最終話 幸せ
やあ!僕はマーティ・ロキソン!
7歳の男の子だ!
僕は今順調に生活しているよ!
優しい家族に楽しい友人
ああ、普通の生活って素晴らしいよね!
こうして普通に歩ける事が!
眼で景色を眺めることが!
だから………だから………
ゴロゴロ
ドカーン!
「きゃあああ!!」
「こんなの怖くないんだ!」
僕は今ネルと二人で秘密基地にいる
秘密基地っていってもただの洞窟にシーツやら小物やらを持ってきただけの場所だけどね!
そして外は土砂降りだ!
雷も落ちてるね!
「うう……もうゴロゴロやだぁ」
ネルが涙目になりながら僕にしがみつく
「もう少ししたら止むよ、多分通り雨だし」
どうしてこうなったか?
今日も僕とネルとカーツで遊びに行くつもりだったんだ
フルーヤ村から少し離れた川に釣りにいくつもりでね?
でもカーツがカーツのおばさんに捕まって店の手伝いをしなきゃいけないから僕とネルだけ先に川に来たんだ
それで二人で釣りをしてたら雨が降り始めてね
近くにこの秘密基地があるからそこに避難して雨宿りしてたんだ!
ドカーン!
「ひぅぅぅ!?」
雷が落ちる度にネルが僕にしがみつく
「ネ、ネル?大丈夫?」
「だ、大丈夫じゃないよぉ………ひっ!」
外が光る度に震えるネル
「よいしょ!」
「むぐ!」
僕はネルを抱き締めて目と耳を塞ぐ
「これで怖くないからね」
「……………」
聞こえてないみたいだ
んっ?なんかネル熱くない?
「ネル?熱がある?」
「だ、大丈夫!大丈夫だから!」
ネルは真っ赤な顔をしている
「でも」
「大丈夫!」
まあそういうなら
こうして僕とネルは雨が止むのを待った
・・・・・・・・・
それから色々あった
僕は10歳になった
「マーティ、お前も10歳だ!」
「はい!」
ロックが言う
「ロキソン家の方針としてお前にも1つ畑をやろう!」
「はい!」
「何を育ててもいい!失敗してもいい!わからないことは俺か兄に聞くんだ!」
「はい!」
「そして学ぶんだ!そうすればお前が15歳になるころには立派な農夫だ!」
「僕頑張る!!」
こうして僕も畑を貰った
まあ一番小さな畑だし兄達のお下がりの場所だけどね
・・・・・・
「それじゃあもう昔みたいに遊べないね」
ネルが残念そうに言う
「たまに一緒に出掛けようよ!隣村とかね!」
「それってデート?」
「だね!」
「♪」
僕とネルが話していたら
「よ!ご両人!」
「カーツ!仕事は終わったの?」
カーツが声を掛けてきた
「客も落ち着いたからな、聞いたぞマーティ!畑を貰ったんだって?」
「うん!頑張って美味しい野菜を作るよ!」
「良いのが出来たら家で買い取ってやるかな!」
「うん!」
「そういえばガルネクの事を聞いたか?」
カーツが言う
「あー騎士になるっていって王都に行ったんだよね?」
「あのガルネクが騎士をね………」
ネルが嫌そうな顔をする
「まあ昔は色々あったがアイツも考えてるんだろうな」
「ガルネク、大丈夫かな?」
「さぁな、まあ騎士になれたら祝ってやろうぜ」
「そうだね」
それから数ヶ月後にガルネクは帰って来た
騎士にはなれずに
なんでも騎士になるには騎士学校に入学して3年間学ぶらしい
相部屋の騎士見習いとペアを組んで学ぶらしいんだけど、その相部屋の騎士見習いが男装した女性だったらしくて
それを知ったガルネクは襲ってしまったそうだ………最低だね
まあ、返り討ちにされて色々あってガルネクと相方は不合格ってことで騎士学校を退学になったそうだ
うーん、自業自得なとこもあるしなんとも言えないな
それからガルネクは打ちのめされたのか引きこもりになってしまった
………………………流石に可哀想かな
・・・・・・・・・
それから色々問題が起きたりしたけど僕は楽しく暮らしていた
そして15歳になった
ーーー秘密基地ーーー
「ここに来るのも久しぶりだね」
「そ、そうだね!」
僕はネルに呼び出されて秘密基地に来ていた
「あ、あのさ………マーティ………」
「どうしたのネル?」
ネルはもじもじとしている
ネルも大きくなったよね
成長して………その、女性らしくなったというか
うん、今少しドキドキしてる
「15歳おめでとう!」
そう言ってネルは僕に小物を渡してくれた
「これは………ペンダント?」
「あ、あのね、どんなのあげたら喜んでくれるかわからなくて………皆に相談したんだ」
「へぇ………」
僕はペンダントを付ける
「ありがとうネル♪」
「う、うん………」
ネルは真っ赤に顔を染めている
「あのさマーティ……その、他にも用があって……
」
「んっ?」
「その、ね?わ、わたしね、マーティの、事が………」
「ネル………」
「ふぇ!?」
僕はネルの肩を掴む
今からネルが言おうとしている事がわかっていたから先に言うんだ
「僕は君が好きだよ!だから………僕と恋人になってください!」
「!?………うん!!」
なんでネルが僕を好きって知ってたかって?
10歳の時にネルが母さんやカーツに相談していたのを偶然聞いちゃったんだよ
でもなかなか告白するタイミングが無くって今になってしまった
「ネル」
「マーティ………」
こうして僕とネルは恋人になった
その………うん、そのまま………なんていうか勢いというか………大人の階段を登ってしまいました………はい
いや責任はちゃんととるよ!!
だから村に戻った時にネルの両親や僕の両親に恋人になったことや結婚するつもりだって話したよ!
そしたら皆が言ったんだ
『えっ?まだ付き合ってなかったの?』
ってね
まあこうして僕は恋人……ていうか奥さんを手に入れたんだ
僕はネルを見ながら幸せを感じていた………
・・・・・・・・
さて、僕とネルが恋人になって四日後
「マーティ!」
「待った?」
「ううん!今来たとこだよ!」
僕とネルは森の奥の湖で待ち合わせしていた
僕は畑仕事を終えてから来たところだ
「あ、マーティ、泥が付いてるよ?」
そう言ってネルがハンカチを濡らして僕の顔を拭く
「ありがとう、ネル」
…………
さて、どうすればいいのか……
目の前には愛しい恋人
場所は森の奥の人があまり来ない場所
……だ、抱き締めたりしてもいいのかな?
「マーティ♪」
悩んでいたらネルが僕に飛び付いてきた
「っと!」
僕はネルを受け止める
ふわっと甘い花の香りがネルからする
これは……いつもネルがお世話してる花の匂いだな
「どうしたのネル?甘えたいのかな?」
「ふふ、だって初めてのデートだもん」
そう言って僕のお腹に頭を押し付けるようにグリグリする
「そうだね、うん、よく来る場所でもそう考えたらドキドキするね」
僕はネルの頭を撫でる
肩まで伸びてるサラサラした黄色い髪
撫でていると心地いい、落ち着く
「ねぇマーティ……」
「うん?」
ふとネルが呟く
「赤ちゃん出来たのかな?」
「ごふっ!?」
えっ?急になに!?
いやでもこの間登ったし……うん、出来てもおかしくないけど
「まだわからないよ?」
「そうだけど……」
「出来てたらわかるさ、その時は子供の名前を一緒に考えよ?」
「もし出来てなかったら?」
「また一緒に頑張ればいいよ」
「……うん、そうだね!」
僕の腰に回っていたネルの腕に力が入った
「ネル、そろそろ交代!」
「うん!」
ネルが僕から退いて腕を拡げる
「よっと!」
そんなネルに僕は飛び付いた
僕の顔がネルの太ももに触れる
あ、柔らかい……
「マーティ、くすぐったいよ?」
「あっごめん」
ネルが僕の頭を撫でる
あぁ、癒される……なんか、こう……褒められてるような……
リラックスできる
「これからどうする?」
ネルが聞く
「取り敢えず僕は畑を拡げたいと思ってるんだ、収穫が増えたら収入が増えるし、家も買いたいからね」
「家かぁ」
「畑仕事を終わらせて帰ったら」
「私がマーティを迎えるんだね!お帰りなさい、あ・な・た♪なんて言ってね!」
「そしてネルの作ってくれたご飯を食べて、お風呂に入って、夜は仲良く寝室で……」
「………エッチ」
キュッとネルが僕の頬を軽くつねる
「エッチでいいよ、ネルが可愛いのが悪いんだから」
「そ、そうかな?可愛い?」
「可愛いよ?」
「カーツやお母さんにはもっと女の子らしい格好をしろって言われるけど?」
そういえばネルがスカートとか履いてるの見たことないなぁ
「女の子らしい格好のネルも見てみたいけど、僕は今のネルも可愛いと思ってるよ?」
「あ、ありがとう」
僕はチラリとネルを見る
ネルの顔は赤くなっていた
「そんな可愛いネルにこうして撫でられて……僕って幸せ者だなぁ」
「もう、マーティったら」
ネルはそう言いつつ笑う
その時
カンカンカンカン!!
『!?』
緊急事態を知らせる村の警鐘が鳴り響いた
絶望とは突然訪れるものである
・・・・・・・・・・
なんでだよ
村にあがる火の手
周りには死体
目の前には
「見ないで……マーティ」
「若い女はいいよなぁ!」
山賊に襲われているネル
僕は何をしているのかって?
僕はただ見ていた………目の前で凌辱される恋人を
助けないのかって?助けたいさ
でも………動けないんだ
僕の手足は山賊に切り落とされたから
あの時、森から村に戻った僕達は村が山賊に襲われている事を知った
僕はネルを逃がそうとしたけど、罠にかかって捕まって
このざまだ……
あぁ、身体が冷たくなってきた
もうすぐ死ぬんだね
なんで?幸せだったんだよ?
数日前にネルと恋人になって
初めてを経験して
これから二人でどうするか話してて
数年後には結婚してって………なのに
なんで山賊達が村を襲撃してきたんだよ………
「なんだ………この女死んじまったか」
ネル………ネル!!
「ちっ!もっと楽しませろよ!」
山賊が裸のネルを蹴飛ばした
「………る」
「んっ?」
僕の口から声が出る
「殺して……やる」
「はっ!そんな状態で何言ってやがる!!」
山賊が僕に近付く
「殺してやる!!お前ら皆!殺してやるからな!!」
僕は最後の力を振り絞って叫んだ!
「ああそうかよ!」
山賊は笑いながら僕の顔に斧を振り下ろした
・・・・・・・・
「うわぁぁぁぁぁ!!」
僕は飛び起きた
「あ、あれ?」
僕は周りを見る………見慣れた景色
ここは………僕の部屋?
あれ?それにしては広いような
「マーティ!どうしたの!?」
バン!とドアが開く
そこにはルーティがいた
「おかあさん?」
あれ?子供の声?どこから?
てか母さん若くなってない?
「怖い夢を見たのね?もう大丈夫よ」
母さんが僕を抱き締める
あれ?母さん………でかくない?
いや違う
僕は自分の手を見る
子供の手
3歳くらいの
これって
「…………もどってる?」
こうして僕の三度目の人生が始まった
最終話と書いてますがまだまだ普通に続きます