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少年はただ幸せになりたい  作者: ファルコン
三度目の人生
57/69

第38話 『僕』の決意

 ーーーレイス視点ーーー

 拠点

 僕はゴルバ教官に連れられて、ある部屋に入れられた……



「……そこに立て」


 僕は言われた場所に立つ


「レイス・カールル、全てを話してもらおうか」


 僕の目の前にはゴルバ教官を始めとした中級騎士達が座っている

 ユルシカ四等騎士やリードゥ教官等のお世話になった人達も居る


「全て……ですか?」

「そう、全てだ……何故男だと偽った?その理由を話せ」


 ゴルバ教官が辛そうに言う

 ショックなんだろうな……僕は訓練生の仲間だけじゃなくて、彼等も騙していたのだから


「わかりました……」


 僕は話す

 シャルル・リィ・フランベールが

 レイス・カールルになった理由を



 ・・・・・・・


『…………』

「以上です」


 僕は教官達に話した


「そうか……ではやりたくて偽った訳ではないんだな?」

「はい……しかし、皆を騙していたのは事実です」


 それは紛れもない事実だ


「レイス・カールル……何故さっき否定しなかった?」


 ゴルバ教官が問う

 さっきの出来事……ゴルバ教官の問いに肯定したこと


 最初は否定しようとした

 でも、ふと思ったんだ……

 ここで否定したら今回はなんとかなるかもしれない

 でも、一度疑惑が出てしまったらそれからは隠すのが難しくなる

 それに……もしバレたら……マーティやエルフィまで処分を受けるかもしれない

 そう思った……


 騙していたのは僕だけだ

 だから処分を受けるのも僕だけだ


「隠し通せないと判断したからです……」

「そうか……では」

「ねえ、もうよくない?」


 ゴルバ教官が次の問いをしようとしたら

 リードゥ教官が言った


「何を言っても無駄なんだからさぁ」


 リードゥ教官が立ち上がって僕の前に来る


「聞くべき事はこれだろ?」


 そして僕を見ながら問う


「マーティ・ロキソン、それとエルフィーユ・マールス……この二人は君の事を知っていたのかい?」


 僕の答えは決まっている


「知りません、二人にも黙っていました」

「なら処分を受けるのは君だけだ、コホン!」


 そう言ってリードゥ教官は咳払いをする

 そして……


「レイス・カールル……貴様は除隊だ、荷物をまとめて出ていきなさい」


 僕の処分が決まった


「待ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 バン!

 そんな音を響く

 扉を勢いよく開く音


 そして


「その処分待ったぁぁ!!」


 マーティが僕の前に立った……



 ・・・・・・・・


 1時間前



 ーーーマーティ視点ーーー



 レイスがゴルバ教官に連れていかれた


「マジかよ……」


 スルトが驚いている


「レイス……なんで?」


 否定すればそれで誤魔化せたのに


「……知ってたのか?」


 ガルネクが僕を見る


「……うん」

「俺達には黙っていたわけか……」


 ガルネクは連れていかれるレイスを見る


「レイス君も色々事情があったんです……」

「事情ね……」


 スルトが目を閉じて考える仕草をしている


「おい、シール・ハーレン!」

「なんだ田舎者?」


 ガルネクがシールに叫ぶ


「お前はレイスの事をいつ知ったんだ?」

「2年前だな、試験が終わった後に直ぐに調べた」


 何かする気だったんだ……そしてレイスの秘密を知ったんだ……


「2年前にわかったことを何で今、言ってきた?」

「そりゃあ、このタイミングで公開した方がアイツが苦しむと思ったからだ!騎士になれると喜んでるのを絶望させる!それがさいこぁ!?」

「ガルネク!?」


 シールをガルネクが殴った


「そうか、つまりお前はレイスの今までの努力を無駄にさせたかったって事か、このクズ野郎が!!」

「き、貴様ぁ!!田舎者の分際で俺をごぁ!」


 また殴る


「田舎者だからなんだ!貴族がそこまで偉いか?!人の努力を踏みにじる程偉いのか!?」


 ガルネクがシールに馬乗りになって殴る

 殴る

 殴る


「…………」


 数発殴られた所でシールが気絶した

 顔は腫れ上がっている


「ガルネク、そのくらいにしておけ」

「まだ殴り足りねぇ!!」

 ラルスさんがガルネクを押さえる


「これ以上殴れば死ぬ、お前が罪人になる必要はない」

「くっ!」


「ねぇ、レイスはどうなると思う?」

 僕は言う


「処刑とかは無いだろうな、法を犯したわけではないし」

 ラルスさんが言う


「……除隊じゃないのか?」

 とガルネク


「除隊……」


 性別を偽って訓練生になったのはそこまで重たいことなんだろうか?


「まぁ除隊だろうな、レイスは俺達を騙していたことになるからな」

 スルトが考え事をしながら言う


「レイスだって辛かったんだよ!」

 僕とエルフィに話をした後、レイスは泣いていた

 罪悪感をずっと感じていたんだよ!


『…………』


 皆黙る……


「……除隊になんてさせない」

「マーティ君?」


 僕は思い出す、レイスとの思い出を

 一緒にクエストを受けたり

 座学で色んな事を学んだり

 訓練だって一緒にやってくれたし

 困った人を助けたり、後輩達の面倒だってよく見てた

 レイスは一生懸命頑張ってたんだ!

 それなのに、性別を偽っていたってだけで除隊なんて

 させてたまるか!!



「おいマーティ!」


 拠点に向かう僕の肩をガルネクが掴む


「何をするつもりだ?」

「教官達を説得する、レイスを除隊になんてさせない」

「お前も協力してたなんて言ったら、最悪お前も除隊だ」

「わかってる」

「騎士になるんじゃなかったのか?」


 騎士になる……それは山賊達を撃退するのに必要なことだと僕は思ってるよ……でも!


「仲間を見捨ててまでなりたいとは思わない!騎士になるときは……レイスも一緒だ!」

「!?」


 僕はガルネクを振り払って拠点の建物に入った


 ・・・・・・・




「多分教官達の部屋だよね……」


 拠点に入った僕は教官達が待機している部屋に向かう


 部屋の前に着いた時

「レイス・カールル……貴様は除隊だ、荷物をまとめて出ていきなさい!」


 ヤバい!もう処分が決まってる!


「待ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 僕は部屋に突入する

 そしてレイスの前に立って


「その処分待ったぁぁ!!」


 叫んだ

 目の前にはゴルバ教官とリードゥ教官

 他には中級騎士の教官達が座ってる


 僕に説得……できるかな?

 いや、説得しなきゃダメだ!やってやる!


「マーティ・ロキソン……何のつもりかな?」


 リードゥ教官が僕を睨みながら言う


「レイスの処分に異議を申し立てます!」


「マーティ?なんで?」

 レイスが驚く

「ほっとけないから!」


「……はぁ、マーティ・ロキソン、その口ぶりだと君はレイスの事を知っていたようだね?」

「はい、知っていました」

「知ってて協力した訳か……なら君も」

「待てリードゥ、少しマーティ・ロキソンの話を聞くべきだ」


 ゴルバ教官がリードゥ教官に言う


「意味ないでしょ?こいつも共犯だった、それで終わり!」


 リードゥ教官が答える


「私は聞いてもいいと思いまーす♪」


 ユルシカ教官が言った

 彼女は四等騎士だ

 今、この部屋に居る騎士達の中で1番上の等級の騎士


「……はぁ、わかりましたよ、ほら、マーティ・ロキソン、さっさと言いたいことを言え」


 リードゥ教官はユルシカ教官の言葉に従った


「はい、先ず聞きたいのですが、レイスが性別を偽ったのは問題ですか?」


 僕の問い


「当たり前でしょ?男性が女性と偽るのも女性が男性と偽るのも同じくらい問題でしょうが」


 リードゥ教官が答える


「何故ですか?」


 僕は問う


「異性と過ごすと言うことは何かしらの間違いが起きる可能性がある、性犯罪や性別の問題とかね」


 確かにそれなら問題だ

 でも……


「ではレイスは問題ないのでは?レイスは今日まで男性寮にて過ごしていましたが、そんな問題なんて一切起こしていません!」


「起こしてなくても、男性寮に居たのは事実!それに男性と過ごすだけで興奮する性癖とかかも知れないだろ?」

「それは無いですよ!だって僕は同室でずっと一緒に居ましたが、レイスにはおかしい所なんて何一つありませんでした!」


 部屋でも騎士について話したり

 魔法のやり方を復習したり

 一緒にトランプで遊んだりとかだったし


「問題を起こしていなくてもね、根本的な問題もあるんですよ!」


「根本的な問題ですか?」


「性別を偽るということは、我々や同期の信頼を踏みにじったって事になります」


「しかしそれは……」


 レイスだってやりたくて男装していた訳じゃ……


「父親が出した条件?それだったらその時は諦めて時間をかけて説得すれば良かったんですよ!彼女はその努力をしなかった!」

「それは可能性の話じゃないですか!レイスの父親が説得すれば許してくれるかなんて、リードゥ教官にはわかるんですか?!」


 僕とリードゥ教官は睨みあう

 ここで退いたら負けだ、ごり押してやる!


「それにレイスは訓練生として入隊してから様々な実績があります!トロール討伐を始めとした様々な実績が!」


 レイスも頑張って活躍してたんだ!

 これは紛れもない事実だ!


「しかし騙していたのも事実だ!」


 リードゥ教官も反論する


「…………ぐむむ」


 ゴルバ教官が唸る

 そして……


「よし、決めた、私は君達の肩をもとう」

「ゴルバ!?」

「ゴルバ教官!?」


 ゴルバ教官がレイスの隣に立つ


「リードゥ、確かにレイス・カールルは性別を偽った、だがこいつはマーティ・ロキソンが言うように実績を残している、罰は与えるべきではあるが、除隊処分にする必要はないのではないか?」


「ゴルバ教官……ありがとうございます」


 レイスが弱々しく呟く


「お前が肩を持った所で俺達は認めてないんだよ!」


 リードゥ教官が振り返って座ってる中級騎士達を見る


「まあ、努力は認めるがしかしなあ……」

「前代未聞な出来事だ、下手な判決は下せないぞ」

「自分はどうでもいいっすわ、速く帰りたいんすけど」


 あ、帰りたいんですね……


「速く帰りたいならさっさとコイツらの処罰を決めよう、私は二人とも除隊処分にするべきだと判断しますが?」


『ざわざわ……』


 中級騎士達が話す

 そして


『異議なし』


 ……くそ、駄目だったのか?

 何か……何かないか?この状況を覆す何か!!


「異議ありぃ!!」


『!?』


 大声が部屋に響いた

 全員が扉の方を見る


「失礼します!」


 そこにはスルトが立っていた

 いや、スルトだけじゃない


「マーティ君!レイス君!」

 エルフィ

「間に合って……るのかこれ?」

 ガルネク

「間に合ったって事にしにゃい?」

 ミスト

「全部聞いたよ?教えてくれても良かったのにぃ」

 サハル

「仲間の為に、立派だぞマーティ!」

 ラルスさん

「だ、大丈夫?」

 ルーク(素顔


 他にも同期の皆が入ってきた


「なんだい?同期の訓練生全員で説得に来たのかい?」


 リードゥ教官が皆を見る


「まあ、そんなところです」


 スルトが僕の隣にくる


「スルト?」

「どうして?」


 僕とレイスがスルトに聞く


「話はエルフィから聞いた、取り敢えず俺に任せろ、マーティはこういうの得意じゃないだろ?」


 そう言ってリードゥ教官と向かい合うスルト


「はぁ、言っときますが……君達が全員で来ても処分を変えるつもりはありません、君達も一緒に処罰されたいのですか?」


「まさか、処罰なんて受けたくないですよ……てかリードゥ教官殿、1つ間違いがあります」


「間違い?」


「同期全員じゃないです」


 えっ?全員じゃない?でも全員居るよ?

 そう思って居たら同期の皆が扉から離れて僕達の側にくる


 そして


 ザッザッ!


「訓練生全員です」


 扉から二年生と一年生の訓練生達が入ってきた

 って、待て待て!卒業して騎士になった先輩達も入ってきたぁ!?


「それと下級騎士の先輩達も一緒です」


「……はっ?」


 リードゥ教官が呆気にとられている


「三年生17名、二年生35名、一年生40名、そして下級騎士31名!レイス・カールルとマーティ・ロキソンの除隊処分に異議を申し立てます!!」


 スルトが宣言する


「な……な……何を考えてるんだお前たちは!?」


 リードゥ教官が叫ぶ……さっきから敬語が崩れてたけど

 もう完全に敬語がなくなった


「お前達は騙されていたんだぞ!?それなのにこんなことをするのか!?」


「でも!レイス先輩にはお世話になりました!」


 一年生が言う


「僕も剣のコツを教えてもらいました!」

「私は死にかけたのを助けてもらいました!」

「俺だって馬術を教えてもらった!」


 それを皮切りに皆が次々と言っていく



「後輩たちだけではなく、私達も彼……いや、彼女の処分には不服を申し立てます」


 騎士の先輩の1人が言う


「彼女は男として様々な期待に答えてきました、それは並大抵の事ではありません」


 そう言った後にスルトが続く


「このようにレイスはしっかりと役目を果たしています、実績、信頼、それをこの3年間でしっかりと得ています……さて、そんな彼女を除隊処分にするのですか?」


「し、しかしだな……こんな事を許す前例を作るわけには……」


 リードゥ教官の目がレイスを見る


「リードゥ教官、彼女を許せとは言いませんよ、罰を与える必要は確かにあります……しかし、除隊は重すぎます、反省文とかでいいんじゃないんですか?」


 スルトは他の中級騎士達を見る


「皆さんはどう思いますか?」


『…………』


 教官達も悩んでる様だ

 あ、ユルシカ教官は面白そうにしてる


「ぐ、ぐぐ……」


 リードゥ教官は悔しそうだ、もう少し……もう少し!


「いいんじゃねぇか?」


 そんな声が聞こえた


『!?』


 リードゥ教官を含めた教官達全員が声のした方を見る

 男の人が窓際に居た、あれ?さっきまで誰も居なかったのに

 そして教官達全員が敬礼していた


「えっ?あの人は?」

「まさかそんな!?」


 少し遅れて先輩達が敬礼する


 訓練生の皆もその人に向けて敬礼していた

 僕も真似て敬礼する


「マ、マルクー様、な、何故ここに?」


 リードゥ教官が震えた声で言う


「あぁ?なんか面白そうな気配がしたからな、見に来た」


 マルクーと呼ばれた人が僕達の側に近づく

 この人……デカイ……ラルスさんよりもデカイ!?


「チビすけ、ちょっと退け」

「は、はい!」


 僕はレイスの隣に移動する


「あ~名前なんだっけ?まぁいい、ガキんちょ、お前は騎士になりたいんだよな?」


 マルクーさんがレイスを見下ろしながら言う


「……はい」


 レイスが見上げながら答える


「なら決まりだな!!」


 バン!


 マルクーさんがレイスの背中を叩く


「っ!?」


 レイスは凄く痛そうだ


「零騎士マルクーが命じる!この者の罪を不問とすることを!」


 ぜ、零騎士!?


「な、何を考えてるんですか貴方様は!?」


 リードゥ教官が言う


「だっておもしれえじゃねえか!男装までするなんてよ!普通じゃねえ!!」

「普通じゃないことを許すなんて!」

「あ?お前まだとやかく言うわけか?こんだけの奴等が反対してんだぞ?」

「ぐっ……」


 マルクーさんがリードゥ教官に近寄る


「どうする?なあどうする?俺に逆らうか?」

「……わ、わかりましたよ」


 リードゥ教官が項垂れた


「はぁ……くそ!レイス・カールル!」


 そして顔を上げてレイスを見る


「は、はい!」


「訓練生のバッチを渡しなさい!名前を書き替えましょう、それと今日からは女子寮で過ごすこと!あと反省文を三枚分書いて提出!!」

「おい、俺は不問にしろと言ったんだが?」

「こ、これでもかなり譲歩しています!これ以上は例え殺されても退けません!!」

「ふむ、まあいい」


 ニッ!と笑ってマルクーさんは窓際に行く


「じゃあ面白いものを見れたから俺は行く、頑張れよ訓練生!!」


 そう言って窓から飛び降りた

 えっ!?ちょ!?


 僕は窓に駆け寄り外を見る


「い、いない!?」


 外にマルクーさんは居なかった


「お前達!レイス・カールルの処分は決まった、さっさと戻れ!」


 後ろからゴルバ教官がそう言うのを聞きながら僕はポカーンとしていた


 いきなり現れて……去っていったよ……


 ・・・・・・・・



 僕達は建物から出る

 勿論レイスも一緒だ



「皆……黙っててゴメン!」


 レイスが前に出て土下座する


「ちょ!?レイス!?」

 僕は驚く

 いや、謝るのはともかく、土下座するほどではないよね?


「おいおい、俺達はお前のそんな姿を見たくて動いた訳じゃないぞ?」

「そうだよ……」


 スルトとルークがレイスの腕を掴んで立たせる


「でも、皆にずっと黙ってて……僕は……」


「レイス、いやシャルル、私達は既に君を許している」


 ラルスさんが屈んで目線をレイスと合わせながら言う


「そりゃあ驚いたけど、別にそこまで怒らにゃいよ」


 ミストがレイスのほっぺをつねる


「でも、女の子だったんならやっぱりもっと早く知りたかったかな~」

「ちょ!?どこ触って!?」


 サハルがレイスの背中を撫でる

 ……お尻まで触ってないかい?


「レイス君……いえ、これからはシャルルさんって呼んだ方が良いですかね?」

「エルフィ……」

「皆、貴女の為に動いてくれました……だから貴女が言うことは謝罪ではなく……わかりますね?」

「うん……うん」


 レイス……いやシャルルは涙を流す

 泣きながら頭を下げて言った


「皆、ありがとう……これからも……よろしく……お願い、します!」


 ・・・・・・・・・



 寮の部屋


「レイ……シャルルはこれからエルフィの部屋に住むんだよね?」

「うん、エルフィは1人だったからね」


 真っ赤な目をしたシャルルが荷物をまとめる

 僕も少しだけ手伝う


「この部屋とも今日でお別れかな……」


「そうだね、僕はこれから1人でここか……」


 寂しくなるなぁ


「……マーティ、その……今まで色々と助けてくれてありがとう……君やエルフィが助けてくれたから僕は……」

「レイ……シャルル、そういう事を言うのは騎士になれてからにしようよ、あと2ヶ月有るんだから」


 ポイントは大丈夫、後は減点されないように過ごすだけだ

 ……減点されなくてよかったよ


「そうだね……」

「明日はどうするの?」


 僕はシャルルに聞く


「その、エルフィとミストとサハルと一緒に装備の新調をね……ほら、僕は男物を無理矢理装備していたから」

「明日は女性装備のシャルルが見れると!」


 わあ、楽しみだな!


「な、なんか久しぶりに女性服を着るから恥ずかしいかな……」


 照れるシャルル


「よし、ルークにも女性服着せて御披露目会だ!!」


 絶対に盛り上がる!主に2人のファンがね!


「ルークを巻き込むんだ!?」


 シャルルが鞄を閉じる

 荷物が纏まったみたいだ


「それじゃあ……僕は行くね」


 そして立ち上がるシャルル


「うん……楽しかったよシャルル」

「…………」


 シャルルが僕に近寄る


「シャルル?」


 僕は立ち上がる


 ギュウ!


「っと!」


 シャルルが僕を抱き締めた


「その、こ、これからもよろしく……」


「う、うん……頑張ろうね!」


 シャルルが僕から離れて部屋を出た


「……ふぅ」


 ビックリしたぁ


「あ、反省文書かなきゃ!」


 あの後、僕も書くように言われたんだよな



 僕は椅子に座って机に羊皮紙を拡げる


「………結局シールの奴はどうしたんだろ?」


 あの後見てないけど……皆に聞いたらスルトに知らない方が良いって言われたし……なんか悪どい顔してたなぁ



「…………残り2ヶ月か」


 今日は大変だったけど……でもレイスがシャルルとして受け入れられたから良かったよ

 終わり良ければってやつだね!


 ……スルト達が来てくれなかったら危なかったけど

 明日改めてお礼を言っておこう


 僕は反省文を書くことに集中する



 ・・・・・・・


 ーーーシャルル視点ーーー


 部屋を出てエルフィの居る女子寮に向かう僕


 夜遅いから人は少ない


 あー良かった、人がいなくて……だって僕の顔は今絶対に赤いから


「なんで抱き締めちゃったかな……」


 マーティと離れると思うと……なんか寂しく感じて……

 あーいや、認めるべきかもしれない


 僕はマーティを異性として意識しているみたいだ


「はぁ……」


 出会った時は子供だと思ってたのに……

 今じゃ立派な人物だと認識してる

 思えばトロールの時から意識してたのかもしれない

 あの時から彼を見る目は変わったし

 僕が女性と知っても彼は態度を変えずに接してくれて……協力もしてくれた

 意識しないわけがない……


「でも、伝えない方がいい」


 マーティには想い人がいる

 その人の為にマーティは頑張ってるんだ

 だから僕は彼の邪魔をしない、応援する


「よし、大丈夫!」


 明日からいつも通りだ!

 大丈夫!大丈夫!



「シャルルさん!」


 エルフィの部屋の前に着いた

 エルフィが廊下で待っててくれた


「エルフィ、これからもよろしく!」

「はい!」


 僕はエルフィと部屋に入った


 明日から僕は『レイス』ではなく『シャルル』として過ごす

 でも僕は『僕』のままだ、だってもう『私』って言うのが照れるからね

 それに『僕』としてならマーティの事も諦められるから


 だから僕は『僕』としてこれからも生きていく


 それが『僕』の決意だ






















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