ながら聞く

 その目は不安で染まっている


「あぁ、マーティが見つけて保護した、今は俺達の拠点で留守番してる」


「そっか……よかった」


 ルークはほっとした様だ


「安心したなら行こうぜ」

 俺は歩き出す


「……スルト、ゴメン……無理だよ」

 ルークが呟く


「……」


 俺は振り返る


「シャルルが無事なのは嬉しいよ?本人が気にしてないってスルトの話も信じるよ?でも……僕はそれでも行けないよ……」


「一応理由を聞こうか」


「だって僕は仲間を襲ったんだ!そんな奴が皆と一緒に居られる!?無理なんだよ!」


「……はぁ」


 俺は溜め息を吐く


「ルーク、お前は真面目すぎるんだよ、強いくせに気弱だし、変に頑固だし……もう一度言うぞ?気にするな!」


「…………」


 ルークは項垂れて……首を横に振る


「そうか……ここまで言っても無理か……」

「ゴメン……」

「いいさ……なら方法を変える」

「……えっ?」


 こうなったら最終手段だ


「剣を抜けルーク!俺と決闘だ!俺が勝ったら一緒に来てもらうからな!!」

「なっ!何を言ってるんだよスルト!?」


 ルークは驚く……まあ驚くだろうなぁ


「スルトが僕に勝てるわけ無いじゃないか!スルトを……仲間をこれ以上傷つけたくないよ!」


 俺が負けること前提かよ……


「ルーク、俺を嘗めるなよ!」


 俺は剣を抜いて踏み込む!


「っ!?」


 キィン!


「やっぱ速いな!」

「スルト!!」


 俺が踏み込んで上から振る剣をルークは剣を抜いて受け止めた


「っと!」


 俺は一旦距離をとる


「なんで君と戦わないといけないんだよ!僕の事を放っておけばいいじゃないか!」

「相棒を放っておけるかよ!!」


 そうだ、俺はルークを一人にしたくない

 このままだとルークは孤立するだけだ……

 上手く生き残って騎士になれてもルークは一人のままだ

 そうなる相棒を放ってなんかおけるか!


「スルト……くっ!」

 ルークは頭を振る


「わかったよスルト、決闘を受けるよ……僕が勝ったら……もう僕の事は放っておいてよ……」

「ああいいぜ、どうせ俺が勝つからな!!」


 ダン!


 俺がそう言うと同時にルークが突っ込んで剣を振る


「っと!」


 キィン!


 俺はルークの剣を受け止める


「どうしたルーク?加減してるのか?この程度じゃないだろ?」

「っく!」


 キィン!


 剣を弾いてルークは俺をのけぞらせる


「うぉ!」

「はぁ!」


 ルークが連続で突いてくる


「うぉ!?っと!?」


 ルークの突きが俺の左肩をかする、次に右腕、次に左頬を剣がかする


 俺はたまらず後ろに跳ぶ


「あっぶね!」


「スルト!君に勝ち目はないよ!」


 ルークが言う

 確かに普通に考えたら勝ち目はないように思える


「勝ち目は……あるんだなこれが!」


 俺はルークに向かって走る


「はぁ!」


 ルークは落ち着いて俺の左腕に剣を振る


「あらよっと!」


 俺は左腕を後ろに逸らして剣を避ける


「!?」


 一瞬の隙が出来るルーク


「とった!」


 俺は一気に踏み込む


「うわぁぁぁ!!」


 バキィ!


「ぐぁ!」


 ……………強烈な一撃が入った

 …………俺の顔に


 ルークの左腕のパンチがもろに顔面に入った……

 俺は後ろに倒れる


「スルト……僕の勝ちだよ!」


 ルークが俺に近付いて剣を向ける


「…………」


 俺は黙る


「僕の事は放っておいてよ……」


「…………ルーク」


「なに?」


 ルークは俺を見る

 そういうとこだ、お前に勝つために俺が狙う隙はお前のそういうとこだ


「まだ勝負はついてないぞ?」


 俺は視線をルークの上に向ける


「?」


 ルークが頭上を見上げる

 そのタイミングで


 ボフッ!



「うぐっ!!げほっ!ごほっ!?」


 ルークの顔面に小袋が命中した

 ルークに殴られる直前に後ろ手で上に投げた小袋が


「こ、これ!なに!?ごふっ!」


 ルークは噎せる、目もよく見えないだろ?


「俺特製の目潰しだ!効くだろ!」


 俺はルークに突っ込んでタックルする


「うわっ!」


 そしてルークの剣を奪い


 ザクッ!


「はぁ!はぁ!」


 ルークの顔の横に突き刺した


「どうよルーク?俺の勝ちだろ?」

「ごほっ!ごほっ!」


 ルークは噎せる

 両腕は俺の足で押さえているし

 ルークは噎せていて身体に上手く力が入らない……何かする前に俺は対処できる


「ごほっ!卑怯だよ!ルーク!がはっ!」

「ばーか!決闘に卑怯も何もねーよ!勝てばいいんだよ!お前は戦場でも同じ事を言うのか?」

「うぅ……」


 これは別に闘技大会とかじゃないんだ、だから勝つために手段は選ばない


「さっき俺を殴った時やのけぞらせた時にさっさと止めを刺せば良かったんだよお前は。その甘さがお前の敗因だ」


「…………はぁ……」


 ルークは溜め息を吐く


「なんだ?まだやるか?」

「いや、負けたよ……この体勢じゃ勝ち目は無さそうだし……僕に殴られたのもわざと?」

「まあな、全部予想通りだ、伊達に付き合いは長くないぞ?」

「そうだね……長い付き合いだよね……本当に……」


 ルークの目から涙が流れる


「泣いてんじゃねえよ!ほら!落ち着いたなら行くぞ相棒!」

「うん……うん!!」


 こうしてルークが俺達と合流した
























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