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少年はただ幸せになりたい  作者: ファルコン
三度目の人生
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第37話 洞窟の奥深く

 季節は冬

 神龍の月を終えて、今は魔王の月だ


 因みにこの神龍の月とかはこの世界の月の単位である


 神龍から始まって

 魔王、邪竜、不死鳥、凶風、獣王、巨人、金剛、火竜、悪鬼、神槍、剣帝

 となっている


 十二聖将から取ってるんだって……僕は最近知ったよ

 僕って世間知らずだったんだね、無知は罪って言われたよ……


 因みに十二聖将の順番が変わったら、次の神龍の月から順番を変えてるんだ

 だから以前は凶風と獣王が逆だったんだよ


 さて、そんな事を考えながら僕達は目的地に着いた


 僕は馬車から降りる


 目の前には洞窟


 皆も馬車から降りる


 レイス

 エルフィ

 ガルネク

 ラルスさん

 そして僕


 この五人でこの洞窟の調査のクエストを受けたんだ

 数日前に発見された洞窟でね、先ずは訓練生から調査するんだ

 訓練生でダメだったら下級騎士、それでダメなら中級騎士って感じで調査するんだ

 ようするに犠牲になっても平気な人材から派遣するってことだね!酷いね!!まあ仕方ないんだろうけど……

 このクエストを完了したら僕とレイスとエルフィはポイントが8000越えるんだ!



「これが調査対象か……」


 ガルネクが洞窟の中を覗く


「暗くて何も見えませんね、光魔法を使いますね」


 エルフィが杖を振る

 すると、小さな光の玉が三個ほど現れて僕達の周りを飛ぶ


「よし、なら隊列はどうする?」


 ラルスさんが提案する


「マーティ!俺と一緒に前衛やれ!」


 ガルネクに引っ張られる


「なんでガルネクと!?」

「レイスはエルフィを守らせた方がいいだろ!ラルスは最後尾で後ろの警戒!」


 ガルネクがそう言って洞窟に入っていった


「やれやれ、仕方ないね」


 レイスはエルフィの隣に立つ


「うーん……まあいいか」


 僕はガルネクを追った


 ・・・・・・・



 洞窟の中は暗い


 エルフィの魔法で明かりは有るけど、それでも周りが少し見える程度だ


「ぐっ!」


 ガルネクが頭をぶつける

 洞窟の天井は低いのかな?ドンドン低くなってる


 ゴリゴリ


「……あのさ、さっきから聞こえてる、この音ってさ」

「私の頭が天井に擦れる音だ」


 ラルスさぁん!?大丈夫!?禿げたりしてない!?


「なんかドンドン低くなってるようだね」


 レイスが天井を見て言う


「私とマーティ君はまだ平気ですけど……」

「ラルスはもう無理だろ……ここで待機しててくれ」

「そうさせてもらおう」


 ラルスさんは壁にもたれる


「光を1つ残しておきますね?」

「あぁ助かる」


 エルフィがラルスさんに光の玉を一個渡す


「よし、行くか」


 ガルネクは屈みながら進む


 ・・・・・・


「うぉ!」

「わぁ!」

「っと!」

「きゃ!」


 ラルスさんを置いて進んで体感で30分くらい歩いたら

 さっきまでの低さが嘘のような広い場所に着いた

 しかも結構明るい、石が光ってる?


「なんだここは?」


 ガルネクが周りを見渡す


「これ光石(こうせき)ですね」


 エルフィが光ってる石を拾う


「光石って?」

「文字通り光る石です、物によって光る方法は違いますが……これは自力で光るタイプの様ですね」


 因みに他のタイプは

 光を溜めて必要に応じて光る

 光を当てたら光を更に強くして光る

 衝撃で一瞬だけ凄まじく光る

 等があるらしい



「珍しいの?」

「いぇ、結構発掘されますからそんなに珍しくはないです」


 貴重な物ではないのか


「でも、便利そうではあるね、持って帰ったら何かに使えるかも」


 レイスが袋を取り出して何個か光石を入れる

 確かに、夜に部屋を明るくしたり、こんな洞窟の探索とかにも使えそうだし

 味方への合図とか目印とかにも使えるね


「つまりこの洞窟は光石の発掘ポイントって事だな」


 ガルネクが僕達の所に戻ってきた


「周りを調べたがここが最奥部で間違いなさそうだ、他に道は無かった」

「道中が暗かったから、他の道に気付かなかった可能性は?」


 レイスが言う


「ありえるな、だからこの石を持っていって、戻りながら周りを調べるぞ」


 ガルネクが大きめの光石を手に持つ


「そうだね!」


 僕も何個か取る


「では戻りましょう!」


 エルフィが皆の準備が終わるのを待ってから歩き出した



 ・・・・・・・


「むっ?無事だったか」


 ラルスさんが僕達を見る


「はい……あの、ラルスさん?」

「どうした?」

「そこに転がってる明らかにモンスターの死骸は?」


 ラルスさんの足下にはモンスターの死骸が2つあった


「ゴーレムだ、襲ってきたから返り討ちにした」

「ゴーレムですか!?Cランクモンスターですよ!?」


 エルフィが驚く


「この程度なら問題ない、私の筋肉の方が硬いからな!」


 ムキッ!とポーズを取るランクさん


「ラルス、ほれ」

「むっ?これは光石か」


 ガルネクが光石をラルスさんに投げ渡す


「周りを調べながら戻るぞ、もしかしたら他の道があるかもしれない……いや、確実にあるな、コイツらが居た筈の場所が」


 ガルネクがゴーレムの死骸を踏む


「じゃあ、警戒しながら戻ろうか」


 レイスの一言で僕達は隊列を組んで歩く



 ・・・・・・・・


「……道、あった?」

「いや、見てないな」


 僕とガルネクは光石で道や壁を照らしながら歩く


「そっちは?」


 僕は振り返る


「見た感じだとありませんね」

「隠し部屋とかかも知れないね」


 隠し部屋か……それなら見つける自信ないよ?

 スルトだったら結構そういうの見つけるんだけどな……


「待て!」

『!?』


 ラルスさんが叫ぶ

 僕達は立ち止まる


「どうしたラルス?」


「…………気配を感じる」

「……あっ」


 ラルスさんの言葉に反応したのかレイスも何かに気付いたみたいだ


「?」


 僕は何もわからない

 ガルネクやエルフィもわからないみたいだ


「ラルスさん、3体くらいですかね?」

「あぁ、後ろから2体で前から1体だ……後ろのは任せてもらおう」

「なら前は僕達で」

「きゃ!」


 そう言うとレイスがエルフィの手を引いて僕とガルネクの側に駆け寄る


「どうした?なんなんだ?」

「モンスターだよ、多分ゴーレム、後ろから2体で前から1体、後ろからのはラルスさんに任せよう、前のは僕達4人で倒そう」


 ゴーレムか……さっきラルスさんが2体倒したんだよね……

 僕達で勝てるかな?……いや勝たないと駄目だよね



「Cランクモンスターに挑むんですね……」

「エルフィ、いけるかい?」

「大、丈夫です!」


 震えてる震えてる!


「ゴーレムって硬いんだよね?」

 僕は剣を構える

「うん、だからエルフィの魔法が頼りだね」

 レイスもレイピアを構える

「なら、俺がやってやるよ」

 ガルネクが両手斧を構える……なんか頼もしくなったね

「合図を出したらゴーレムから離れてくださいね!」

 エルフィが杖を構える


「……………」


 どしん!どしん!

 そんな足音が聞こえてくる


「よっ!」


 僕は光石をばら蒔く

 散らばった光石が前を照らす


 見えた!ゴーレムだ!


「いくよ!」

『うん!/おお!』


 レイスの合図で三人で突っ込んだ

 戦闘開始だ!!



 ・・・・・・・


「やぁぁぁ!!」


 僕の剣がゴーレムの左腕に当たる

 ガキィン!って音と火花が散る

 やっぱりっていうか全然効いてない!!


「この!硬すぎるでしょ!この岩!!」


「マーティ!関節を狙うんだ!」


 レイスが肩の隙間にレイピアを突き刺す

 効いてないと判断してすぐに引き抜き距離をとる

 ヒット&アウェイって奴だね!


「おらぁ!」


 ドゴォ!

 ガルネクの斧の一撃でゴーレムがよろめく

 うそん……力強すぎ


 なんかラルスさんの方からドグワシャ!って変な音が聞こえてる!?



『生命の源よ……集え、集え、集え』


 エルフィが呪文を唱えている、何を出すのかな?


「マーティ!ボーとしてないで手伝え!!」

「あ、ゴメン!」


 僕はゴーレムに斬りかかる

 でも、僕の剣じゃ全然ダメージをあたえていない

 くっ!これでも鍛えて力をつけたのに!!まだ足りないか!


 レイスの攻撃もあまり効いてないけど、一瞬だけ動きが止まるし

 ガルネクの一撃でゴーレムはふらついてる

 ……うーん、僕……今、足手まといになってる


 どうしよ……あっそうだ!


「風よ、仇なす者を切り裂け、刃よ!"風の刃(スラッシュ)"!」


 風の下級魔法である風の刃(スラッシュ)を使う


 ザクッ!

 風の刃(スラッシュ)がゴーレムの足をえぐった

 やった!上手くいった!!


 ゴーレムが膝をつく


「皆さん離れてください!」


 エルフィが叫ぶ

 僕達はゴーレムから離れた


『我が前を阻む者を穿て!貫く水流(アクア・ゲイル)!!』


 エルフィの杖から巨大な水流が真っ直ぐゴーレムに向かう

 僕の目の前を走る水

 滝が真っ直ぐ進めばこんな感じなんだろうなぁ


 そんな事を考えていたら水がゴーレムに当たる

 ゴーレムの身体がドンドン削られていく

 そして砕けて、流されていった……


「うわぁ……」

 呆気にとられる僕

「今のは水の上級魔法?」

 レイスがエルフィに駆け寄りながら聞く

「はい、今のは貫く水流(アクア・ゲイル)です、今の私の魔力を全部使って出せる魔法です」

 ふらつくエルフィをレイスが支える


「ラルスは!」

 ガルネクが後ろを見る


「むっ?終わったか?」

 バキッ!とラルスさんがゴーレムの頭を握って粉砕していた

 どんな握力!?


「無事か、だったら速く脱出するぞ」


 ガルネクがそう言って走る


「あ、待ってよ!」

「エルフィは僕に……」

「いや、私が運ぼう」

「すいません」


 ラルスさんがエルフィを抱える

 そして皆で走って洞窟を脱出した


 ・・・・・・・



 洞窟を出て、待機していた馬車の前で止まる


「ふぅ……なんとかなったね」

 レイスが僕達を見る


「ゴーレムは外までは出ないみたいだな」

 ガルネクが言う


 洞窟を見ると、奥の方から追いかけてきたゴーレムがこっちを見ている


「ゴーレムが居るから、ここは中級騎士に任せるべきですね、報告書には光石とゴーレムの事を書いておきましょう」


 エルフィがラルスさんから降りて言う……もう大丈夫なの?


「ふぅ、少し疲れたかな」


 レイスが呼吸を調える


「帰ろう!」


 僕は馬車に乗り込む


「そうだな」


 ラルスさんがエルフィとレイスを持ち上げて馬車に乗る

 ガルネクが最後に乗り込んで馬車が動き出した

 御者さんもずっと待っててお疲れ様です

 



 馬車の中では皆が思い思いに過ごす


 エルフィは報告書を書いているし

 レイスはレイピアの点検をしている

 ガルネクは外を見ている

 ラルスさんは……なんでポーズとってるの?筋肉(マッスル)!じゃないよ!?


 僕は光石を見ていた

 洞窟ではかなり強く光ってたように見えたけど……外に出てから見るとそんなに光は強くなかった

 うーん、でも何かに使えそうだし何個か持っとこ


 ・・・・・・


 夕方になって僕達はファルクムに到着した


「報告したらそのまま帰るか……」


 ガルネクが伸びをしながら言う


「そうだね、早く休みたいよ」


 レイスが言う


「何だったら3人とも洗ってやろうか?」


 ラルスさんが言う


「僕は平気です」


 レイスがラルスさんから離れる


「そうか、ならガルネクとマーティを」

『結構です!/必要ない!』


「皆さん元気ですね……」


 僕達は拠点に向かう



 …………んっ?


「あれ?人だかり?」


 拠点の前に人だかりが出来ていた


「なんだ?何かあったのか?」

「誰かが死んだとか?」


 ガルネクとレイスが物騒な会話をする


「それなら寮の中で嘆くだろ?」


 ラルスさんが言う……まぁ、普段はそうだよね


「あれ?スルト君じゃないですか?」


 人だかりからスルトが走ってきた


「レイス!今は戻るな!」

「えっ?なんでだい?」

「いいから!面倒な事になってんだよ!」

「面倒な事?」


 スルトがレイスの肩を掴んで言う


「理由は後で話すから今は寮に戻るな!!」


 スルトは必死だ


「???」


 レイスは首をかしげる

 そこに……


「おやおや?何をしているのかな?」

「ちっ!!」


 なんか知らない男の人が近寄ってきて言う

 スルトが舌打ちする


「君は?」


 レイスが男の人を見る


「なんだ?俺の事を忘れたのか?」


 男がニヤリと笑いながら言う


「…………あ、試験に落ちた奴か」


 ガルネクが言う

 試験に落ちた?…………

 ………………………あっ!!


「シール・ハーレン!!」

 思い出した!僕やエルフィの妨害をして試験に落ちた男だ


「な、なんの用ですか!!」


 エルフィがレイスの後ろに隠れながら言う

 崖から落とされたもんね、怖いよね


「あっ?エルフが話しかけんじゃねえよ?」


 こいつ……


「シール・ハーケン、それ以上の侮辱は許さんぞ?」

 僕が言う前にラルスさんが前に出た


「ちっ、いいさ……今日はとある訓練生の不正を公開しに来ただけだからな」

「不正?」


 ガルネクが「何言ってんだこいつ?」って顔をする


「それがこいつさっきからおかしいことを言ってるんだ」


 スルトが言う

 そして次の言葉で僕は固まった


()()()()()()()()()()()()()()


『!!?』


 僕とレイスとエルフィに衝撃が走る


「……レイスが女性?何を言ってるんだよ?今まで一緒に居たじゃないか、信じれるわけないよね?」


 僕は出来る限り冷静に言う……言ったつもりだ


「そうだよな!でもしつこくてさ……面倒だからレイスを暫く何処かに泊めさせてから追い払おうとしてたんだが……」

 見つかっちゃったと


「大体、証拠もないのにそんな事言うとかおかしいだろ?」


 スルトは苦笑しながら言う


「根拠ならあるんだがな……」


 シールが言う


「なに?」


 スルトがシールを見る


「根拠ってなんですか!」

 エルフィがラルスさんの後ろから言う


「…………」


 無視!?


「おい!これはなんの騒ぎだ!」


 ゴルバ教官が僕達の側に来た

 騒がしいから見に来たんだろうね


「これはこれはゴルバ五等騎士様」

「シール・ハーケンか……何の用だ?部外者はこの時間は立ち入り禁止だが?」

「訓練生の中に不正を働いてる者がいるので、その報告に来ました」

「なにぃ?不正だと?」


 シールはニヤリと笑う


「はい、そこのレイス・カールルという者の事です」


 シールがレイスを指差す


「…………」


 レイスは顔色が悪い


「……言ってみろ」


 ゴルバ教官が言う


「先ず、レイス・カールルと言う人物なのですが……この名前の人間はファルクムでは2人しか存在しませんでした」

「ハーレン家の調査部隊か」

「はい、家の情報収集能力はかなり高いので」


 シールが紙を取り出す


「レイス・カールル、1人は老人でした……もう1人は、まだ4歳の子供であることがわかりました」

「調べきれてないだけじゃないのか?」

「ハーレン家の情報を疑いますか?」

「…………続けろ」

「それで色々と調べたら面白い事がわかったんですよ……」


 シールがもう1枚紙を取り出してゴルバ教官に渡す


「……………これは!」


 ゴルバ教官が紙を読んで驚く


「はい、その紙に書いてる通りです、調べたらこのレイス・カールルの見た目と一致する人間が1人だけ判明しました、その人物は丁度このレイス・カールルが現れてからは姿を消したそうです」


 シールがレイスの前に立つ

 ニヤリと……勝ち誇った顔で言う


「そうだろ?シャルル・リィ・フランベール?」


 僕がこれからやるべき事はなんだろ?


 1、否定する

 シールの話なんて誰も信用しないはずだ……だから必死で否定すればごり押せる?


 2、殴りかかる

 何も言えなくしたらなんとかならない?


 3、斬る

 死人にくちなしだよね……


 僕は……


「レイス・カールル」


 僕が動く前にゴルバ教官が口を開く


「…………はい」


 レイスが弱々しく返事をする


「この男が言っていることは真実か?」


 ゴルバ教官の問い

 レイスがここで否定すればそれでこの話は終わりって感じがする

 さあ、レイス!否定するんだ!そしてこのくそ野郎を追い返そう!

 ほら!ガルネクも殺気を出しながらシールを睨んでるし!


「……………」


 レイスの口から出たのは


「……真実です」



 否定ではなく



 肯定だった……




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