第26話 親善祭1日目・ルーク編
さて、この日が来ました!!
「親善祭だぁぁぁ!!」
僕は部屋の窓から外を見て叫ぶ
「元気だねマーティは」
眠そうな眼を擦りながらレイスが起きる
「だってお祭りだよ!色んな見世物があるんだよ!?」
思えば、今までも旅人から聞いただけで実際に参加したことはなかった
初めての祭りである!
「もう僕は準備できてるから先に降りとくね!!」
「うん………」
レイスはうとうとしながらもベッドから降りる
これからレイスも着替えるからね、僕は出とかないと!
・・・・・・・・
部屋から出て、1階の公共スペースに行く
そこには数人ほど人が居た
三年生に一年生に
それとルークも居た
「ルーク!」
僕はルークに声をかける
「……………」
ルークは僕を見ると軽く手を上げる
「一人?スルトは?」
「……………」
ルークは天井を見る
上……つまり部屋かな?
「スルトは部屋なんだね、ルークも親善祭行くんだよね?」
今日は親善祭だけど座学とクエストには行ける
まあどっちもいつもよりは少ないんだろうけど……
「…………(コク」
ルークは頷く
このやり取りでわかるだろうけど
ルークは基本こうやって行動で返事をする事が多い
殆んど喋らない
たまに喋る時もあるけど一言呟く程度だ
一部の訓練生からは『気取ってる』、『きざ野郎』、『生意気』
とか言われてるけど……僕はルークはただの照れ屋なんだと思ってる
「一人で行くの?」
「…………(コク」
頷くルーク
「そっか……ねぇ!僕と一緒にいかない?」
「!?」
ルークが僕を見る
「僕とレイスとルークの3人で!」
「……………?」
ルークが首をかしげる……あ、エルフィの事を聞きたいのかな?
「エルフィならお姉さんに会うらしくて別行動なんだ」
こんな時じゃないと会えないらしい
「………………」
ルークは考え込む
・・・・・・・
ーーールーク視点ーーー
………どうしよう
今、僕の目の前に居る少年は僕を誘ってくれている
………凄く嬉しい
だけど……悩む
誰かと一緒に過ごす
そんな事……今までなかったからとても緊張する
何か失敗したりしないだろうか?
思えば昔からそうだった
商人である両親の元に産まれ
一人の兄と二人の姉に可愛がられながら育った僕だ
両親も僕を大事に大事に育ててくれた
………大事にし過ぎた
僕は他人と上手く接することが出来ない
全部家族がやってくれていた
来客の対応も
買い物も
遊び相手も
全部だ
その為か僕は家族以外の人にはどう接したら良いのかわからない
それに人見知りも激しく、まともに相手の顔も見れない
この仮面だって王都に来たときに周りの視線が気になって買った物だ
「………ルーク?」
マーティは首をかしげる
彼は子供なのに凄い人物だ
試験でも崖を素早く登り、落下するエルフィーユを助けるために飛び降りて
再び登ったり
トロールに目の前で人を殺されたのに立ち上がり挑んだり
僕にはどうしようもなかった悩んでいたスルトを励まして元気にしたり
どれも子供が簡単にできることじゃない
かなりの努力や経験を積んだんだろう
それなのに偉そうにはせずに謙虚な姿勢
本当に凄いと思う
うん、はっきり言おう
僕は彼を尊敬している
相手の顔もマトモに見れない僕とは全然違う
そんな彼から誘われたのだ……
もしかしたら彼がきっかけになって僕も変われるかもしれない
だから僕は
「……………」
ギュウ!
「よし!」
彼の手を握った
・・・・・・・
「ルークも一緒とは珍しいね?」
レイスがそう言いながら僕を見る
彼の整った顔立ちは仮面越しでも見てたら照れてしまう
つい顔を背けてしまった
「………僕嫌われてる?」
「そんなことないと思うよ?」
小声で二人がそう話す
そうだよ、嫌ってないよ
恥ずかしいんだよ………
「ルークは何か見たいのとかあるの?」
マーティが僕に聞いてくる
見たいもの……僕が見たいのは武道大会だ
でも武道大会は明日やるらしい
だから今日は特に見たいものはない
「………(フルフル」
僕は首を振る
「そっかぁ……なら適当に見ていこう!」
「おっと!マーティ、もっとゆっくり!」
「…………」
マーティは僕とレイスの手を引いた
色々な屋台を見た
普段は見ないような装飾品や武器
防具に魔法道具
他の国の商品は珍しいものばかりだった
「あ、この剣強そう!」
マーティは楽しそうに剣を見ている
「うーん……もう少し軽いのは……」
レイスは買うつもりなのかレイピアを品定めしている
「………」
僕は剣を見比べる
今使ってる剣もいいけど、やはり自分で選んだ剣が欲しい……
まあ、買えなかったけど……
・・・・・・・・・
そうやって色んな屋台を見て
見世物も見て
とても楽しい1日だったと思う
「今日は楽しかったね!」
楽しそうなマーティ
「そうだね」
頷くレイス
「…………(コク」
僕も頷く
ドン!
「おっと!ごめんよ!」
人にぶつかった
ポタッ
何かが地面に落ちた
あ、これは僕の仮面だ
「はいルーク!」
マーティが拾ってくれた
「………ありがとう」
僕は仮面を受け取りながら言う
「…………」
んっ?どうしたんだろ?
「ルークって可愛い顔してたんだね?」
「!?」
マーティにそう言われて僕の顔が熱くなる
今は耳まで赤いだろうね
「えっ?どんな顔なんだい?」
レイスが覗きこもうとする
その前に仮面を付ける
「……………」
「き、気になるじゃないか……」
仮面を付けた僕を見てレイスが言った
やめてよ、恥ずかしい
・・・・・・
ーーーマーティ視点ーーー
ルークの素顔は可愛らしかった
レイスの事を知らなかったら彼が男装した女だと間違えるくらいだ
レイスが女性に受けそうな顔なら
ルークは男性に受けそうな顔だ
てかなんでそんな顔なのに隠すの?
やっぱり恥ずかしがり屋なんだね!!
「…………」
ルークは僕から顔を背けている
「ルーク?」
「……………」
怒ってるのかな?
あ、違う、耳が赤いから照れてるんだ
「ルーク、寮の中では仮面を外してみたら?」
「!?」
ルークが僕を見た
「なんで仮面を付けてるかはわからないけど、ずっとそのままって訳にはいかないでしょ?」
「……………」
ルークは考え込む……そして
「………やってみる」
小声だけどそう言った
「頑張れ!」
僕はそう言ってレイスの方に向かった
……女の人に逆ナンされて困ってるレイスを助けに
・・・・・
親善祭の初日はそうして終わった
その日から寮ではルークは仮面を外している
皆に驚かれたり質問攻めされたりして困惑していた
助けに行った方が良いかな?って思ったら
「ほらほら、そこまでにしろ」
スルトがルークを助けていた
「……スルト」
「何があったか知らないけどな、あんまり無理はするなよ?」
「…………うん」
なんか二人の絆が深まったみたいだね
良かった良かった
そう思っておこう!うん!




