第34話 警備初日
翌日
一晩野宿した僕達は早朝に出発した。
「なぁ、そろそろほどいてくれねぇ?うぷ!」
縄で縛られたスルトは真っ青な顔だ。
「ダメにゃ!」
ミストはスルトを睨む。
「そ、そろそろ許してあげない?」
ルークが言う、相棒だからかスルトを庇う。
「うーん、そうですね、スルト君も反省したでしょうし……」
エルフィが言う
「おお!エルフィ!胸は小さいけど心は大きいよな!」
スルトが嬉しそうにエルフィを見る。
「まだ縛っておきましょうね」
エルフィが笑顔で言った
笑顔だけど目が笑ってないぞ?
「スルト、今のは駄目でしょ」
レイスは呆れる。
「うぷ、ちくしょう!」
そんなこんなで馬車は進む
・・・・・・・
そして昼を少し過ぎた時にサリーヌに到着した
「あぁ!揺れないって素晴らしい!!」
スルトが馬車を飛び降りて言った
「えっと、先ずは屯所に行くんだよね?」
僕も馬車を降りて言う
「そこで警備の兵と交代して配置につくって話だね」
レイスが降りながら言う
「警備にゃんて楽勝だにぇ!」
ミストが1回転しながら飛び降りた
……白か
「ゆ、油断はダメだよ?」
ルークが降りてスルトの縄をほどいた
「ミストちゃんみたいなのは珍しいから油断して捕まってにゃんにゃんされちゃうにゃん♪」
サハルが手を丸めて猫の手みたいな事をしながら言った
「にゃんにゃん?にゃんだそれ?」
ミストが首をかしげる
知らない方が良いことってあるよね!
「早く行こう!」
僕は話を切って歩く……屯所どこ?
・・・・・・
ルークが屯所の場所を知ってたから屯所に着いた
そして警備の人達から道具を渡される
「この笛は何か有ったら鳴らすんだ」
「ふむふむ」
道具を受け取ってある程度の説明を受けた
どうやら僕達が交代するのは夕方から夜の間の警備の人達で他の人達はいつも通り警備するみたい
つまり僕達は夕方から夜の間を警備すればあとは休みなんだね
それを2日間、今日と明日やればいいんだ!
よし、頑張るぞ!
「さて、じゃあ警備の配置を言おうと思う!」
スルトがサリーヌの町の地図を拡げる
サリーヌは東と西に町の入り口がある
「東の入り口にルークとエルフィ、西の入り口にレイスとサハルだ」
「なんでその配置なの?」
僕が聞く
「ルークとレイスは俺達の中で1番と2番に強い、そしてエルフィとサハルは遠距離攻撃が出来るから怪しいやつが近付いてきたら攻撃できるだろ?」
つまりモンスターとかが近付いてきたらエルフィとサハルが攻撃して撃退
もし、それで撃退出来なかったらルークとレイスが倒すんだね
成る程ね!
「僕達は?」
「俺とミストとマーティで町の中を見廻りだ、俺は指示を出せるし、ミストは素早いから逃げ足の速い奴とか捕まえられる、マーティは……単純に戦力だな、戦闘とかになったら頼むわ」
「わかった!」
「任せろにゃ!」
「ねぇねぇ」
サハルが手をあげる
「なんだ?」
「私とルークちゃんじゃダメなの?レイスちゃんとエルフィちゃんは相棒だから連携しやすいと思うけど?」
まあ、確かにね
「お前とルークを組ませられるか!!ルークが危ないっつーの!」
スルトが言う
……あぁ、確かにね、サハルがルークをからかう光景が目に浮かぶよ
そうして配置が決まったのだった
・・・・・・
さて夕方
僕とスルトとミストは町を歩く
……一時間ぐらい経ったかな?
「平和だね」
僕は周りを見渡す
周りは買い物をしたり酒場を巡ってる人達がいる
「まぁ、もめ事なんてなかなか起きないもんだ」
スルトが言う
「さかにゃを焼く匂いがするにゃ!」
ミストが酒場を見ている
今は我慢してよ?
「この後は路地裏を歩いてから、またこの通りを歩く、そして東の方を確認してからまたここだ、んで、西の方を確認してからまた路地裏を歩いて、ここに戻ると」
「ここ多くない?」
「酒場が多いからな、酔っぱらいとかのもめ事が多いんじゃないのか?」
あぁ、酔うと暴れる人とかいるよね
「さっさと歩くにゃ!ここにいるとさかにゃが……さかにゃがぁ!」
ミストの目がヤバイ!?
僕はミストに不安を感じながら見廻る
・・・・・・・
とくに問題なく時間が過ぎる
東に行ってルークとエルフィに異常がないか聞いて
また酒場の通りを歩いて
西に行ってレイスとサハルに異常がないか聞いて
路地裏を歩いて
また酒場の通りに戻った
その時だ
「食い逃げだぁ!!」
その声が聞こえた
「食い逃げ!」
僕は声のした方を見ると
髭を伸ばした男が走っていくのが見えた
「獲物にゃ!」
ミストは速かった
相手を確認した瞬間に手を地面につけて四足の状態になる
突き出されたお尻がひわエフン!
まぁ、そう思った瞬間に彼女は走る、跳ぶ、跳ねる!
僕とスルトが走る頃には……
「いでででで!?」
「捕まえたにゃ!!」
食い逃げ犯を締め上げていた
速い……
・・・・・・・
今日のところは食い逃げ犯くらいしか捕り物はなかった
まあ平和なのは良いことだからね!
僕達は夜から早朝の担当の人達と交代した
そして僕達は兵舎に連れてかれて部屋を教えてもらった
僕とレイス
スルトとルーク
エルフィとサハルとミスト
で部屋分けされていた
取り敢えず今から明日の昼まで自由時間だ!
なんで昼かって?交代の準備とかあるからだよ!
部屋に入るとレイスがベッドに腰掛ける
「ふぅ、立ってるだけってのも結構つらいね」
「何も起きないのが逆にキツいよね」
僕とレイスは今日の事を話す
僕はミストが魚の匂いを嗅いで尻尾を振り回す光景を見て驚いた事
食い逃げ犯を捕まえるのが凄く速かった事を話した
レイスはサハルに色々と言われたそうだ
「レイスちゃんの顔も可愛いよね」
とか
「レイスちゃんは女性経験あるの?」
とか
「レイスちゃん、私と一緒に楽しまない?」
とか言われたそうだ
全部拒否したってさ
そうだよね、レイスは女性だしね
「シャワーを浴びたいけど……シャワールームは無さそうだね……」
レイスは自分の身体の匂いを嗅いで微妙な顔をする
昨日もレイスは水浴び出来てないからね……まあ僕とルークが軽く浴びたけど
「タライとタオルを持ってこようか?拭くだけでも違うでしょ?」
「うん、そうだね、お願いしてもいいかい?」
僕は部屋を出てタライとタオルを取りに行く
事務室に居た人にタライとタオルを出してもらった
なんでいるの?って聞かれたから洗顔とかに使いますって言って借りたよ
部屋に戻ってお湯を入れたタライを置いてタオルをレイスに渡した
「じゃあ僕は廊下にいるね」
「えっ?部屋に居てもいいよ?」
そんな訳にはいかないよ
レイスは成人した女性なんだから!
色々と危ない!僕はまだ子供だけどね!
ネルに操を立ててるけど……
それでも女性の裸を見ていい訳じゃないからね!
「見張りとか必要でしょ?鍵ないし」
「あ、そうだね……なんか色々と任せて、ごめんね?」
「気にしないでいいよ」
僕は廊下に出た
15分くらいかな?
それぐらい経ってからレイスが出て来て
「終わったよ、ありがとう」
と言ってタライとタオルを持っていった
その時のレイスの表情はさっぱりしたからかリラックスしていた
さて、僕もシャワーを浴びに言ってから休もう
「さかにゃぁぁぁぁぁぁ!!」
ミストがサハルとエルフィを連れて走っていくのを見送ってから僕は着替えを取りに部屋に入った




