第39話 裸の語り合い
レイスがシャルルと訓練生達に判明してから二日後
ーーー男湯ーーー
「ふぅ……」
僕は浴場で湯船に浸かっていた
「どうした?お疲れさんか?」
その僕の目の前にはスルトが浸かっている
「いや、お風呂はいいなって思ってさ」
僕は天井を見上げる
「年寄りみたいなことを言うなぁ」
スルトは苦笑する
「二人とも楽しそうだね?」
そこにルークがやって来た
「あれ?ルークがここに来るなんて珍しいね?」
普段は恥ずかしいからってシャワーで済ませてるのに
「もうすぐ卒業試験だから、たまには入ってみようかなって……なんか視線が気になるけど」
だろうね
ルークは女性みたいな顔だから胸元と下半身を斯くしたら女性にしか見えない
そんなルークを見慣れていない一年生とかは意識しちゃうんだろうね
「ルーク、襲われないようにしろよ?」
スルトが楽しそうに言う
「えっ?う、うん?」
ルークが首をかしげる
まあ、ルークなら例え襲われても返り討ちにするだろうね
三年生最強だからねルークは!
体力なら僕
力ならラルスさん
技術ならシャルル
魔法はエルフィ
っとこの四人がそれぞれのトップなんだって
でも苦手なものもある
僕とラルスさんなら魔法が
シャルルは体力が
エルフィは力が
だから僕達は最強ではない
しかし、ルークはそういう苦手な分野がない
体力も普通の人よりはあるし
技術も高い
魔法も風の上級魔法を習得した
だからルークはどんな相手でも……どんな状況でも臨機応変に対応できる
実際、ルークと模擬戦をしても最近は誰も勝てなくなった
シャルルもエルフィもラルスさんも僕もだ
でもルークはそれでも自信が無いようで……
「ど、どうしたのマーティ?僕の顔……変かな?」
こんな感じである
「あ、気にしないで」
「?」
ルークは首をかしげる
「何話してんだ?」
そこにガルネクがやって来た
「んっ?ちょっとね」
湯船に浸かるガルネクを見る
「なんだ?何見てんだ?」
「いや~ガルネクも変わったな~と思ってさ」
「はっ?」
子供の頃と比べたらかなり良い奴になったよね
「そう言えばハリエルさんとはもう付き合ってんの?」
僕はガルネクに聞く
「お前には関係ないだろ……」
「だって気になるからさぁ……」
ハリエルさんは今でもガルネクにアタックしてる
お弁当作ったり、アップルパイ作ったり
「アイツとは付き合ってねえよ……」
「えっ?そうなの?」
ま、まさか利用するだけ利用して……
「今は騎士になることに集中してんだ……騎士になったら……答えるつもりだ」
「ほほぅ……」
つまり騎士になったら付き合うと……あのガルネクに恋人がぁ!
「俺の事よりお前の事だ、騎士になった後お前はどうするつもりなんだ?」
ガルネクが僕を見る
「どういう意味?」
「騎士になったら、俺達はファルクムで暮らすことになるんだ……おじさんとかに挨拶とかしに帰ったりとかしないのか?」
あ~それは僕も悩んでたんだ
フルーヤ村からファルクムまでは馬車の片道で10日もかかった
往復で20日……途中で何かあって足止めをくらえば1ヶ月は帰れない
「僕は手紙を出すつもりだよ、余裕ができたら帰郷するさ」
いつ頃帰るかはもう決めてるけどね……
2年後の邪竜の月……僕の15歳の誕生日頃
山賊がフルーヤ村を襲撃する2日くらい前にはフルーヤ村に帰るつもりだ
余裕をもって20日前にファルクムを出発すればいいかな?
そんなつもりだけど……
「そうか……あ~なんだ、ネルの事とかは考えてるのか?」
「ネルの事?」
「会いたいとは思わないのか?」
「会いたいに決まってるじゃないか……凄く会いたいよ……」
今すぐでも会いたいくらいだ
でもまだその時じゃない
先ずは卒業試験に合格しないといけないし
騎士になってもお金を貯めないと山賊を討伐するための依頼を出せない
訓練生の報酬は少ないからね、まだ1万Gくらいだよ……
目標の5万Gまではまだ4万も足りない
だから騎士になれたらクエストを受けまくらないと!!
だから帰る時間は無いよ!
「いつかは帰るつもりなんだな……」
「うん、その時が来たらフルーヤ村に行って……ネルにプロポーズするよ」
そう話していたら
「マーティのその話って子供の頃の話だろ?相手が約束を守るって本当に思ってるのか?」
スルトが聞いてきた
「うぐっ!」
「スルト……思っても言っちゃ駄目だよ?」
ルークまで!?
「ネ、ネルはそんな子じゃないから!」
「でも人間って変わるからな~」
スルトがニヤリと笑いながら言った
あ、僕をからかってるのか
思いっきり否定してやる!!
「それはないな、アイツはマーティしか見えてねえよ」
僕が言う前にガルネクが言った
「お、ガルネクから言ってくるとは思ってなかった」
スルトが意外そうな表情をする
「ネルの奴は何かあればマーティ、マーティだからな……いっつもマーティの近くをチョロチョロしていたな」
ガルネク……僕達を見てたのかな?
「へぇ~マーティにベッタリだったわけか……それって逆にマーティが離れて大丈夫だったのか?」
「大丈夫だよ、ネルは強いから!」
待ってるって言ってたし!
「いい子なんだね、会ってみたいなぁ」
ルークが微笑む
「皆に紹介するよ!!」
僕の未来の奥さんですって言ってね!!
「随分と盛り上がってるなお前ら」
そんな僕達に近付いてくる男が1人
「パリス?どうしたの?」
「楽しそうに話してるのが聞こえてきてな」
そう言って湯船に入る
彼はパリス・パーツ
僕達の同期の三年生だ
僕はあまり一緒にクエストを受けていた訳ではないけど、悪い奴ではないのは知ってる
「なんの話だったんだ?」
「マーティの想い人の話だ」
スルトがパリスに伝える
「あぁ、例の女の子?」
皆すぐにわかるね
何?僕そんなにネルの話してた?
「話は何回か聞いたことがあるが……どんな子なんだ?」
「少し泣き虫な所があるけど、優しくて、可愛くて、近くにいると花の香りがして、凄く癒される子なんだ!!」
僕はネルの魅力を語る
「そんな良い子なら村の人間が放っておかないんじゃないのか?」
パリスが首をかしげていう
「大丈夫!!」
「なんでそんな自信満々なんだ?」
「だって同年代の男は僕ともう1人の幼なじみとガルネクの子分くらいだもん!」
カーツはネルとはそんな関係にはならないし
ガルネクの子分達はネルに嫌われてるからね
てかネルは同年代の男なら僕とカーツしか仲良くしてないからね!
そんな心配はしてないよ!
「随分と信じてるんだな」
「パリっち、それくらいにしときなよ」
「へいへい」
湯船の側でお湯を浴びていた男がパリスに言う
彼はユルマリ
パリスの相棒である
「そうやって次々と詮索するのはパリっちの悪いところだよ、マーちんが大丈夫っていうなら大丈夫なんだよ」
ユルマリが湯船に浸かる
「それもそうだな……ふむ、話題を変えよう」
パリスが僕達を見る
「もう少しで卒業試験なんだが……お前ら試験の内容は知ってるか?」
卒業試験か……そう言えば知らないな
周りを見るとスルト以外は知らないって顔だ
「スルトは何か知ってそうだな」
「いや、俺も知らないぞ……ただ先輩に以前聞いたことがある」
「な、何て言ってたの?」
ルークがスルトに聞く
「守秘義務だとさ、ただこうも言っていた『自分で気付かないと意味がない』ってさ」
自分で気付かないと意味がない?
どういうことだろ?
「試験の内容はわからないが、どっかに移動してやるのは把握したぞ」
「どうやってだ?」
ガルネクが聞く
「お前ら先輩達の行動を見てなかったのか?卒業試験の頃になったら10日は全員居なくなってただろ?つまりこれはそれだけ離れた場所で行ってるって事だ」
そしてスルトは声を低くして続けた
「そして戻ってきた先輩達は半分以下の人数だった……それだけ卒業試験は厳しいってことだな」
半分以下!?
僕達で例えるなら19人だから……9人以下くらい?減りすぎでしょ!?
「半分以下か……一騎打ちで勝った方が卒業とかか?」
パリスが不吉なことを言う
「実際はまだわからんよ……取り敢えず色々準備と覚悟はしとこうぜ」
そう言ってスルトは湯船から出た
僕もそろそろあがろう
「つまりここの筋肉はだな」
後輩たちに筋肉について語るラルスさんの隣を抜けて僕は浴場から出た
・・・・・・・・
ーーー女湯ーーー
「…………」
エルフィは湯船に浸かりながら目の前の光景を見てダメージを受けていた
「シャルルちゃん柔らか~い♪」
「ちょ!サハル!やめ……きゃ!」
「諦めるにゃ、サハルはしつこいからにぇ」
目の前で揺れる6つの山
自分には存在しない山
「エルフィ?大丈夫?」
そんな彼女を心配したのか褐色の肌をした女性が話しかける
彼女はリーデス・カシュ……三年生であり
プルン
山の持ち主である
「大丈夫……じゃないです!どうして皆そんなにあるんですかぁ!!」
『!?』
エルフィに注目が集まる
「サハルさんもミストさんもシャルルさんもリーデスさんも!!大きいんですよ!!私さっきから精神的に辛いんですよ!!」
涙目で叫ぶエルフィ
「やっぱり気にしてたんだエルフィちゃん」
サハルがエルフィに近寄る
「大丈夫だよエルフィちゃん、だってエルフィちゃんはエルフでしょ?私達より成長が遅いだけでしょ?」
「そうですけど……」
「ほ、ほら!エルフの身体年齢は人間の10分の1って話だから!エルフィの身体年齢を人間で言うなら……5歳?」
シャルルが励ます
「5……歳?」
それはそれでショックなエルフィ
「エルフィは気にしすぎにゃんだにゃ!ほら、アイツら見てみるにゃ!」
ミストが3人の女性を指差す
「カリシスもファランもミートルスも小さいにゃ!ほらほら!」
「ミスト!!失礼にも程があるよ!!」
とカリシス
「謝罪を要求します!若しくは小魚奪います!!」
とファラン
「…………殺す」
ミートルスは殺気を放つ
「にゃ!?」
ミストはエルフィの後ろに隠れる
3人とも三年生だ
女性の三年生メンバーが全員集結してるのだ
「でも膨らんでるじゃないですか……私……無ですよ?無!!」
「エルフィ本当に落ち着いて?ねっ?」
シャルルがエルフィを抱き締める
「シャルルさぁん……私、私!!うぅぅぅぅ!!」
エルフィはシャルルに抱き着きながら
シャルルの山で更にダメージを受けていた
そしたらなんかまた泣けてきた
この時、女性陣は決めたのだ
エルフィの前で胸の話は止めようと
パリス・パーツ
17歳
特殊な武器を使って土魔法を撃つ戦い方をする
ユルマリ
18歳
普段はピエロの様なメイクをしている
ナイフ等を投げる戦い方を好む
リーデス・カシュ
20歳
斧を振り回すパワーファイター
姉御肌
カリシス・ミューラ
18歳
槍で戦う、神槍に憧れている
ファラン・マックス
23歳
悪を許さないという信念で騎士になろうとしてる
魔法使い
ミートルス
16歳
スラム街で産まれて育った
騎士になれば特典が多いとしって金のために騎士になろうとしてる
素手で戦う




