間章 マーティとネルのとある出来事
やあ皆!
僕はマーティ!マーティ・ロキソンだよ!
この王都ファルクムで騎士の訓練生の二年生として頑張ってる11歳の男の子
そんな僕は今………
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
寮の中を全力で逃げていた
何からって?
「マーティ!!待て!」
僕の後ろを走っているレイスからだよ
なんで追われてるのかって?
どうせなんかやったんだろうって?
そんな事はない!
別にレイスの着替えを覗いたとか
胸を揉んだとか
押し倒したとか
そんなトラブルがあったわけじゃない!
むしろ気を使って
着替えの時は部屋を出るし、部屋に戻るときもノックしてる
レイスの事は好きだけど、これは友達としてであってネルに対する好きとは違う感情だし!
問題なるような事なんて一切やらかしてない!
なら何故追い掛けられているか……それは
「諦めてこれを着てみなよ!」
「嫌だよ!」
レイスが持ってるのはメイド服だ
なんでそんなものをって思うよね?僕もそう思う
っというのもなんか寮の方で新入生の歓迎会をしようって話を誰かが言い
そこからどうするかの話が始まり
そしてなんか仮装する話になった
レイスは包帯男の格好でやるらしい
そして僕は……メイド服に決まってしまった
てかサイズが合うのがそれしか残っていなかった
…………なんでメイド服なんてあったの?
「っ!行き止まり!」
ヤバイ追い詰められた!
「さぁ、諦めるんだマーティ……」
「ちょ、ちょっと落ち着こうレイス!」
僕は息を切らしているレイスに言う
普段は体力切れになるのに今日はかなり頑張ったね!
「僕は落ち着いているよ?」
「いやいや、メイド服片手に全力疾走する人を落ち着いてるとは言わないからね!?」
ジリジリと迫るレイス
「な、なんでメイド服なんだよ……なんでメイド服があるんだよ!」
「それは僕も知らないけど……サイズが合うのがこれしかないからね、仕方ないよね?」
いい笑顔で言うレイス
「きょ、拒否する!!」
「駄目だよ?」
「男のメイド服姿なんて痛いだけだよ!?」
「大丈夫、マーティは可愛いからいけるよ?」
「いやいやいや!?」
「大丈夫大丈夫!自信を持って!」
いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
・・・・・・・
大事な何かを失った………そんな気がする
「………………ちくしょう」
「うん、凄く似合ってるよマーティ!」
レイスは楽しそうに僕を見てる
「…………ぷっ」
おいガルネク!お前も結構痛い格好だからな?
「わりといいんじゃないか?化粧させれば女で通るんじゃね?」
スルトがそう言って色々と小道具を出した……どこにあったの?
「………………」
ポンっとルークは僕の肩を叩いた
………ルークに着せるのもありじゃない?
「はははは!!」
合う仮装が無いからって上半身裸のラルスさんは楽しそうに笑っている
くそ!皆他人事だと思って!
・・・・・・
歓迎会は楽しく終わった
うん………終わりよければ全て良しで………
僕の心がかなりダメージ受けたけどね!!くそ!!
・・・・・・・・・・
フルーヤ村
ーーーネル視点ーーー
「お洒落?」
「そう!お洒落です!」
酒場のお手伝いをしていた私にイシルさんが言った
フライスさんに雇われていた彼女は1度契約を果たしたから再び旅に出たのだけど
ループルに着いた日にまた荷物を盗まれて途方にくれていたんだって
そこにサースさんと偶然再会して、事情を聞いたサースさんがまたフライスさんに雇って貰う様に手を回してくれたんだって
それでもう旅人は向いてないからってそのままフライスさんに雇われて
今はロキソン家の従業員として頑張ってるらしい
そんな人がいきなり私に言ってきた
「どうしたんです?いきなり」
「ネルちゃん!貴女は今の自分の格好をどう思ってます?」
「えっ?」
どう思うって言われても……料理をするから髪はショートカットにしてるし
動きやすいから服は普通の上着とズボン
……可笑しいところあるかな?
「なんでそんな機能性を重視するの!?」
「えっ?でもこれが普通だよ?」
動きやすいのが当たり前だよね?
「それじゃ駄目です!」
イシルさんが言う
「ネルちゃん!貴女は将来を約束した人がいるんですよね?マーティさんでしたっけ?」
「う、うん」
マーティ、今何してるかな?(メイド服着せられてます
「そのマーティさんは今、王都 居るそうじゃないですか!!」
「騎士になるために頑張ってるからね」
「……ネルちゃん、貴女には危機感が無い!!無さすぎる!」
「えっ?」
「王都ですよ!?都会ですよ!?お洒落をした女の人がいっぱいいるんですよ!?」
「………そうなの?」
行ったことないからわからないかな
「そうなんです!!そんな女の人と毎日接してるんですよ!そんなマーティさんがいざ帰ってきたときに……お洒落じゃないネルちゃんを見たらどう思うか……」
「…………………」
へ、変に思われちゃうかな?
いやマーティはそんな事気にしないし!!
「でもネルちゃんがお洒落してたら?」
「……お洒落」
あんまり気にしたことないけど……
「マーティさんの驚く顔、見たくないです?」
「…………見たいかな…」
「じゃあお洒落しましょう!!」
そう言ってイシルさんのお洒落講座が始まった
……うん、真剣なんだとは思うけど……
「あぁ、可愛いですよネルちゃん!」
「そ、そうかな?」
この人…私で遊んでるんじゃないか?
そう思うネルだった




